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漂流軍艦  作者: 青葉 加古
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巨大波

 軍港を出航した特務艦『綾瀬』は、波を切って、一路演習海域へと向かっていた。


 その途上、『綾瀬』の右舷前方、日没前の水平線に幾条もの煤煙が現れたものだ。


 それらを吐き出す艦船は、『綾瀬』と反航する形でグングンと近づき、やがて『綾瀬』見張り員の双眼鏡からでも、ハッキリとその姿が捉えられた。


 先頭を走る軍艦は、鉛筆のように細くスマートで四本煙突が特徴的な、軽巡洋艦『鈴鹿』である。


 『鈴鹿』は全長百四十メートル、基準排水量三千三百トンの『綾瀬』よりも小型な軍艦だ。


 魚雷戦を主任務とする駆逐隊の旗艦及び先導を担う『鈴鹿』の後に、第三十五駆逐隊の駆逐艦、『春桜』、『夏桜』、『秋桜』、『冬桜』の四隻が続く。何れとも全長が九十八メートル、基準排水量千百トン程の小振りな駆逐艦だ。


 もちろん、これらの艦艇は新鋭艦などではない。旧型のオンボロ達であるが、列をなしてのんびりと白波を立てて航行する光景は、まるでカルガモの親子のようでもある。 


 『鈴鹿』へ向けて『綾瀬』の探照灯が忙しく、チカッチカッと光り、旗甲板から旗旒信号がスルスルと揚がった。


 すると『鈴鹿』は取り舵をとり、茜色に染まる海のキャンバスに、綺麗な半円の白い航跡を描いて、『綾瀬』の後方一千メートルに付けた。


『鈴鹿』の後ろには、第三十五駆逐隊の四隻の駆逐艦が続く。


 そして一列体形のいわゆる単縦陣となり、この小さな艦隊は威風堂々、南へと舵を切るのであった。


 穏やかな海上だ。すでに、天空には星空が煌めき、半月が微かな淡い光で海上を照らしている。


「綺麗な星空だなぁ」


 第二番主砲のある後部甲板で、仰向けに寝そべっていた水上偵察機パイロットの、清水惣太郎海軍少尉は、眼前に広がる夜空の雄大なパノラマに圧倒されて、思わず声を洩らしていた。


「隣、いいかしら?」


 不意な女性の声に惣太郎は、勢いよくガバッと上半身を起こした。


「誰かと思えば、雨宮さんじゃないですか? どうしたんですか、こんな所に来て?」


 実験技師である雨宮レスティスの訪問に、惣太郎の声が上ずる。


「清水少尉と一緒よ。夜風に当たりに来たの。それに、一言謝りたくて」


「謝りたくて?」 


 キョトンとする惣太郎の横にレスティスが腰を下ろし、体育座りになる。


 惣太郎の心臓がドキンッ、と高鳴った。


 半月の薄明かりの中レスティスは、タンクトップにホットパンツ、そしてスニーカーの出で立ちではないか。しかも、至近距離なので石鹸の香りだろうか、何ともいえない、かぐわしい香りがする。


 惣太郎は自身の顔が赤くなっていくのを認識したが、この暗さだ。レスティスには気付かれずに済んだ。


「いい風ね。海風に乗って潮の香りがする。私、この香り好きなの」


「そ、そうですね。風に乗って、せ、石鹸の香りがしますよ」


「えっ!? 石鹸の香り?」


「あぁ、いえいえ、こっちの話しでして、間違えました! 潮の香りでしたね」


 クスクスと、レスティスが笑う。


「変な人だわ、清水少尉は」


「変な人ですか……? 私が?」


「違う、違う。意味を履き違えている。面白い方だわ、と言いたかったの」


 何が可笑しいのか、レスティスがさらにウフフと笑った。


「それで……、謝りたかったのは大尉に殴られた件よ。少尉には軍務があるのに、私がベラベラ喋ってしまって……。私のせいで、ごめんなさい」


 いやはや、驚いた。昼間のレスティスとは大違いだ。彼女に、こんな汐らしい一面もあるんだと、惣太郎は面食らった。


「いや、雨宮さんのせいではないですよ。だから、謝らないで下さい。私は気にしてませんので」


「ウソつかないで。お喋りだから、閉口したでしょう? しかも、制裁まで貰って……」


「いえ、そんな事はありません。Dシステムの話しをしている雨宮さんは、生き生きとしてて、その熱意に脱帽でしたよ。だから、明日の実験、巧くいくといいですね」


「ありがとう……。そうね、巧くいくといいなぁ……」


 二人の間に、自然と笑みがこぼれた。


「よし、無事に謝罪も済んだ事だし私は部屋に戻るけど、清水少尉は?」


「もう暫く、ここに居ますよ」


「そう……。わかった。ところで、その話し方なんとかならない?」


「えっ? 話し方ですか?」


 思い当たるふしがないので、眉をひそめる惣太郎だ。


「自分で気づかないんだ!? そのデス、マス口調のことよ。なんだか、よそよそしくて肩こらないの?」


 レスティスが呆れたように訊いて、苦笑いを浮かべる惣太郎である。


「なんだその事ですか。ありがとう、お気遣いなく。これ、昔からのクセなんです。直そうと努力してるんですが、簡単には直りません」


 本気で直そうとしているのか、それとも意外と頑固野郎なのか、よくわからないが、とりあえず納得してやるレスティスだ。



「そうなんだ。それなら、仕方ないか……。それじゃあ、明日の演習頑張って。お休みなさい、清水少尉」


「お休みなさい、雨宮さん」


 手を軽く振るレスティスに、惣太郎は手を挙げて応じた。





 明朝から、演習開始である。


 演習は『綾瀬』の姉妹艦『鳴瀬』を旗艦とする、第十一特務艦隊本隊の青軍と、『綾瀬』率いる赤軍に別れ三日間の予定で実施される。


 その目的としては、艦隊の練度の維持と向上。それに、主任務である実験兵器の実戦的なテストを兼ねているので、気合いは十分である。


 しかも、予報では天気は快晴。十分に戦闘力を発揮できるはずだった。




 時計の針が、午前零時を過ぎた頃だ。


「ドンッ! ドォーンッ!」


 『綾瀬』艦内に轟く衝撃音とともに、艦が大きく左へと傾き、自室で寝ていた惣太郎は、ベッドから転げ落ちそうになって、目を覚ました。


「な、なんだ?」


 真っ暗闇の中、尋常でない『綾瀬』の傾きが、ゆっくりと元の位置へと復元するのが、感覚でわかる。


 だが、なんだ、艦体の上下左右への、激しい動揺ではないか。


 何か見えない力でワーッと、体を上へと持ち上げられたかと思えば、すぐにスゥーッと深い谷間へと吸い込まれるようにして、落ちて行く感じは、闇も手伝って決して気持ち良いものではない。それも連続でだ。


 しっかり閉じられている舷窓を、激しくパラパラと雨が叩き、ウーウーと風が不気味に鳴いている。


 雷光が一瞬だけ、舷窓から差し込んだ。


 青白く照らす室内に、すっかり血の気の引いてしまった惣太郎の顔が、幽霊のように浮かびあがった。


「あ、嵐!? なんで?」


 ようやく惣太郎は、この状況を理解した。


 『綾瀬』率いる赤軍艦隊は、予報とは真逆の荒れ狂う海上の真っ只中にいるのだ。


 さっきの衝撃音は、大波浪が『綾瀬』の右舷に激突した音であり、そして、あの大傾斜は大自然の猛威が成せる技だったのである。


 艦首を波浪へと突っ込んだ『綾瀬』は、たちまち大波で軽々と艦体を押し上げられ、そして直ぐ様、艦首を下に海面へと叩き付けられる、を繰り返していた。


 艦隊の上空では、龍神がとぐろを巻いているかのように、黒く凶悪で巨大な乱雲が渦を巻き、不気味な稲光と供に、無数の稲妻が走っている。


 そして、その乱雲は横殴りの猛烈な風雨を、大時化に翻弄されている艦隊に容赦なく降り注いでいた。






「風速は現在、三十メートルを観測! 気圧も、どんどん下がっています!」


 観測器の結果を水兵が大声で叫ぶ。


「一体これは、どういう事なんだ?」 


 『綾瀬』艦橋で、当直の任に当たっていた、大尉の谷口尚道水雷長は顔を青くして呟やいた。


 今までに何度も当直の任務につき、海が時化ている場合も、ままあった。


 だが突如、台風並に激変した気象の変化に谷口水雷長は、大いに困惑していた。


 それは、谷口水雷長がこれ迄に経験したことがない事だったからだ。


 えらいことになった――


 その時だ。


 甲高い声の響きが、艦橋内にこだました。


「谷口、何をやっとる! しっかりせんかッ!」


 雷光に照らされて浮かび上がるこの人物は、鬼の形相で仁王立ちしていた。


 頭髪はすっかり枯れはてツルリとしている。薄くて細い白眉にギョロリとした大きな目、そして大きな鼻と口。顎には真っ白で短く綺麗に整えた顎髭を生やし、腕っぷしには自信のありそうな、厳つい体躯をしている。


 この人こそ、老いてなお盛んな『綾瀬』艦長、山下重蔵大佐であった。


「今から、水雷長に代わって俺が指揮をとるっ! 艦を波に向けろ! 全艦、取り舵三十度っ!」


 この大時化である。


 山下は、横からの波浪による転覆を危惧して、艦隊に艦首を波に立てるよう直ちに号令を下すと、自ら艦内放送用のマイクを握り、叫んだ。


「各員、第二警戒配備につけっ!現在、本艦率いる赤軍艦隊は、低気圧に遭遇している。猛烈な時化であるが、不意な事故に備え、落ち着いて行動するよう望むものである。終わり!」


 


 第三警戒配備が解かれ、艦内に第二警戒配備を告げるブザーが、桁たたましく鳴り響いた。


「第二警戒配備!」


「起きろっ! 第二警戒配備だ!」


 各兵員室は、蜂の巣をつついたかのような騒ぎである。


 釣床、すなわちハンモックから、水兵達が次々と勢いよく飛び降り、素早くセーラーの水兵服に着替えては、駆け足でそれぞれの配置先へと駆け足だ。


 当直三交代制から、当直二交代制へと移行し、第二警戒配備下、配置につけば、もはや厠へ行くことさえもできない。




「さてと……」


 目玉をギロリと怒らせた山下が、谷口水雷長を睨んだ。


「谷口、なんだこの有り様は? 何故、もっと早く俺を呼ばん?貴様だけで、乗り切るつもりだったか? この嵐を」


 山下が、鼻息荒く。左眉を吊り上げて訊いた。


 山下の言葉に、谷口水雷長の体が硬直する。


「申し訳ございません、艦長。しかし、五分も経たないうちに、こんな天候になってしまい、何事かと当惑してしまいました」


 谷口水雷長、必死の弁解である。だが、これは事実であった。


「五分そこらで、この天候だぁ? バカを言うなよ」


 とても信じられない、と言わんばかりの山下の口調だ。


「いえ、艦長。本当にそうなのです。急に辺りが暗くなったかと思えば、海が時化、突然の暴風雨になったんです」


 重く唸るように言う谷口水雷長である。


 今度は、山下が困惑する番だった。


 これ程の低気圧なのだ。何か前触れがあっても、おかしくはないはずなのだが、谷口水雷長の物言いは、突然に暴風雨を伴う乱雲が出現したと言わんばかりではないか。


 そこで、ひとつの疑念が山下の脳裏に浮かんだものである。


「では谷口、お前に訊くが、中央気象台からの気象無線通報は、きちんと確認したのか?」


 気象無線通報とは、中央気象台が発信していて、艦船や漁船などが安全に航行するための海上における天気予報と云われているものだ。


 山下は、それを谷口水雷長が見落としたのではと勘繰り、訊いたのだ。


「はい。当該海域は天気晴朗、昨日と変わらずです。気象無線通報を元に航海科が、天気図も作成してありますが、ご覧になりますか?」


「天気晴朗だと? 間違いないか?」


「間違いありません」


 しっかりとした口調で、谷口水雷長が言い切った。


 この言葉に嘘はない。山下は、そう判断したものだ。


「いや、もうよい。ところで、第十一特務艦隊本隊から、なにか異常を知らせる通信は来てないのか?」


「ありません」


 山下が、首を傾げた。


 これ程の低気圧なのに、気づかないものだろうかと、山下は疑問を感じたのである。


 『鳴瀬』率いる青軍、『綾瀬』の赤軍伴に演習海域へ向けて進行している。


 明朝には演習が行われるので、本隊が近くを航行していても不思議ではない。


 しかし、注意などを促す通信もないとなると、本隊はまだ、この低気圧に遭遇していないと考えるしかなかった。


「そうか……。とにかく予報は大外れだ。それと、本隊は今だ、この低気圧に遭遇していないのだろう。ならば、本隊に打電だ。『我、猛烈ナル低気圧二遭遇、注意サレタシ』、とな」


「わかりました」


 谷口水雷長が、艦橋の壁に備え付けられている、電話の受話器を取り、通信室にその旨を告げていると、艦橋内がにわかにドヤドヤと騒がしくなった。


 『綾瀬』副長の伊東行雄中佐を筆頭に艦橋幹部や、要員達が駆けつけて来たのだ。


 「艦長、この時化は何事ですか?」


 眉根を寄せた伊東が、冷静に訊く。


「知らんよ。なにせ天候が変化して五分たらずで、この時化らしい。俺たちは、とんでもない事になったぞ」


 上下左右に艦が大きく揺れる中、山下はドカッと、艦橋右舷寄りに備えられている、真紅色のキャプテンシートに腰を下ろした。


「確かに……。これは、マズイ事になりそうですな」


 艦橋正面に立った伊東が、顔を強ばらせた。


 暗闇の海上を、雷光が一瞬の内に照らした光景は、艦橋に居る誰もが見たことのない、おぞましく戦慄するものだったのだから無理もない。


 山脈の連なった、峰のような時化の巨大な黒い壁だ。その波頭から白い飛沫が吹き飛び、まるで牙をむくようにして、次々とこちらへ押し寄せてくる。


 艦首では波を切り裂く事が、出来なかったのであろう。


 もろに『綾瀬』は、第一番主砲まで上から滝のような波を被り出していた。


 それと同時に『綾瀬』は激しくつんのめり、深々と艦首を海中に沈めて、波しぶきをあげながら、勢いよく浮き上がる。そして白浪の山と谷間を、見え隠れしながら突き進んで行く。


 艦内では何かに捕まっていなければ、立っていられないほどだ。


 固定されている物件以外は、全てひっくり返り、艦の動揺の度に、あっちへこっちへと転がっている。


 そして海には強いはずの海軍軍人でさえ、この激烈な動揺に船酔いを起こす者まで出始めていた。


 元戦艦の『綾瀬』でこの有り様だ。


 『綾瀬』よりも小さい軽巡洋艦の『鈴鹿』、第三十五駆逐隊の四隻の駆逐艦は、木の葉のように翻弄され、中には転覆しても不思議ではない、傾斜が四十度にも達する艦もあった。


 激しく波浪が激突する度に、艦体が激震だ。強靭なはずの鋼鉄の体から、悲鳴のような軋み音が不気味に響く。


 それでも単縦陣形を維持しようと、難しい操艦を続けていた各艦だったが、すでに前方を行く艦を視認できくなっていた。


 それほど、この暴風雨は苛烈で急であり、そのため自然の猛威に、陣形は崩れてしまっていたのだ。


「後続は? 『鈴鹿』は見えるか?」


 山下が、ハッとなって大声を出す。


 見張り員は、雨着も着用せず、激しい風雨が打ち付ける露天の見張り甲板へと飛び出すや、備え付けの双眼鏡に必死になって、取りついた。


 そして、顔面にあたる暴風雨の痛さを我慢し、足を踏ん張って風圧に堪えながら、懸命に暗闇の海上へ軽巡洋艦『鈴鹿』の明かりを求めた。


「『鈴鹿』、見えませ―んっ!」


 悲痛な見張り員の叫び声が、伝声管から響きわたった途端、強気な山下の顔が、ここで初めて歪んだ。


「信号と打電だ! 全艦、明かりを全て点せ! それから、『鈴鹿』に『綾瀬』が見えるか、知らせろと言え!」


 直ちに、無電が飛び、信号がチカッ、チカッと不気味な黒い(なみ)の山と谷へ向けて発せられた。


 すると、『鈴鹿』から無電で直ぐに返事が返って来た。


「ワレ、『綾瀬』ヲミトメズ」


 『鈴鹿』からの電文を見て、山下が首を振りながら、それを伊東へと渡した。


「自然の大猛威の前に、無敵海軍と言えどもお手上げですなぁ。艦長、この波浪です。操艦は難しく、衝突事故も懸念されます。ここはいったん陣形を解いて、各艦長の指揮に任せてはどうでしょう?」


 真剣な眼差しの伊東が、重く低い声で意見具申した。


「なるほど、そうするか。しかし、本当に事故が起こらんよう、祈りたい気分だ」


 山下が、吐き捨てるように応じていると、


「現在、風速四十メートル以上を観測!計測不能となりました!」


 風速計を注視していた、水兵が悲鳴に近い声で叫んだ。


 『綾瀬』に備えられている風速観測器は、上限四十メートルまでしか観測できない代物だった。


 その風速計の針が振り切ってしまったのだ。


 これ以上、海が荒れ狂わんことを願いたい艦橋にいる要員達をよそに、大きな箱のような『綾瀬』の塔型艦橋に、艦首を飛び越えた波が、直接激突だ。


 『綾瀬』艦橋に衝撃音が轟き、艦が大きく揺れた。


 もはや波を切り裂くはずの艦首が、役に立たないことを悟って、山下の表情が厳しくなる。


「艦長、正面! 大波浪がっ……!」


 いつもは冷静沈着なはずの伊東が、大声を挙げた。だが、次の言葉が出ない。


 その理由は、すぐにわかった。


 稲光が連続して、暗い海を照らした。


「なんだ?これは!?」


 山下は、わが目を疑った。


 海上にモリモリと盛り上がった波浪の壁が、常軌を逸する巨大な塊となって、『綾瀬』に迫っているではないか。


 その頂きは、艦の遥か上。


 『綾瀬』の塔型艦橋は、特務実験艦として改装された折りに設置されたもので、その高さは十メートル。


 しかし、眼前の大波浪は、容易くそれを越えているのだ。その現実に、山下は愕然とした。


「これは……。きょ、巨大波だ……」


 山下の大きな体が、ワナワナと震える。


 荒れ狂う海上では、浪の先端が尖り、船体を傷つける三角浪が出現するものだ。


 それを憂慮していた山下だったが、浪と浪が重なり、偶然に突然出現する巨大波の事は、まったくもって考えもしなかった。


 こんな巨大な浪が出現すること事態が極めてマレであるし、海上勤務一筋の山下でさえも、お目にかかるのは初めてだった。


「速力を上げて、巨大波を乗り切るんだぁ! 航海長、機関最大戦速!」


 山下、とっさの判断だ。


「機関、最大戦速!」 


 必死の形相で、伝声管に取り付き、吉松良雄航海長が絶叫する。 



「ジリリリリンッ!」


 物凄い機関動力音に混じって、速力変更を告げる合図のベルが負けじと鳴り響いた。


「よし、最大戦速だっ! それ、全力で石炭を放り込めっ! 蒸気の圧力を上げろっ!」


 『綾瀬』の艦底、機関区域で褌一丁の水兵達が、全身から汗を噴出させながら、シャベルで石炭を細かく砕き、紅蓮に染まる(かま)の中へと、ドシドシ放り込んで行く。


 速力、十八ノット。


 これが『綾瀬』全力の最大速力だ。


 新鋭艦から見れば、ヘでもない速力なのだが、クラシックな軍艦である。これは、致し方の無いことだった。


 暴風雨の中、『綾瀬』に屹立している三本の煙突から、ボワッと、黒い煤煙が吐き出される。


 速力が徐々に増すに連れて、海中に没している二つのスクリューの回転数が上がってゆく。


 『綾瀬』は、艦体を左右へと揺らしながら、巨大波を被らんが為に、ノタノタと登るようにして頂きを目指す。


「速力、現在十八ノット!」


 山下の方を振り向き、絶叫する吉松だ。


 ようやく、最大速力に達したが、全ての労苦は、もはや無駄だった。


 速力で巨大波を乗り切る山下の思惑はくだけ散ったも同然で、巨大波の迫る速さに比べて、余りにも遅いのだ、『綾瀬』が。



「何かに掴まれっ! 波を被るぞっ!」


 直感で、山下は叫んでいた。


 『綾瀬』は、今だ巨大波の中腹。頂きは、その先だ。


 只でさえ暗い艦橋が、更に暗くなった。落雷のような音が聞こえる。それは、巨大波が『綾瀬』に覆い被さる瞬間だったのか。


 あれほどの大波である。どれだけの力が『綾瀬』に架かるのか想像も出来ない。


『綾瀬』が上下へ左右へと今までにない、とてつもなく激しい揺れに襲われだした。


 この状況に艦橋内にいる誰もが、最悪の結末を予想し、苦悶の表情を浮かべた。


「わーッ!」


 恐怖で、誰かが叫ぶ。艦橋にいる要員は、衝撃に備え反射的に身を守る為に屈んだ。


 ところがである。


「…………」


「……?」


 何故だろう。


 信じられないことに、衝撃がない。艦橋はおろか、『綾瀬』自体が健在ではないか。


 全員が、不思議そうにお互いの顔を見つめ、やがて恐る恐る頭をもたげた。


「どうなってるんだ?」


 艦橋内がざわついた。


 何という幸運な出来事なのだろう。奇跡が起こった。巨大波を目撃した誰もが、そう思わずにはいられなかった。


 確かに覆い被さってきたはずの巨大波が、まるで瞬時に消えてしまったかのようである。


「一体、どうなってるんでしょう?」


 信じられないといった表情で、伊東が山下に訊く。


「知らんよ。狐にでも化かされた気分だ。外を見てみろ」 


 山下の低く腹の底から絞りだすような声である。 


「はい!?」


「わからんか?暴風雨までが、収まってるぞ」


 慌てて、艦橋正面の窓を凝視する伊東の表情が驚きに変わった。


 いったいどうなっているのであろうか。確かに、今の今まで艦橋の窓を叩いていた風雨が、ピタリと止んでいる。


 それもそのはずで、風雨の原因であった上空の低気圧までもが、嘘のようにすっかり何処かへと消え失せていたのだった。


 お陰で、あれほど激しかった艦体の揺れは緩慢になり、後から際限なく押し寄せていた、風浪もピタリと治まって、海上は穏やかな海面に戻っていた。


 いつの間にか『綾瀬』は遂に、巨大波はおろか、嵐をも乗り切っていたのである。


 ところが、それと入れ換わるかのようにして、『綾瀬』はスッポリと濃厚な霧に包まれていた。


「あの巨大波といい、不思議なもんですなぁ……」


 目を白黒させながら、伊東が言うと、山下が深く頷く。


「まったくだな。だが、今度は濃霧だ。それに、見ろあれを。狐火も出て来たぞ」


 山下の指差す、『綾瀬』の遥か前方に、明るく白い怪火がポツンと現れていた。


「減速、九ノット!この霧だ。見張りを厳にしろっ!各艦に打電!安否を『綾瀬』に知らせいっ!」

 陣形を解き、自由行動を許していたので、怪火を他艦の明かりではないかと山下は考えていた。

 

 濃霧の中『綾瀬』が、その怪火へ向けて発光信号だ。警笛も鳴らした。


 しかし、反応はない。


 それどころか、怪火は益々明かりを増し、大きくなってゆくではないか。それは、瞬く間にトンネルを脱け出したかのように、一気に辺りを眩く照らしだした。


 あれほどの濃霧も、サーッと引いて行くと、そこには艦橋にいる全員が息を呑む光景が広がっていた。


 時刻は、午前零時半。


 なのに、『綾瀬』は茜色に染まる、夕刻の穏やかな海上を、力強く波を切って進んでいる。


「これは……!?」

 伊東が驚いた表情で辺りを見回す。


「どうやら、狐だけではなく、狸もおるようだなぁ。これは、油断ならんぞ」


 山下の左眉がつり上がる。そして号令が下された。


「第一戦闘配備だっ! 総員配置につけぇ!」


「第一戦闘配備! 総員配置につけ」


 マイクを取り、伊東が告げる。そして戦闘配備を意味するブザーが、艦内に鳴り響く。


 『綾瀬』は試作兵器をテストする、実験艦である。


 だから戦場へ出ることは、もちろん今までない。だから、演習以外で戦闘配備につけの号令を下したのは、山下も伊東も初めてであれば、配置につく者達もそうだった。




 どうして夕陽が差しているのだろうかと思いつつ、真剣な顔つきで惣太郎は飛行服を素早く着込み、飛行靴を履き終えるや、脱兎のごとく自室を飛び出していた。


 目指すは、艦尾にある水上偵察機格納庫である。


 全力疾走で、狭い艦内通路を駆け抜ける惣太郎だ。


 あの時化の中、レスティスはどうしていたのだろうかと、脳裏を過った惣太郎の視界に、艦長室隣のドアが開かれるのが見えた。


 惣太郎はまだ知らないが、かつて元々そこは艦隊司令長官室だった部屋だ。


 内装や調度品、室内の広さも艦長室より格上の部屋から出てきたのは、白の作業着姿のレスティスではないか。


「雨宮さん! 大丈夫でしたか?」


 思わず立ち止まって、惣太郎が心配そうに訊いた。


「船酔いのことかしら? 女だからって、侮らないでね。大丈夫。こう見えて船にも時化にも、めっぽう強いんだから。じゃないと、軍艦なんて乗れたもんじゃないわ」


 レスティスのおっしゃる通りのようだ。


 血色は良く、喋りも滑らかである。並の女性ならばこの時化だ、只ではすまない。だから惣太郎は舌を巻いた。


「だけど、心配なら口だけじゃなくて、来てくれてたら、もっと嬉しいんだけど」


「いや~それも、そうですね……。面目ないです」


 頭をポリポリかきながら、惣太郎が苦笑いを浮かべる。


「ところで、物凄い嵐だったけど、こんどは何? まだ零時半を少し過ぎたところなのに、夕陽が差したかと思えば、戦闘配備? 演習以外で初めて聞いたんだけど、これって戦争?」


「いえ、ハッキリとは、私にもわかりません」


 惣太郎の顔が真剣になる。


「ただ、ここは帝国の海域ですし、大陸の事変地からもかなり離れてるので、戦闘はあり得ませんね」


「ふぅ~ん……」


 腑に落ちない顔つきで、レスティスが惣太郎の顔を見つめていると、


『あ~、諸君に告ぐ』


 突然、スピーカーから山下の声が流れてきた。


 その内容は、現在異常天象で明るい事。戦闘配備につけたのは、それに伴う念のための処置だと告げて、山下はこう締めくくった。


『この天象に関しては、全力あげて目下調査中なので安心してくれ。そして本官以下、艦橋内は泰然自若として落ち着き払っておる。だから諸君も同様な行動を求むものである。終わり』


 自身の予想が当たって、惣太郎が誇らしげに言う。


「思ってた通りだ。良かったですね、戦闘はありません。この海域に敵なんか、いるはずがないんですよ」


「なんだ、残念!」


 レスティスの吐き出した言葉だ。


「敵なら、Dシステムを試してみようと思ってたのに! 少尉もそう思わない?」


「そこですか……」


 レスティスの技師魂に、呆気に取られる惣太郎の背後から、


「戦闘配備中に、誰だっ、油を売っている奴は! 官姓名を名乗れぇ!」


 と、大音声で誰何だ。


 ギクリとして、惣太郎が振り向くや、アイツだ。昼間の大尉さまではないか。


「水上偵察機操縦員、海軍少尉清水惣太郎です!」


「まぁたぁ、お前か! 貴様という奴は、戦闘配備を何と心得ておる!」


 なんとも素晴らしいパンチだ。


 海軍軍人にしておくには勿体ない程の、右ストレートではいか。是非ともプロの拳闘士、ボクサーになるべきである。


 電光石火、瞬時に気合いを入れられ、ダウンする惣太郎だった。






「目下調査中ですか?」


 伊東の声に、山下がニンマリだ。


「ん? なぁに、嘘も方便だ。この状況下、兵が動揺しては困るからな」


 顔には、おくびにも出していないが、この天象だ。どうなってるんだと、内心では大いに困惑しつつ、山下はキャプテンシートの前に集まった、艦橋幹部達を見渡した。


 伊東をはじめ、皆真剣な顔つきで落ち着き払っている。全員が信頼できる部下であることに、山下は心強く思った。


「さて、この天象をどう思う?」


 山下の問いに、まず口を開いたのは吉松航海長だ。


「これは、悪い夢を見てるとしか思えません。西陽がまた差すなど、ありえないことです。中央気象台に問い合わせては?」


「私も伊東副長と、同じ意見です。あの低気圧の件もありますし、中央気象台は天文に関しても、何かしら大失態を犯しているのではないでしょうか? これは、由々しき事態であり、厳重に抗議すべきかと」


 当直でまごついてしまった、谷口水雷長の語気が荒い。


「しかしながら、今だ本隊から通信がないのも解せませんな。これ程の異常天象ですぞ。本隊はおろか我が帝国内が大騒ぎしても不思議ではないはず」


 伊東の言葉に皆さもありなん、な表情だ。


「通信長、少し宜しいでしょうか?」


 艦橋に通信室から、メモを手にした通信士が難しい顔つきで現れた。


 艦橋の角で、ゴニョゴニョと報告を聴き、思わず伊集院三郎通信長が、


「うーん」


と唸る。


「何事だね、伊集院通信長?」


 そのやり取りを、横目で注視していた山下が声を掛けた。


「はい……。報告によれば、国営放送を始め、中央気象台の気象放送、他部隊の無線通信が、一切傍受できなくなってるようでして……」


「なに!? 全て傍受出来んのかっ!?」


「ええ、そのようです……」


 あれだけの暴風雨だ。被害ゼロの方が奇跡である。


 山下が渋い顔になった。


「通信機器の故障か? 復旧の見込みはどうなんだ?」


「いえ、どうやら機器などの故障ではないようなんです」


「何だと!? 意味がわからんぞ、通信長?」


 山下の左眉が、ピクッとつり上がった。


「中央気象台や海軍部隊の通信傍受は出来ないのですが、怪電波を傍受したようなのです」


「怪電波!?」


 思わず身を乗り出す山下だ。


「はい。大エーデルセン帝国と名乗る国が、オーパ元帥が南方戦線の防戦に成功した宣伝放送と、何処かの軍部隊が、どうやら艦船を襲撃したらしく、その軍艦から襲撃された報告と救援を要請している内容で、その宛先は……」


「その宛先は?」


「リブル共和国海軍軍令本部及び、リブル共和国海軍艦隊総司令部宛です」


 伊集院がメモを、山下に手渡す。


 食い入るように山下の視線がメモに注がれ、一気に読み終えると、深いため息をついた。


「副長、これは大陸の事変と何か関連があると思うかね?」


「それは謀略という意味でしょうか?」


「そうだ。しかし、なんとも底脳な謀略だな。大エーデルセン帝国? リブル共和国? 聞いたことのない国じゃないか」


 フンッと、山下が鼻で笑う。


「ですな。謀略にしては、荒唐無稽。第一、我々に謀略を仕掛ける意図が不明です……」


「このクソ忙しいときにっ!」


 山下がメモをクシャクシャにした。


 その時だ。


「右八十度、船らしきものから黒煙! 距離一万!」


「黒煙!?」


 見張り員の叫び声に、たちまち艦橋内が色めきたった。


 直ちに、山下が増速の号令だ。進路も黒煙の上がる方へと向けられる。


「通信長、君はとにかく、とにかくだ。本隊と中央気象台にこの天象を打電してくれ」


 山下にとって、もはやこの異常天象の件は、後回しだ。


 キャプテンシートから腰をあげ、山下が、双眼鏡を構えた。


 行方の知れない、『鈴鹿』や第三十五駆逐隊の駆逐艦からは、今だ連絡はなく安否は不明である。だからもしやと思い、胸が締め付けられる山下だ。


 黒煙を上げる船は、手負いの獣のように、ヨタヨタと北へと向かっている。


 それを追走する『綾瀬』が、ジリジリと近づくに連れて、それが『鈴鹿』や第三十五駆逐隊の『春桜』、『夏桜』、『秋桜』、『冬桜』のいずれでもないことがわかると、山下は胸をなでおろした。


「どうやら、中型の貨客船のようです」

 傍らで同じように双眼鏡を構える、伊東が呟やいた。


「そうだな……。航海長、この付近を民間船が通るか?」


 山下の問いに、吉松航海長が即答した。


「まず、あり得ません。当該海域は既に演習実行海域でありまして、漁船、貨客船の類いには、いつも通り近づかないよう、通達が出されているはずですから」


「だろうな。すると、あれはいったい、何処の船なんだ?」


 山下は食い入るようにして、炎上する貨客船の船尾を見続けた。


 やがて、貨客船に追いついた『綾瀬』が減速する。そして徐々に間合いを詰めながら並走だ。その距離は、三千メートル。


 一本煙突のある中甲板からは、炎が立ち上がり激しく燃えている。黒煙は後部甲板に流れていて、これでは肝心な国籍を示す国旗が確認出来ない。


 舌打ちをしながら、山下は双眼鏡を船首の方、前部甲板に移した。


 すると、どうだろう。


「うん……?おい副長、船首に乗員らしきものがみえるぞ」


 山下は、目を見張った。人だ。人がいるのだ。一人ではない。二人、三人、いや五人は居る。しかも、東洋人ではなく、どうやら西洋人のようである。



 そして乗員と思われる彼らは、一塊となって、懸命になにやら動かしているようだ。


 『綾瀬』は尚も盛んに『ドコノフネカ』と誰何の発光信号を送り、警笛も鳴らすが、正体不明の貨客船からは、ウンともスンとも返事がない。


「なんだか、様子がおかしいですね」


 胡散臭そうに、伊東が呟く。


「まったくだ。これでは『綾瀬』に救助を求めるどころか、逃げてるようにしか思えんな」


 事故で炎上してるのか、よくわからないが、消化をしてる様子もない。それに船首にいる乗員達の不可解な行動もあって、山下の表情が厳しくなる。


 その後ろで、またもや通信室から伝令が駆け上がって来たものだ。伝令からメモを受け取り一読したとたん、伊集院の表情が険しくなる。


「艦長、またもや怪電波を傍受しました」


「またか? 読み上げろ」


 双眼鏡から目を離そうともせず、山下が乱暴に言い放つ。


「はい……。『本船『エルシー』号ハ、被害甚大ニテ尚炎上中。現在、三本煙突ノ戦艦カラ追撃ヲウケツツアリ。国籍ハ不明、至急援軍ヲ乞ウ』……。宛先は、リブル共和国海軍軍令本部及びリブル共和国海軍艦隊総司令部であります……」


「くどい。その手には乗らん」


 一笑に付す山下だったが、伊東副長の反応は違った。思わず双眼鏡をおろす伊東副長だ。


 その表情は、真剣そのもので、伊集院に眼光鋭く訊いたものだ。


「通信長、いま三本煙突の戦艦と言ったかね?」


 伊集院が意味深な表情で深く頷きながら、メモを伊東副長に差し出した。


 こんな偶然があるのだろうかと、伊東は不審に思っていたのだ。


 目の前の船は、軍艦ではないが、炎上中である。西洋の国を想像させる国名に、西洋人らしき貨客船の乗員だ。


 そして傍受した電文の内容から、追尾してる三本煙突の戦艦とは、この『綾瀬』の事ではないのかと、しばしの熟慮の後、伊東が慎重に、重い口を開いた。


「艦長、まさかとは思いますが……、あの船、ひょっとして『エルシー』号なのでは?」


 伊東が眉根を寄せて言うと、山下の左眉が吊り上がった。


「くだらん通信に惑わされるな!あの船に信号。停船を命じろ。武器庫開け!臨検用意!」


 取り付く島もないとは、この事だ。悪いクセが出たものである。


 短気を起こした山下は、全てを一気に解決するつもりのようだ。停船しなければ撃つ勢いである。


 山下が、貨客船から目を離した一瞬の時だ。


 グルリと、貨客船の前部甲板で何かが、『綾瀬』に向けられたのを、山下は知らなかった。




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