【第三話】Sense of incongruity.
俺はまず家の周囲の状況を把握しようと試みた。
今では見知っている顔以外は全て『敵』と判断する。
話を聞いたことはあるが、実際に目撃したことはない。
だから全てを敵に見立てることにより、警戒心を解かないように心がける。
何度思い返しても今の世界の状態はまるでゲームの中みたいな状況だ。
小学生とか中学生のときはこんな世界にならないかなとか思っていたけれど
実際にこうなってしまったらこんなにも大変だなんて思ってもみなかった。
大体そういう想像をする小学生とかは、物事を主観的に見る。
あくまで『自分が主役』『自分が一番強い』とかってことを前提において
自分に都合のいいように頭の中で物語を進めてしまう。
しかし今の状況はその逆。
物語の主役で、一番強い設定の『主人公』の敵。
それが俺たち普通の人間、であるということだ。
そして、今俺たちの敵であるのは・・・・
誰もがなりたいとそう願った『超能力者』。
一概に超能力者と言っても力を人殺しなどに使う要するに悪者だ。
俺たちが今まででは見たこともないような戦い方をするらしい。
どこの国だかは知らないが『人間に超能力を与える』物質だか装置だかを作った。
それを人体に使ってみたら見事、超能力が使えるようになった、って話。
だけど俺はまだその話を信じてはいない。信じたくもない。
所詮それがライター程度の火を使うぐらいの力だったならば殴るだけで倒せるかもしれない。
まあ、現時点で俺たちの住む日本が約半分、そいつらに制圧されてるってんだから、
おそらくそこまで貧弱な力ではないことは確かだろう。
俺は少しそんな考えを巡らせてから家の門から顔を出す。
「・・・。」
誰もいない。鳥の鳴き声すらも聞こえない。
現実味がなかった。誰もいない早朝の道を歩いている気分と近いかもしれない。
しかし、俺はその中に逆に違和感を感じた。
不自然すぎる。ここまで誰もいないのは。
この町には降伏勧告すら出されているっていうのに誰もいない。
俺は警戒したまま家の門を出る。
ここからはいつ死んでもおかしくない。警戒しつつ迅速に目的地に向かわなければ。
曲がり角を覗き込みつつ曲がる。誰もいない。
俺は覚悟を決め、直線道路では常に走って移動した。
(着いた・・・)
目的地に到着した。
ここは俺はエアガンを使って仮想を戦闘ごっこのようなスポーツ、
「サバイバルゲーム」をやっていたころによく通った店だ。
少し上ずった気分で店に入る。当然、中には誰もいない。
はず、だった。