表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
気ままに行こう!  作者: 空魚
vol.1 ガルディナ王国危うし!?
1/34

プロローグ

 閃光が走った。それは瞬く間に視界を覆いつくし、絶大なる熱量で大地を焼いた。家や小屋はもちろんのこと、戯れていた子供達や仕事に精を出していた人々、それらは全て跡形もなくなり、たった今までそこで生活が営まれていたとは思えないほどだった。

 閃光の発信源から悲痛な子供の叫び声があがる。まだ十になったばかりの幼い少女だ。衣服は煤で汚れ、大きな瞳は閉じることを忘れてしまったかのように見開かれている。立っている気力を失ったのか彼女は地面に座り込むと己が掌を見つめた。

 堰を切ったような叫び声に続くのは、小さく弱々しい嗚咽だった。恐怖と罪悪感のため全身が戦慄いている。歯の根が噛み合わない。

 ――ワタシガヤッタノ?

 自覚。けれど、その現実が少女にはまだ受け入れられなかった。

 ――オニイチャンハ?

 ――オカアサンハ?

 ――オトウサン……お父さん!

 街が消滅する直前の記憶が蘇る。いつもとは違い優しかった父。優しい表情、優しい声、優しい態度。優しく、恐ろしかった大きな掌。

 突然の衝撃は気象にも影響し、空は白と黒のまだら模様となった。雨がパタリ、パタリと降り出す。焼け焦げた大地に。少女の上に。急激に冷やされた焦土が白い湯気をあげ、その惨状を覆ってゆく。

 体の熱が雨に混じって大気に溶け出していった。握り締めても血の気を失った掌からは何の温かみも伝わってこない。

 ――そっか……お父さんはわたしがいらなかったんだね……

 全てを失った今、自分の生を諦めることなど少女にとってなんでもなかった。動かなくなってゆく体を気にもかけず、彼女は天を仰いだ。意識がだんだん遠のいていった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ