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G線  作者: 朋川禾弥
中学生編
12/43

第3話-進級③



本屋で購入予定だった新刊を手にし、会計を済ませて

店を出る。


近所の本屋なのであまり賑わった通りではなかったが、

辺りが少し騒がしいことに気づいた。





「助けて!誰か助けて!」



女性の声が聞こえた。


目をやると若い女の子が二人の男に路地裏へ連れていかれそうになっている。


ナンパと言えば賑わった街中でよく見かけるものだが。



(こんな住宅街で何やってんだか)



というにもナンパというには少々強引すぎる。

人がちらほら通っていて声は届いているハズだが助ける所か誰もそちらを見ようとはしない。




「お願い離して!!」



「おい」


理人は一人の腕を掴んだ。



「なんだよ」


振り向いた男は不機嫌にそうに言い。掴まれた手を振り切って理人の顔面を狙った。


「正義の味方ぶってんじゃねーよ!!」



理人は避わしながら後ろ首に肘を打ち込んだ。



「テメエ!」


もう一人も掴みかかってくるが飛んできた拳を交わし、顔面を蹴ると

ふらついた男は路地の壁へと頭を打ち付けた。ほとばしる鼻血。



理人は修行の成果によりそこらの少人数の一般人なら勝てるようになっていた。


敵わないと悟った二人組は諦めて足早に逃げていった。片方は鼻からでる血を庇いながら。




「大丈夫・・・?」


気の利いた言葉も思いつかず、目線も空視気味に訪ねた。こういう場面って気まづい。

女性は「ありがとう」と消え去りそうなくらい小さな言葉を呟き小走りでその場を後にした。






別に正義風を吹かせたい訳じゃない。


ただ見てしまったものを見逃しても後で後悔するのは自分だという事をよく知っている。


かつての自分がそうであったのだから。








その様子を路地裏の向こうから少女がこっそり覗いていて、こちらも

複数の男に声をかけられる。



「ねー君一人?危ないよ~こんな所に女の子一人で居たら」


返事がない所か、振り向く気配すらない。




「ねーってばー」


「聞いてる?」



「五月蝿いなぁ、邪魔しないで」


一言目がそれだった。少女は振り向かずに言った。



「ねぇ何やってんの?俺達と遊ぼうよ」


そうして肩に男のてが置かれて初めて少女は感情をあらわした。



「邪魔しないでって・・・いってるでしょ!」



ドガッ


肩に置かれた手を掴んで投げ飛ばしたのである。



「なんだこの女!?」



予想だにしない状況に戸惑う男達、その中で一番血気盛んな者が次の被害者となった。




バキッ


グシャッ







理人は立ち去ろうとしていた場所を振り返った。路地裏がやけに騒々しい。


「何だ今度は・・・」




巻き込まれたらやっかいだ。でも気になるからコッソリ覗いてみることにする。


こういう所は変わらない。





その先に居たのは----------





「もう!理人君を尾行中なんだから邪魔しないで!!」






!?





「カレン?」


少女の名前を呼びかける。

名前を呼ばれた少女はビクリと反応し恐る恐る振り返った。



「り・・・ひと君」


そこに居たのは芹沢カレンと倒れた複数の男だった。

カレンの顔が見る見る蒼ざめていくのが理人にも分かった。




「これわ、あのっ別に理人君を尾行してたとかじゃなくって

あのそのっ・・・・・


そんな事恥ずかしくて言えない~~~!!」





「言ってんじゃん!!」






とりあえずカレンを路地裏から引きずり出し話を聞くことにした。






「あのね私、理人君がバルドーニ家のボスの息子だって知ってたの」



「なんだってぇ!!?」



それは予想外だった。

今日会ったばかりの子に一目ボレされたのかもとか思ってはなかったけど。

これっぽっちも思ってなかったからな!別に!!


そして更に衝撃的な一言を発した。



「というのも私はバルドーニの同盟であるパネッラ家の娘で・・・」




(マフィア!?またマフィア!!?)




「私小さい頃からあらゆる武術をさせられてて


今理人君のそばに教育係のクロウさんが来てるから

お前も傍に居て理人君を護衛しつつ何か学んで来いって

お父さんに・・・」




「何処の家も大変だな・・・・」




「しかも、仲良くなったらお嫁さんにしてもらったらえるかも

とかいいだして無理矢理転校させられて」




「お嫁さーーーーん!?」




「それで理人君がどんな人か知りたくって、尾行しちゃったエヘヘ」




「そ、そそそそそら気になるわなごめんこんなヘタレで!!」



「えぇっ!?そんな事ないよー!

強いし優しいし番長だし!凄く素敵だと思った!」


番長だけは余計だと思った。







「ちゃんと自分から話すつもりだったんだけど

ごめんね、理人君はもっと普通の人と友達になりたかったよね・・・

普通じゃなくってごめんなさい。」




理人がカレンに対し普通を求めていたことに気づいていたのだ。






「そんなことない!むしろ俺普通がどんなのか分かんないし!」


今回の兼で自分は人を見る目がないことを思い知った。

一般人だと思って疑わなかった人間がマフィア関係者なのだから。

だから自分は"普通"とは何か知らないのかもしれない。




「よかった。普通を演じるのは得意だったんだけど

学校じゃ誰も本当の私を知らないし、実はちょっと寂しかったんだ」



「じゃあ、早めに打ち明けれてよかったな」



「うん、こんな私でも仲良くしてくれますか?」



「もちろんだよ、よろしく。」




芹沢カレンはやっぱり少し変わった所もあるけど、

本当の自分を知られて人が離れていくことに怯えるごく普通の女の子だった。













ほどなくしてクロウと珠姫を携帯で呼び出し事情を説明した。


「何だ、もうバラしたのか」


さして驚きもせずにクロウは何食わぬ顔で言ってきた。


「知ってたのかよ・・・・」


何処か腑に落ちない。



「まぁな」



「クロウ君なんて呼んでごめんなさいクロウさん」


「気にするな」


こんな奴「バカクロウ」で十分だと思ったがもちろん声には出さない。



「それから、珠姫ちゃん。

これからも珠姫ちゃんって呼んでもいいかな?」



「構わない」



珠姫の言葉にカレンは一気に目の色を輝かせた。



「私ねっ自分がマフィアの娘って知られながら友達が出来るのって初めてなんだっ


こっちに来て本当によかったぁ!」



学校で愛想のいい笑顔を浮かべていた時よりも自然な笑顔に感じられた。




「これからは珠姫ちゃんで着せ返したり


皆と一緒に殺し屋ゴッコしたり、マフィア的リアル鬼ゴッコしたり


しながら遊べるかと思うとワクワクして鼻血が出そうだよぉーー」


興奮した様子で両手をブンブン振り回し始めた。




「うん、極力普通に遊ぼうな。」


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