第3話-進級②
5限目の体育の授業内容は少人数でやるサッカーだった。
各自適当にチームを作れと言われたので自然と出来上がったチームは
俺とクロウ、三島、マイケル、ジョージという面子だった。
「頑張りましょうね櫻井さん!」
三島が張り切っている。不良とは勝負事にやたら熱くなる傾向があるらしい。
「お前ら負けたら全裸に靴下で町内一周だからな(理人含む)」
魔王が囁いた。
「絶対勝つぞー!!」
三人とも目が血走っている。意気込みはより強固なものとなったようだ。
そして先生によるキックオフの笛が鳴り響いた。
ピピーッ!!!
しかし試合開始早々事件は起こった。
バキッ!!
なんとクロウにボールを回したとたん、クロウのボールが三島の顔面を直撃したのだ。
倒れる三島。
先生が慌てて笛を鳴らし試合を止め、三島に駈け寄った
「大丈夫か三島!?」
相手チームも固まっている。
「何してんだよお前はっ!!!」
理人はクロウに怒鳴った。
「いや、よく考えてみたんだが靴下に全裸ってかなり面白と思ってな」
「面白かねーよ!!!不愉快だっつーの!!!」
すると三人が膝を抱えて泣き始めた。
「うっうっうっ全裸に靴下イヤだぁぁぁ」
「お前らも一々言うこときーてんじゃねーよ!!だからクロウが調子乗んだろーが!!!」
「ヒイィッ」
理人の怒りに三人が怯える。かつてにこの三人にビビッていた自分が信じられない。
コイツらの何が怖かったんだ?
「仕方ない、百歩譲って白ブリーフも許してやる」
クロウがため息交じりで言ってくる。
「おお、ブリーフは履はいていいらしいぞ!」
ジョージがガッツポーズを取る。三人に希望の光が差したようだ。
「妥協すんなっ!!!」
理人は更に怒鳴る。しかし重大なことに気づき、マイケルが涙を浮かべて遠い目をする。
「あ、でも俺・・・・・・・白ブリーフ持ってない」
「俺も・・・・」
「俺もトランクス派だ・・・・」
そんな三名にまたしても魔王は囁いた。頼もしい笑顔で。
「大丈夫だ、安心しろブリーフくらい俺が買ってやる」
「いらねーよ!いい人ぶんな!」
「いくらでも買ってやる」
「いらねええええええええ」
運動場に理人の声が響き渡った。
「・・・・お前ら、いい加減始めていいか?」
そんな五人に体育教師は痺れを切らして尋ねた。
放課後
帰る直前に平然と言われた。
「俺は今日決まった飼育委員の仕事があるから先に帰ってくれ、
というか先に筋トレして準備しておけ」
「お前が飼育委員ね・・・・」
「動物は嫌いじゃない」
クロウの場合"嫌いじゃない"という言葉は"好き"に相当するらしい。
「子供好きだったり動物好きだったり肩書きだけみたら超いい奴だなお前って」
「何を言う、お前みたいな冴えないヘタレ野郎の
面倒を黙って(?)みてやってるじゃねぇか存分に敬え。」
思いっきり皮肉を言いながら笑顔で返された。
機嫌がいいのか?どうやら本当に動物が好きらしい。
そういう訳で今日は珠姫と二人で帰ることになった。
いつもは途中の坂道を降りたところで別れるのだが、
丁度読んでた小説の新刊が発売されるので本屋に寄るため
今日はいつもより手前で分かれることとなった。
「あ、俺本屋寄って帰るから」
「そうか、気をつけて帰れよ」
「ああ、お前もな」
「何かあったら携帯に連絡してくれ」
未だにお守り癖は抜けていないらしい。なんだか調子が狂う。
「分かった分かった」
そう言って別れ際に頭にポンと手を置いてやった。
お返しだ。