事故と少女とティータイム:後編
date:2011年 04月24日 日曜日 08:30
時間遡行発動済み
再発動可能まで30分
井澤鏡花は、ある喫茶で、呼び出し人の席に着いた。
「会長さん、来たよ」
その言葉を聞いた、長髪の少女は、開いていたノートを閉じ、鏡花の方を向く。
「あ…いらっしゃい」
「そんな警戒しないでよ。2人の仲でしょ?」
井澤はそう言いながら、少女の前の席へと腰掛ける。
「それでさ会長さん…じゃなかった。ここ学校じゃないし、美琴ちゃんって呼ぶね」
「…す、好きにして」
長髪の少女:雨宮美琴は、ノートを鞄にしまいながらそう言った。
「にしても、お茶会が趣味とは聞いてたけど、私を誘ってくれるなんてね」
「あ、貴方を誘ったのは…えっと、ある人の紹介なの」
美琴はそう言って、ポットの中身を井澤のカップに注ぐ。
「あ、砂糖はいる?」
「一口目を飲んだら入れるよ」
井澤はそう言ってカップに口をつける。
「ああ待って、それ淹れたてだから気をつけて…って、言おうと、したんだけどな…」
美琴が焦って警告しようとしたが、すでに遅かった。
「………熱い」
「え、えっと、ごめん…」
「大丈夫大丈夫。ちゃんといい香りしていい感じに苦くて美味しかったから」
井澤は落ち込む雨宮のフォローをした。
「ほら、美琴ちゃんも飲みなよ」
「あ…うん。ありがとう」
美琴は、カップの中の紅茶を一口飲み、ホッとしたように息をついた。
「にしても、よく生徒会長になれたよね」
「えっと…能力が強いからって…その、担ぎ上げられたの…」
美琴は震える声でそう言った。
「能力…か。そう言えば能力って何だっけ」
「えっと、その…」
言い淀む美琴に、井澤は優しくこう言った。
「ごめんね、急にこんな事言って。言わなくていいから、私の目を見て」
「え、あ、うん」
美琴は、井澤の発言に戸惑いながらも、言われたとおりに井澤の目を見た。
約3秒後、井澤は口を開いた。
「未来視、かな」
「……え」
井澤の発言を聞いた美琴は、目を見開く。
「ノートを開いたら未来が見える、そうだよね?」
「い、いや…嘘、なんでその事…!」
「きみのことを教えてもらったから、私も教えてあげる。君の記憶に教えてもらったの。目を見つめると、考えてることや記憶を覗ける」
美琴は、怯えたような目で井澤を見た。
井澤は薄笑いを浮かべる。
「すごいでしょ?私の能力は」
「な、何をする気なの」
「ざっくり言うと、君を仲間にしたかったの」
井澤は表情を変えずにそう言った。
「パンドラの箱探し。それに役に立つ能力者かどうか知りたかったの」
「何、それ…」
「誘ってくれたのは嬉しかったよ?君は目をつけてた何人かの内の一人だし。けど、仲間にするのは無理かな」
「も、もう…喋らないで…お願いだから…!」
「君は管理委員会の人間だから。さっき能力見たときに知っちゃった」
井澤は残念そうな顔を浮かべながら、カップの中身を飲み干す。
「紅茶、ごちそうさまでした。じゃ、またね」
井澤はそう言いながら、席を後にする。
「…何が、始まろうとしてるの…?」
date:2011年 04月24日 日曜日 09:00
時間遡行
再発動可能
井澤が喫茶店を出ると、雨が降っていた。
「井澤さん!」
結希は井澤を見かけるなりすぐに呼び止めた。
「あれ、結希くんじゃん。何してるの」
「それはこちらの台詞です。パンドラの箱って何ですか?」
「盗聴は良くないよ?ま、別にいいけどさ?どうせいつか日常部の皆にも言うつもりだったし」
井澤はそう言いながら、結希にこう告げた。
「パンドラの箱は、願いを叶える願望機。管理委員会も総動員で探すレベルの物を、この千桜市中の能力者に探させる。そうすれば、この街は大混乱。面白いでしょ」
「…何故そこまで細かく教えたのですか」
結希は井澤に聞いた。
その答えは
「君に…いや、日常部に、私の敵役になって貰うの」
「…何を―」
「何気ない日常を、混沌のフィクションで染め上げるの」
井澤は笑みを浮かべながらそう答え、去っていった。
「…もし、井澤さんを助けなかったら、このような事には…」
結希は、自分のした事の重大さを理解した。
だが、時間遡行は使わなかった。
正確には、使う勇気が出なかった。
「助けないという選択肢は、選ぶわけには行かない…」
混乱をさけるには、井澤鏡花の死が必須条件だと、結希は考えた。
つまり、どの道こうなっていた。
「あ、椎名…くん?えっと、どうしたの?」
美琴は、結希のもとに駆け寄る。
美琴は、ましてや結希も、傘は差していなかった。
「雨宮さん…僕は、とてつもない陰謀に貴方を巻き込んだかもしれません」
「…えっと、それって…どういう?」
「とにかく、事情は後で話します。今はもう、帰ったほうがいいです」
「え、でも」
「僕は、やり残した事があるので」
結希がそう言うと、美琴は渋々帰っていった。
雨が降る喫茶店前で、結希はポツリと呟く。
「管理委員会は何をしているんだ…なぜ、井澤さんを放置しているんだ」
その問いは、雨音に掻き消された。
date:2011年 04月24日 日曜日 09:10
時間遡行
再発動可能
というわけで、プロローグです。
第一章はこれから書くので、よろしくお願いします。
今度は途中で消したりしないと約束したいですね……




