第5話 チートすぎる私の城
ーーー翌朝。
私はキッチンで簡単なスープを作っていた。
魔導コンロは火力調整が自在で焦げない。
マジで快適な魔道具だ!
そしてパンを温め、スープを飲む。
「……マジで快適すぎる」
普通の商人は野宿か安宿。
でも私は、自分専用の移動式スイートルーム持ち。
マジで最高のチート!!
しかもこの空間、まだ余裕がある。
「客室も増やせるよね、これ」
今は私一人用。
でも将来、仲間が増えたら?
護衛を雇ったら?
輸送と同時に“移動宿”として貸し出せるかもしれない。
発想が、どんどん広がる。
◆ ◆ ◆
その日の夕方、再び商業ギルドへ。
受付嬢が目を丸くした。
「もう次の依頼を?」
「はい。定期契約、お願いできますか?」
私は堂々と答える。
「長距離輸送も可能です。温度管理もできます」
「温度管理……?」
「保存肉や薬草の品質維持、できますよ」
ざわ……とギルド内が静まる。
この世界では、長距離輸送=劣化が常識。
でも私の魔導馬車なら、温度制御付き。
揺れも最小限。
到着も早い。
ギルド長が奥から出てきた。
「……小娘。あまり大きな口を叩くな」
私はにこっと笑った。
「では、一度試してみますか?」
その瞬間、私は確信していた。
この馬車はただの移動手段じゃない。
“移動式商業革命”。
そして、私の城。
◆ ◆ ◆
商業ギルドの掲示板に貼られていたのは、短期の緊急輸送依頼。
「急募・三日間限定。薬草と保存食の往復輸送」
報酬は――銀貨五十枚。
決して大金じゃない。
でも、今の私には十分すぎる。
「受けます」
受付嬢が驚いた顔をする。
「3日で往復は厳しいですよ?」
私はにやりと笑った。
「普通の馬車なら、ね」
馬のいない魔導馬車は、夜も走る。
山道も止まらない。
予定より半日早く荷を届けたとき、依頼主の商人は目を丸くした。
「もう着いたのか!?」
私は肩をすくめる。
「次もあればどうぞ」
ーーー3日後。
銀貨の袋を受け取り、私は重みを確かめた。
これで当分の生活費は足りる。
◆ ◆ ◆
ーーー夜。
馬車のベッドに寝転びながら、私は天井を見上げる。
淡い魔導灯が優しく光る。
外は虫の声、中は静かで温かい空間で快適である。
異世界転生して困惑していたけど、気がつけば私のスキルがチートすぎて…
不安はもうない。
小さな村から始まった、たった一台の魔導馬車。
でもその中は、すでにホテル並み。
この快適空間を武器に、私は成り上がる。
「そのうち、これを量産して……」
王都。
巨大ステーション。
豪華客室二十部屋。
食堂、露天風呂、娯楽施設。
未来のビジョンが、くっきりと浮かぶ。
私は毛布にくるまりながら、にやりと笑った。
「移動で、世界を変える」
その第一歩は——
自分が一番快適であることから、始まったのだった。




