第1話 転生初日、スキルは魔導馬車でした。
目を開けた瞬間、視界いっぱいに広がったのは——青すぎる空だった。
「……ここ、どこ?」
草の匂い。土の感触。遠くで鳴く見知らぬ鳥の声。
ゆっくりと体を起こすと、そこは小さな畑のあぜ道。周囲には木造の家がぽつぽつと並び、煙突から白い煙が立ちのぼっている。
どう見ても——日本じゃない。
「え、待って……え?」
頭の奥に、じわりと別の“記憶”が流れ込んできた。
ここは王国の辺境にある小さな村、カイロ村。
私はこの村で暮らす十六歳の少女——カスミ。
……いや、違う。
“私はカスミ”だけど、“私じゃない”。
前世、日本で普通に会社員をしていた私の記憶と、今のカスミの記憶が混ざり合っている。
つまりこれって——
「……異世界転生ってやつ!?マジか!?」
思わず声に出してしまう。
その瞬間、視界の端に半透明の文字が浮かび上がった。
《固有スキル:魔導馬車》
……は?
「ま、魔導……馬車?」
ステータス画面のようなものが展開し、説明文が表示される。
・魔導馬車の創造
・性能付与
・内部空間拡張
・自動走行補助
・魔力燃費最適化
「……なにこれ、チートじゃない?
だって馬車が作れて空間拡張って広くなるって事でしょ?
しかも自動走行って馬は必要ない?車じゃないしガソリンは必要ないって事よね?」
1人驚愕しながら喜びに打ちひしがれていた…
私のチートは剣でも魔法でもなく、馬車。
勇者でも賢者でもなく、運送業。
いやでも、ちょっと待って。
私は前世で営業職だった。物流の重要性も、交通の価値も知っている。
どんな世界でも——“移動”はインフラだ。
「……もしかして、これ当たりスキル?」
とりあえず試しに念じてみる。
“魔導馬車、生成”
次の瞬間、目の前の空間が歪み、魔法陣が展開した。




