第12話 襲撃突破
ーーー北方街道・夜
月明かりだけが道を照らす。
魔導馬車は音もなく滑るように進んでいた。
「静かすぎるな」
後方を警戒していたレオンが低く呟く。
次の瞬間…
――ヒュンッ!
矢が闇を裂いた。
ガンッ、と車体に弾かれる音。
「来たわね」
私は即座に制御盤へ魔力を流す。
車体の外周に薄い光膜が展開する。
「結界確認」
「三十人はいる」
左右の森から松明の灯り。
盗賊団だ。
「馬を狙え!」
「……馬はいないけどね」
私はにやりと笑う。
車輪が淡く光る。
地面との接地がわずかに軽くなる。
「掴まって」
レオンが即座に壁へ手をつく。
次の瞬間――
ドンッ!!
衝撃とともに、馬車が前へ弾ける。
浮かない。
跳ねない。
ただ、地面を削るように疾走する。
盗賊たちの視界から、黒い車体が一瞬で遠ざかる。
「なっ!?」
矢が闇を裂くが、もう届かない。
前方に倒木。
私は迷わず出力を引き上げる。
魔導炉が車輪に伝わる
ゴォォッ!!
衝突――ではない。
直前で急角度に車体を滑らせる。
横滑り。
重心制御。
車輪が悲鳴を上げるが、軌道は崩れない。
倒木の脇を削るように抜け、再び直進。
加速。
「……常識じゃない」
レオンの声が低く落ちる。
私は前を見据えたまま言う。
「地面を支配するのが、私の馬車よ」
魔導炉が唸りを上げる。
夜の街道を裂くように、馬のいない馬車は走り抜けた。




