第11話 特別依頼と王都への布石
ギルド長からの呼び出し
「カスミ、ギルド長がお呼びです」
突然の呼び出し。
エルバ商業ギルドの最上階。
重厚な扉の前で、レオンが静かに周囲を警戒している。
「特別依頼だ」
部屋に入るなり、ギルド長は単刀直入に言った。
机の上に置かれた小さな箱。
黒い封蝋。
王家の紋章。
「王都北方の砦まで、これを運んでほしい」
「中身は?」
「知らなくていい。だが――」
ギルド長の目が鋭くなる。
「狙われる」
空気が張り詰める。
「通常の馬車では三日かかる。盗賊団が張っている情報もある」
私は静かに微笑んだ。
「お前らなら一日半で着くだろう?」
「うん、完璧に遂行できるわ」
私が即答すると、直ぐ横でレオンが小さく息を吐く。
「報酬は?」
「金貨百枚。成功すれば今後の優先契約を約束する」
破格だ。
つまりこれは――試されている。
私は箱に手を伸ばす。
「受けるわ」
ギルド長がわずかに口元を上げた。
「やはりな。“馬のいない馬車”の真価、見せてもらおう」
◆ ◆ ◆
――出発前
御者席に座り、制御盤に手を置く。
レオンが低く言う。
「罠の可能性もある」
「ええ。でも」
私は魔力を流す。
魔導炉が静かに起動する。
「私の馬車は、止まらない」
車輪がわずかに浮き、滑るように動き出す。
王都の門を抜けると同時に、速度を上げる。
この依頼を成功させれば…
ただの商人ではなくなる。
魔導馬車は夜を裂き、北へと走った。




