第9話 合同商隊輸送
それは、初の「合同商隊輸送」の日だった。
エルバ町から王都方面へ向かう、大型商隊。
小麦、布地、保存肉、薬草—
合計10台の馬車が連なって街道を進む。
私はその最後尾。
小型の魔導馬車。
「本当にこの隊列に混ざるのか?」
御者台の隣でレオンが低く言う。
「うん。信用は“横並び”で作るのが一番早いから」
単独で成功しても、仕事に繋がらない。
大きな商隊の中で実力を見せれば一気に噂が広まる。
それが私の狙いだった。
◆ ◆ ◆
森に差しかかった瞬間。
空気が変わった。
レオンが剣に手をかける。
「来るぞ」
次の瞬間——
「止まれえええ!!」
左右の森から飛び出す影。
盗賊団…
10人以上はいる…
前方の馬車が悲鳴を上げる。
「くっ、囲まれた!」
隊列が乱れる。
重たい馬車は方向転換できない。
荷崩れ。混乱。
そして——矢が放たれた。
「カスミ!」
私は即座に制御盤に両手を置く。
《防御結界・広域展開》
車体が蒼く輝く。
矢が弾かれ、火矢も霧散する。
だけど問題は——
他の馬車だ…
このままじゃ守れない…
壊滅する。
一瞬で思考を回す。
逃げる?
単独離脱は可能。
でも——
「レオン、3分だけ時間をちょうだい」
「何をする」
「全員、うちに乗せる」
レオンが一瞬目を見開く。
「正気か?」
「やれる」
私は叫ぶ。
「全員こっちに来て!!荷物は捨てていい!!」
商人たちが半信半疑で駆け寄るが、直ぐに盗賊が迫りくる。
レオンが飛び出した。
剣閃が走る。
二人、三人と地面に伏す。
私は内部に向かって念じる。
《内部空間拡張・緊急モード》
空間が広がる。
客室が一時的に簡易収容室へ変化。
護衛の冒険者も入れて30人は入れる。
「早く!!」
商人たちと護衛の冒険者達ががなだれ込む。
最後の一人が飛び込んだ瞬間——
「閉鎖!」
扉が光り、結界が強化される。
レオンが滑り込むように戻ると
「全員収容完了だ!」
私は叫ぶ。
「全速力!」
《速度増幅・最大出力》
車輪が白く輝く。
地面を滑るように加速。
盗賊たちが追いすがるが…
距離が一瞬で開く。
普通の馬車ではありえない速度。
森を抜け、街道を駆け抜ける。
中では商人たちが呆然としていた。
「……なんだこの馬車は」
「揺れない……」
「広い……」
私は息を整えながら答える。
「魔導馬車です。オプション多数付き」
こんな状況で冗談を言う自分に、ちょっと笑う。




