出会った縁3
温かな太陽の下、滑り台を登っていく少年姿は、平和な昼下がりそのものだった。
「みーちゃんがあの子を保護してるってこと?」
少年に出会ってからの一通りの流れを説明し終え、質問が飛んできた。
「そういうことになるね」
内心少年を警察とかに連れていくみたいなことを言い出さないか、不安になりながら答える。
「ゆうちゃんには、言ってるの?」
私は、首を横に振る。
「え?ゆうちゃんにも相談しようよ」
言葉の一つ一つに、イライラする。
「心配かけたくないし、相談はやめておくよ」
「なんで?絶対相談した方がいい。友達なんだし」
友達。あやふやで不確定なその言葉で、私の中の何かが切れた気がした。
「最近友達になったばかりのあなたに私と優香のこと分かったように言わないで」
「え?」
「言うに決まってるでしょ。友達なんだから心配くらいさせてよ」
そんなこと言われたことが無かった。
「私ってその場の空気とか読めないし、人の気持ちを推し量るなんて出来ないから今まで友達とかあんまり出来なかったけど、みーちゃんとゆうちゃんが友達になってくれた。二人が友達になってくれて本当にうれしかったんだよ」
彩夏の気持ちがこもった言葉が、私の胸の底まで届く。
「みーちゃんは、責任感が強いから私たちに迷惑かけないようにして黙ってたのは分かるよ」
「やめて。私は、そんな良い人じゃない」
「違う!みーちゃんは良い人!」
少し大きな声を出して涙目になっている紗香は、優しい顔をしていた。
「彩夏ありがとう。優香にもちゃんと相談するよ」
「優香、明日私の家に遊びに来てくれない?」
携帯とにらめっこして、ようやく送信ボタンを押す。返信を待つ時間は、果てしなく長いものだった。しばらくして携帯の通知音が鳴る。
「いいよ」
たった三文字の返信が、こんなにも嬉しいなんて知らなった。その日の夜、なかなか寝られなかった。少年が眠っている隣で天井を見つめる。ワクワクした気持ちが胸の大部分を占めて、心地の良い息苦しさが襲ってきた。
あまり寝れなかったのに、気持ちの良い目覚めだった。
集合場所の最寄りの駅に、予定よりも早く着いた。優香を待つ間。私の小さい頃を思い出していた。
「美咲、おはよう」
「ごめんね。急に呼び出して」
「全然いいよ。何か話したいことがあるんでしょ?」
「うん。私の家で聞いて欲しいことがあるの」
家までの道のりで、私たちは終始無言だった。しかし、私たちの間に流れた沈黙は、案外悪いものではなかった。
「彩夏に言われて、それで優香にも話そうと思ったんだ」
穏やかな夕日の光が、窓から差し込み私たちの影を作り出す。優香を見て私の後ろに隠れていた少年は、気を張っていたのか私の膝の上で眠りに入っていた。
「今まで黙っててごめん」
「美咲が謝ることじゃないよ。私の方こそ美咲が困っていたのに気づいてあげられなくてごめんね」
下げていた顔を上げ、優香を見つめる。
「私、美咲の家族のこともあって美咲と少し距離を置いてた。その方が、美咲も私に気を遣わずにいれるって思ってた。でも、違った。私は、私のために美咲と距離を置いてた。私が、美咲に気を遣わなくていいし、何よりも楽だった」
優香の目は、涙でいっぱいだった。
「でも、美咲の話を聞いて決めた。もう逃げない。頼りない私だけど、美咲とその子の力になりたい」
力強いその言葉が、私の卑屈な心を優しく包んでくれる。
「私こそ被害者面して勝手に壁作ってた。これからは、優香と彩夏に全力で頼るから覚悟してて」
「うん!」
優香の笑顔が、こんなにも可愛いことすら知らなかった。
「私たちってあんまりお互いのこと知らなかったかもね」
「確かにそうかも。教えてよ美咲のこと」
この日私は、親友が出来た。




