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異界管理者  作者: 幸人
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異界駅2

 線路上を進み続ける俺は、遠くの山の方に光を見つけた。見つけた時の嬉しさは、言うまでも無かった。その光は、小さく朧げなものだったが、俺に希望を与えてくれるには十分な光だった。

 線路から外れ、光を目指す。ただただ光を見ながら歩いていたら、いつの間にか光のそばまで来ていた。その間の記憶は、抜け落ちていた。暗闇に視界を奪われた俺が、転ぶことなく歩き続けられたのはただの運の良さだけでは説明がつくはずがないので、神の御加護に守られていたとしか考えられなかった。

 あと数歩で光の下に行けるところまで来ていた。しかし、そこで目を疑うことが起きる。先程まで確かにそこにあった俺が見えていた光は忽然と消えていた。次の瞬間、世界が明るくなった。夜が明けたのだった。しかし、太陽は顔を出すことはなく、ねずみ色の雲が空を覆っていた。

 そして、新たな希望を見つけた。それは、山の麓に広がる小さな村落の姿だった。遠く離れているのに人の気配をひしひしと感じる。

 安心を心から望み、村落の近くまでやってきた。緊張しているせいか足が重く感じる。

「お若い人どうされたのかな?」

 背後から急に声を掛けられ、心臓が飛び上がる。後ろを振り向くと、人の好さそうな老人が立っていた。老人の優しそうな笑顔に、警戒心を抱く。

「迷ってしまっていて困っていたんです」

「それはそれは大変でしたね。良かったら、何もないところですけど家でゆっくりしていきますか?」

 老人の優しさが、心にしみる。老人に連れられて、村へ入る。空を覆う曇天のせいか、どこか暗く重い雰囲気を持った村落だった。道端には、黒い塊が落ちている。

「この黒いのは何ですか?」

 疑問に思っていたことを口にする。

「大したものじゃないですよ。特にあなたのような人には」

 答えになっていない老人の言葉に戸惑う。

「あの、ここって何市になるんですか?」

 前を歩いていた老人が立ち止まって、俺の方に振り返る。

「面白いことをおっしゃいますね、本当に」

 老人の顔は笑っていたが、目は笑っていなかった。

「ひっ」

 老人の気味の悪さに、声を上げそうになる。咄嗟に口を押えたが、小さな悲鳴を上げてしまった。老人は、悲鳴が聞こえなかったのか、前に向き直りまた歩き始めた。

「ここが私の家になります。ゆっくりしていってください」

 老人の家の敷居をまたぐ。家の中は、日中にもかかわらず薄暗かった。

「これから村の集まりがありますので家を少しの間開けます。決してここから出ないでください」

 老人の口調が強くなり、不安になる。

「どうしてですか?」

「また迷子になったら大変でしょうから」

 口調は穏やかなものに戻ったが、俺を捉える老人の何か強い意志を持った目が、有無を言わせなかった。

 俺はそれ以上何も言えず、老人を見送った。

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