出会った縁6
いつもと違う土地での目覚めは、いいものだった。ベットに入ったまま体を起こす。隣の少年は、眠っている。隣のベットは、優香だけ眠っていた。少年を起こさないように、気を付けてベットから出る。
とりあえず、洗面所で顔を洗う。洗面所から出て、窓に向かって置かれている椅子に座り、外の景色を眺める。ふと朝風呂もやっていることを思い出し、温泉に行く準備をする。
朝日が反射する水面から、湯気が立っている先に、人影が見える。
「彩夏、おはよ」
朝日に照らされた人が、振り返る。
「みーちゃん、おはよ」
「起きたら彩夏居なかったから、ここに来てると思って」
「あーごめん。昨日お風呂入らずに寝っちゃったから朝風呂行こうって思ってたんだよね」
私も湯舟に身を沈み、彩夏と肩を並べる。
「そういえば、この旅行彩夏が提案してくれたらしいね。ありがとう」
「どういたしまして」
しばらくの間、決して気まずくない沈黙が流れた。
「私、あの時また友達を無くしたって怖かったんだ」
「あの時?」
「私があの子と初めて会った時だよ」
「あーあの時ね。あの時、彩夏に見つかって心臓バクバクだったんだよ」
鼓動が早くなったことを思い出して笑みがこぼれる。
「空気も読めない私を、みーちゃんとゆーちゃんは受け入れてくれた。だから、ありがとうを言うのは私の方だよ」
彩夏の無神経で無自覚な、それでいて純粋で素直なその心が、殻にこもっていた頑固な私の心を優しくほぐしてくれたことに彩夏は気づいていない。でも、それが彩夏らしい。
「花火大会楽しみだね」
私は、また自然な笑顔を作りながら彩夏にそう言った。
旅館から花火大会の会場まで歩いて行ける距離だったのはありがたかった。
特段やることもないので、まだ太陽が高いうちに会場に着いた。会場には、様々な屋台が展開されていた。
まばらだった人も、日が傾くにつれて増えていった。
「ようやく涼しくなってきたね」
「あとどれくらいで花火上がるの?」
「一時間後ぐらい」
りんご飴を頬張りながら優香が答える。
「まだ一時間もあるの~?」
彩夏のその言葉とは裏腹に、時はあっという間に過ぎ去った。
遂に、この旅の目的だもあった花火大会が始まった。
花火が奏でる爆音が周りの音をかき消して耳を奪い、夜空に光る閃光が目を奪う。しかし、それよりもこの花火を一緒に見た人たちとの思い出が、私の心を奪った。
夏の終わりの夜空に願い込めて。
実りの秋が流れていき、一年の終わりの冬が来た。大晦日は、いつもの四人で過ごしていた。
除夜の鐘を聞いて、年越しそばをみんなで食べるそんなありふれた光景だった。
正月であるこの日は、この地域には珍しく雪が降った。みんなで近所の神社に訪れる。神様の挨拶も済ませ、今年の運勢を占うお御籤も引く。
「中吉だった~。ゆうちゃんは、どうだった?」
「私、吉。美咲は?」
「半吉。それでこの子が、大吉」
「大吉すごいじゃん」
各々お御籤を引き終わり、大吉の少年以外は木の枝にお御籤を結ぶ。結んだ途端、尿意を急激に催した。
「ちょっと行ってくるね」
一言告げて境内にあるトイレに駆け込む。トイレを済ませ、外に出た私は異変に気付く。誰かが私を呼んでいる。私は、私を呼ぶ声がする方向に歩く足を止めることが出来なかった。しかし、不思議と恐怖という感情は微塵も感じなかった。気づくと、私は境内の外にある森の中に居た。
私の名前を呼ぶ声が、背後から聞こえた。振り返ると、作業服を着た男性が立っていた。
「あなた、だれ?」
「君が保護している少年を、元の世界に連れ帰るために来たものだ」




