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同窓会に行ったら異世界に召喚された  作者: 神谷洸希
ビームを放てるようになるまで
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「そりゃあ妹さんは王子系のイケメンだったし、キザなセリフも様になるだろうけど」



 王子様系?言っていることの意味がわからない。


 まあでもあれか。妹と俺では顔が違う。そこは分かる。

 見た目が違えば似合う言動も違うということだろう。



「ギルド登録出来ましたよ。説明は受けますか」


「大丈夫だ」


「では、ギルドカードを渡しておきますので、また明日来てくださいね」



 深夜だからか体良く追い払われてしまった。

 説明をスキップしても大丈夫なのか?という視線が刺さるが、ギルドのことは事前に調べておいたからな、問題ない。


 前回この世界に来た時はギルドという物はなかった。

 何でギルドが無いんだと嘆くはめになったもんだ。1回目の異世界では苦労して世界を救ったんだし、今回はこれくらい雑に楽しんだっていいだろう。もう夜遅いしな。



「そういえば、據はギルド登録していなかったんだな?」



 ■■が首を傾げながらそんなことを言う。



「このギルドが出来たのは一年前だ。まあ、前から似たようなものがあったらしいが」


「なんか酒場風ではあったね」


「それはそれで見てえ」



 別に見ようと思えば見れるだろ。俺と據とお前がいれば、過去に行くことくらいできると思うぞ。この異世界じゃ不可能ってほどでもない事象だ、時間遡行なんて。



「泊まるところはどうしよっか」


「據の屋敷を希望する」


「え、據って屋敷持ってんの?」


「いや僕のじゃないから。お母様の物だから」


「くくっ。別にどっちでもいいだろ。ほら、遠いけどテレポートで行けるはずだ」


「まあいいけどさ。《テレポート》」



 據はいろいろと便利だな。仲良くなっておいて良かった。



「母さーん、久しぶりー!僕だよー!」


「む、オレオレ詐欺なら今すぐ帰ってもらおうか」


「母さん!ヨリだよ」


「ああ、ヨリか。ヨリならそう言っておくれよ」



 ……この年齢不詳の婆さんは、なんでオレオレ詐欺なんてものを知っているんだろうか。


 こっちの世界にはあるはずないんだが。しかも據はオレって言ってないし。


 オレオレ詐欺が無い理由としては、電話がないというのもそうだが、防犯用の銃が凄まじい殺傷力と探査力を誇るということが理由としてあげられる。詐欺師に厳しい世界なのだ、ここは。製作者はグレイ家の人間だったような気もするが、……まあいいか。



「ねえねえ、母さん。この二人と一緒にしばらくここに泊まってもいい?」


「もちろんいいよ。まあ、お手伝いさんなんていないから、汚い部屋だけどね」



 いや、お手伝いさんはいるだろ。忍者のように気配がないけど、一応いるはずだ。


 そうでなかったら、俺の目の前にいるこの女は誰だ。



「おい。一応聞いておくが、あんたはここのお手伝いさんってやつなんだよな?」


「!?えっ!……何で私に気づいたの?確かに私はここのメイドだけど」



 良かった。勝手にこの家に侵入している怪しい女ではなかったようだ。



「それならいいんだ」



 あ、褒めることを忘れていた。


 くっ。不覚だ。妹がこうやって褒めとけば女の人は皆私の言うことを聞いてくれるの、とか言っていたから、続けているのに。



「じゃあ部屋に案内してくれるか?」


「は、はい。こっちよ」



 長い廊下だ。ここをあの女性1人で管理しているのか?と思ったが、どうやら掃除は今年二十歳になる據の弟がしているみたいだ。そもそもあの女性は隠密性能の方がメインだとか。本人が言っていた。なんでメイドなんてやっているんだろうな。



「ここなんだけど……」


「ああ、ありがとう」



 立派な部屋だな。といか、立派すぎるだろ。まあいい。寝よう。



 そういえば、服はどうしようか。このまま寝てもいいものだろうか。


 いやだめだろ。この真っ白なベッドが汚れてしまう。



 うーむ……。



「ここの何処かにいる我が眷属よ。汝存在するのなら、今ここに姿を」


「那奈様!呼んだか?呼んだよな!呼んでなくても来たがな!」



 詠唱の途中で来るなよ。驚いたじゃないか。だからこいつを呼ぶのは嫌なんだ。


 この女はとても強大なドラゴンだ。いろいろあって呼ぶのに魔力がいらないから重宝……したいんだがな。


 窓はもともと空いていたとはいえ当然体が収まるはずもなく、若干壊れた壁を見てため息をつく。



「替えのTシャツとズボンを置いて帰れ」


「ああ、那奈様ひどい!人間に化けるから!化けるから!」



 ドラゴン状態でも生物としての絶対的強さと傲慢さを感じさせる威圧的で尊大な竜で、初めて見た時は目を輝かせたものだ。

 こうして人間に化けても、生態系のトップに立つオーラがある目を見張るような美女なんだけどな……。言動から溢れ出る残念さがな……。



「いいけどな。とりあえずTシャツとズボンをくれ。寝るから」


「それでこそ那奈様だ。ほい、Tシャツとズボンだ」


「ありがとう」



 ちょっと趣味が悪い気もするがいいだろう。おやすみ。



「な、那奈様?いくらなんでも寝るのが早すぎないか?」



 知らん。




 ◻︎◻︎◻︎




「その服どうしたの?」


「もらった」



 あれ、ドラゴンがいなくなってる。どうしたんだろうか。


 というか、據が起こしに来てくれたみたいだ。



「誰に?って多分あのドラゴンだよね。お母様が追い払ってたよ」


「そうか」



 追い払われてしまったか。クララさんを簡単に足蹴にできるほどあのドラゴンは強いはずなんだがな。據のお母さんは一体何者なんだよ。


 なんてな。正体はもう割れている。真祖の吸血鬼ってやつだ。

 当然だが転生して真祖の吸血鬼の息子となった據も吸血鬼になっている。本人も自覚はあるみたいだ。



「あのドラゴンってどうしたの?召喚したの?」


「多分」



 召喚の呪文を唱えきる前に向こうから来てしまったから、よく分からん。多分召喚なんじゃないか?



「……反応薄いね。朝だから?」


「ああ」



 こいつは吸血鬼なのに朝から元気すぎるだろ。吸血鬼は朝が苦手なんじゃなかったのか。


 俺はしゃべるのも正直面倒臭い。話しかけないで欲しい。


 俺の母親は朝からうるさい女だったがな。嫌なことを思い出した。



「機嫌悪そうだけど、冒険者ギルド行くよね?今行かないと混むからね」


「行く。用意するから待ってろ」


「うん、じゃあ部屋の外で待ってるからねー」



 そうだ。ギルド登録の時にもらったギルドカードを見ておこうと思っていたんだ。


 ランクはF。最低ランク。職業は情報屋?理由は不明。情報の対価にお金を手に入れていた時期があったからか?、って十中八九それだな。ギルドカードはかなり高性能らしい。少し感心した。


 後は能力値の項目だが、知力が高いか?力の項目が異様に低いので釣り合いは取れていないが。


 何も書かれていないギルドカードを持ってから、五時間経つと、能力等が測定されて、文字が出てくるようになっている。ディミニッシュ・グレイという人が作ったらしい。偽名か?なんにしろグレイ家か。まあいいけど。



 用意されていた洋服に着替えておく。この服は寝巻きならいいが、普段着としては派手すぎるからな。



「據、用意が終わった。■■は?」


「起きてこないよ。というか、大規模魔法をかけて起こそうとしても、詠唱が終わる直前に毎回偶然邪魔が入るんだよー。どうやったら起きるの?」


「相変わらずだな」


「もう置いていくよ。はい《テレポート》」



 着いた。據、怒ってるな?

 詠唱なしでテレポートが出来るあたり、さすが邪神と呼ばれていただけはあるよなー、とぼんやり思う。



「昨日の深夜にギルド登録したものです」


「ああ、あの三人組の。もう一人はどうなさったんですか?」



 幸いなことに、昨日の受付嬢さんがいた。



「後から来させます」


「そうですか。ではギルドカードを提出してください」


「分かりました。ほら、那奈くんも」



 受け付け嬢さんが少し落胆しているように見える。これはやっぱり■■に惚れているってことなのか。


 カードは渡しておく。



「……。ヨリさんは魔力が極端に高く、防御力が極端に低いですね。ナナさんも知力が極端に高く、力が極端に低いです。反応に困るステータスです。全体の平均だと普通だし」


「へえ、そうなんですか」


「パーティー登録しますか?もちろん後で人を足すことはできます」


「どうする?」


「する」


「ではお願いします」



 どうやら、パーティー登録できたようだ。ここ、よく見たら、24時間営業って書いてある。がんばるなあ。



 依頼を受けるには、掲示板に貼ってある紙を見て内容を決め、受付に言えばいいらしい。こう、浪漫があっていいな。



「これは。酒場の時とは違った意味で王道だね」


「同意だ」



 據がここの仕組みを知っているのは紙でも見たんだと思う。実際紙に書いてあるし。



「受けられる依頼にランク制限はないらしいけど、どうする?」


「ここはあえて薬草取りを望む」


「いいよ。じゃあこの回復草クエストに行こう!」


「うむ」



 というか、■■がいないから、簡単な依頼しかできない。


 あのアホは何をやってるんだよ。



「じゃあ、これお願いします」


「回復草クエストですね。この街の外にありますので門番にはギルドカードを必ず見せるようにしてください」


「はい」



 ギルドカードは身分証明書になるらしい。仮の身分証明書には20G必要だが、ギルドカードは無料だ。だから、冒険者として活動するつもりもないのに、利用するやつが後を絶たないらしい。


 そういうこともあって依頼達成義務、なんていうルールがあるようだ。



「え?門番いるんだけど?入る時テレポートで来ちゃったんだけど」


「気にしたら負けだ」



 そうこう話しているうちに門に着いた。



「あぁ?お前らここ通って来てたか?」


「来てましたよ。忘れているだけじゃないですか?」


「……。どうだかな。まあいい。通れ」



 據、忘れているのはお前だ。この門番、加宮だ。なんだかちょっと老けているような気がするが、あの完璧超人だ。加宮は記憶力が神がかって良いから忘れてるわけがない。まあ通してくれるっていうなら大人しく通ろう。


 なんでこんなところにいるかは知らん。情報把握でサクッと情報収集。芽衣のせいだったようだ。見なかったことにしよう。


 面倒くさいし據にこのことを話す必要はないか。



「嘘発見器……」


「え、どうしたの?」


「あいつ、嘘発見器持っていた。嘘はバレてるな」


「それって大丈夫なの?」



 無視して歩く。




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