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同窓会に行ったら異世界に召喚された  作者: 神谷洸希
ビームを放てるようになるまで
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 ■■はどこにいるんだ。ギルドか?



 ……お、いた。前依頼で行ったことのあるギルドか。しかし、■■の横にいる男、なんか見たことあるような?


 よし、長距離だし據に転送してもらおう。



「僕は着いていかないからねー」



 着いた。



「そいつって、誰だっけ?」


「え?誰って元先生で現商人だろ?」


「あ。ホントだ。隅に小さく書いてあった」



 こんな小さい文字今まで情報把握で見たことがない。

 というか、據を売り払おうとした商人と近藤先生が同一人物だったのか。

 俺の先生に対する評価は大分下がったぞ。


 ……ギルドの依頼の時は全く気づかなかった。俺が気づかないというのは相当だ。

 転移特典による芸当か?



「お前ら、俺に気づいていたんだな?今まで誰にも気づかれなくて怖かったが俺の空気が薄いわけじゃなかったんだよな?」



 がっかりさせるようで申し訳ないが、先生の影は薄い。

 あと、訂正しておくが、空気が薄いじゃなくて影が薄いだからな?


 数学の先生だったから、仕方ないのかもしれないが空気が薄いってそれは酸素が薄いとかそういうことだと思う。まあ俺も語彙力に自信あるわけでもないけど。



 情報把握によると、俺の認識すら歪めていた存在感の無さ?というのは違う気もするが、あれはやはり異世界転送時に配布される能力によるものらしい。


 少しでも目立つようにして下さい!という切実な願いは一応叶えられた。別人として認識されることで存在感を上げるみたいな荒業だ。ここまでやらんと叶えられない願いだったか?


 でも先生はこういうことを望んだのではないと思う。というか間違いなく。


 願いごとを聞き届けたやつもそれには気づいていただろうし、説明くらいしておくべきだ。いくらなんでも酷すぎるだろう。


 ……俺がやりそうなことではあるが。アリス様とは元の世界に帰ってからはほとんどコミュニュケーションは取っていないし冤罪だ冤罪。

 アリス様自身もそんな酷いことはしないはずだし。


 俺もアリス様も結局傍観者でしかないからな。


 見るのが面白いってだけだ。


 ……そういえば、顔も変わっているような気がする。

 一応■■にも確認するか。



「先生の顔、なんか変わってないか?」


「確かに。なんというか、もともと記憶に残りにくかった顔からさらに特徴がなくなった感じだ」


「だよな。普通かどうかもよく分からないくらい顔に特徴がない。今その顔を見ているはずなのに、顔が認識できないというか」


「そうか?オレには恐ろしく整っているように見えるが」


「ふむ。まぁ、究極の普通顔と美形は紙一重だって言うしな」



 しかも身長は俺より少し高いくらいだから、中肉中背といったところだろう。

 なにもかもが印象に残らない。



「先生はその影の薄さを商売に利用できているみたいで何よりだ」


「お前、高校を卒業してから一体どうしたんだ?もともといつも笑顔だったが、そんな目を細めた胡散臭い笑顔をするやつではなかっただろう」


「そうですか?そう大して変わっていませんよ?」


「……確かに変わっていないようだ」



 俺が何をしたかって?一瞬昔していた笑顔にしてみただけだ。


 あの頃はもう俺にとっては百年前くらいの出来事だから、そりゃあ人格だって多少は変わる。それで変わらないやつがいたら、そうだなぁ。ずっと子供みたいな性格なんだろうな。



「で、うちのドラゴンを追い払ったのは先生か?」


「ドラゴン?あぁ、そういえば綺麗な女の人が泣きながら走っていたか。ドラゴンってのは確か人間にもなれるんだったか?じゃあその人かもしれない。俺とは全く関係ないぞ。話してすらいないからな」



 う、うむ。多分その女の人がドラゴンだな。


 先生から聞いた情報を元に情報把握で調べ直したところ、そこにお忍びの王女がいたらしい。それを見て泣きながら逃げ出したと。


 あいつ、王家嫌いなのか。まぁ、アリス様苦手らしいもんな。



「情報提供ありがとう。さて、帰るか」


「俺をひとでなしと言ったやつのところに?」


「ひとでなしって言われて怒るのに、人外だったらスルーなのは何故なのか」


「なんとなくだぜ」



 えぇ……。同じだろ。


 ひとでなしって言うと確かに悪口っぽくなるけどさ、だからと言って人外ってのも相手を褒める単語か?



「ドラゴンに関しても、見捨てられることに恐怖を覚えていたみたいだしな。ここは不快に感じた者同士お互い様じゃないか?」


「む、そうかもしれんなー。じゃ、帰ることにする」



 ■■の機嫌取りも慣れたものだ。


 あ、帰還方法がない。しまった。



「ドラゴンー、カモーーン!」



 詠唱面倒だしこれでいいよな。



「来てやったぞ」



 なんで来たんだよ。というか、なんで声が聞こえているんだよ。

 おかしいだろ、ここからあの屋敷までどれだけ距離があると思っている。


 もうこれは、尾行されていたと考えていいよな?



「って、は!これは」



 む?どうしたんだ■■。なにか驚くものでも見つけたか?



 ……ふむ、また懐かしいものが見つかったな。


 俺が宮廷画家をしていた時に描いたアリス様じゃないか。

 ギルドの壁にかけてある。我ながらよく描けているな。



「なー、これって完全に萌え絵だよな……」


「気にすんな!」



 チョップ。



「痛ぇ。……あれ痛くない?」


「うるさい。俺の攻撃ステが弱いことはお前も知っているだろうが。しかしせっかくだからお前に対して魔法を使ってやろう」


「お前はその魔法で攻撃できるだろーがよー。「《ファイアボール》」っと」



 ちっ、■■が避けやがった。



「ふん、生意気な」


「オレはどうすれば正解だったんだよ!」


「黙ってサンドバックになればよかった」


「理不尽!」



 いや、お前不老不死のうえに幸運のせいでそんなに痛くないだろうし、理不尽ではないと思う。



「那奈様、失敗で攻撃になるってダサい……」



 否定はしない。


 というか、なんで俺は魔法で失敗すると爆発の作用が付いてくるんだろうな?

 他の人だと失敗しても発動しないだけらしいし。


 ……魔法はイメージに左右されるというやつだろうか。


 ノエルが魔法を作るときに、お前のために王道を大事にしてやろうとか言っていたからな。

 魔法の発現での王道といえばやはりイメージだ。


 とすると、俺は魔法の詠唱中に爆発をイメージさせていることになる。


 そんなことしていたか?


 イメージにノイズがあったってことも考えられる。


 だが、集中するとこの世にあるもの全て粉々に破壊して無くなっちまえという気分になるんだよな。


 ……ま、十中八九それだろうが、証明できないし、いっか。



「しかし、なんでドラゴンはギルドから逃げ帰ったんだ?」


「……。その絵があったからだ。アリスの絵だろう、それ」



 ……。お前ここのギルドに来てたの?まあ依頼達成を報告するのが目的だからいいんだけど、遠くねえか。

 チンピラ1と2がいたせいでノイズになってたな。


 ってことはもしかして王女はこの絵をここに置きに来たってことか?



「ああ、そうだな。まぁ、宮廷画家になるときにはもうすでに俺は教皇だったしな。立場がある以上アリス様以外を書いたら駄目だろう」


「そ、そうだったのか?」



 何故かドラゴンの機嫌は良くなったようだ。


 萌え絵であるだけあってその絵にアリス様の様子はほとんど残っていない。ドラゴンはよく分かったな。それだけ怖がっているということかもしれない。


 新しい技法だーとか言われて持て囃されたっけ……。思わず遠い目になる。


 しかし、この絵は何でここにあるんだろうな。


 情報把握に聞いてみよう。



 え、えぇと、おr私達を勝手に異世界から召喚した王女が王家から追放され、金を得るために、これを盗みまして。


 ギルドに持ち込む、ギルドに入りきらなかったので外に置いたということですね。



 ……なんでギルドに入りきらない物を盗んでくるんだよ。

 どう考えても城に盗品を持って帰る人への嫌がらせだよな。異論は認める。



「じゃ、帰るか」


「あ、伊藤じゃないか!久しぶり!!」



 あ、先輩がいる。逃げねば。

 何故かって?特に意味はない。



「む?」


「あれはどうでもいいから、このアホと俺を転移させて帰らせてくれ」


「えー、あいつもか?役に立たないだろ」


「早急に。頼むぞキルティング」


「っ。仕方ないなー《テレポート》」



 よし、據の屋敷についた。


 あれ?ドラゴンがいない。え、もしや俺が言った言葉通りに俺と■■だけ転移させたのか。自分自身を置いて?


 こうなるかもしれないなーとは少しは思ったが、そこまでとは思っていなかった。やっぱ馬鹿だろ。



「お帰り」


「ただいま」



 據が出迎えてくれたことだし、ドラゴンのことはどうでもいいか。多分。






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