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同窓会に行ったら異世界に召喚された  作者: 神谷洸希
ビームを放てるようになるまで
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「あれが王女?なんか……随分可愛らしいね」


「そうだ。ちなみに今回呼ばれた勇者は12人だ」


「ひー、ふー、みー……確かに12人」


「その数え方をマジでやるやつ初めて見た」


「一応言っておくが、ここにいる勇者は十一人だからな」



 多分これもノエルの魔法のオプションか何かだとは思うが。これは遊びすぎだ。



「何回数えても12人だぞ」


「1人、巻き込まれた者になっている。そいつは勇者じゃない」


「もしやその人は最強系?」


「ああ、最強系だ。ちなみに1人は誤転送で魔王のすぐ前に転送されたようだ」


「それ絶対わざとだろ」


「わざとだろうな」



「何その無理ゲー、その子大丈夫?」


「魔王は真摯で律儀なやつだからな。問題ない」


「魔王がいいやつって。じゃあ勇者なんて必要ないじゃん」


「それはなんとも言えんな。一番の悪者は誰なんだろうな。これ」



 上にいる神なのか、愛に生きるババアなのか、何にもしない賢者なのか、俺には分からん。ああ、グレイ家というパターンもあるな。あの家はロクデナシがたくさんいるから。ちなみに、家系図の一番上は初代皇帝で、まあ要は王家の分家なのだ。



「あ、一番の悪者分かった。初代皇帝だ」


「いやオレじゃないからな?オレなんにもしていないからな?」


「何もしていないやつが普通皇帝なんかにならない」



 まあ、こいつの場合は持ち前の運の良さのせいなんだろうけどな。良くも悪くも普通じゃないんだよな。



「2人共、王女の話聞かなくていいの?」


「大丈夫だ。聞いているからな」


「こいつに聞けば間違いはないだろってことで」


「ああ。情報把握?」


「使ってないんじゃないか。面倒臭いとか言って」



 さすが俺の親友。よく分かっているじゃないか。


 そういえば、據は身長が高くなっている。あの女神は願いを叶えているようだ。俺の願いも叶えられていることだろう。


 おかげで今の據は俺より背が高い。だが顔は可愛いままだから、女装すればモデルができるのではないだろうか。いや、女装しなくてもできるか。



「こいつは元の頭もいいからなあ。まあでもそうでもないと情報把握なんて使えないとは思うが」


「那奈くん頭良いんだ。テストの1位は加宮くんってのは知ってたけど」


「ああ、あいつは記憶力が抜群にいいからな。でも一応俺も30位以内には入っている」



 学力に関して言えば同じ大学、同じ学科にいる■■と大差ないので話をさっさと終わらせようと、情報を吐き出しておく。



「あれ加宮くんだよね?」


「今気づいたのか。ちなみに俺の妹もいる」



 妹は俺と学年が違うのでこの同窓会に呼ばれていないはずだが。女に呼ばれたか?


 俺より女にモテる妹。こいつのおかげで俺は女同士の恋愛、百合が好きになったのかもしれんな。兄の贔屓目を抜いても妹はカッコいいしな。



「え、あの子かな?男に見えるんだけど」


「まごうことなき俺の妹だ。しかし我が妹ながらかっこいいな。ジャージだが」


「ああ、かっこいいな。つーか、 何故ジャージ」


「確かにかっこいいね。王女も凝視してるし。なんでかジャージだけど」



 ちなみに妹の名前は芽衣である。なんか母が俺の叔父に嫌味を言われて、仕返しで姪が芽衣ってことにすれば、分かりにくくて良いわねとか言ってつけたらしい。


 相変わらず適当な名付けである。


 俺も最初権兵衛にされそうだったらしいしな。寸前で叔父が阻止してくれたらしい。叔父さん、ありがとう。



「王女の演説が終わったようだ」


「うーん。あれは演説なのかな?説明っぽかったけど。あ、でも確かに途中から魔法の理念を語り出していたね」



 そうだな。途中からノエルの召喚魔法に対する推察も話していた。それもただの王女じゃないなってくらいかなり正確な。


 王女は要注意人物にしておくか。



「勝手に呼び出した、ってことは帰る方法もあるんですよね?」


「賢者様に聞けばあるかもしれませんね。私は勇者様を召喚する研究しかしなかったものですから、知りませんが」


「っ、ふっざけんな!」



 何やらうるさいな。



「普通に帰れたんだけど」


「ノエルに帰してもらったんだろう。そりゃあノエルは2000年生きている上に天才だからな。というか、あの年で召喚魔法を使えるほうがすごいと思う」


「え!この魔法あのロリ王女がやったのか!?あの王女10歳くらいにしか見えないのに」


「普通に待っていれば、送還魔法も10年後には使えるようになってくれるぞ、多分」


「じゃあ10年待つのも良いかもな」


「不老不死の基準で言われてもね」


「まあこいつ前回3000年間この世界にいたらしいしな」


「さ、さんぜんっ」



 ~


「まあ私に貴方の命がかかっていますけどね」


「くっ」


 ~



「なあ、王女が使ったっていうことは俺がキーになっていた訳じゃないよな?」


「ん?それは、ノエルがあらかじめ術式に入れ込んでたみたいだ」


「賢者様ってすごいんだね……」


「そういえば那奈、お前視力上げてもらわなくて良かったのか?」


「ああ、それな。まあ眼鏡ない方が楽だけど、ほら、眼鏡好きに配慮して、な?」


「相変わらず何言ってるか分かんねえ」



「この王国では私の言葉が絶対です!でも寛大な私はお城から出て行くことを許してあげます。命は保証しませんが」



 王女様から聞き逃せない言葉が聞こえてきた。



「あ、ここ出てっていいんだ」


「テレポートって使えるか?」


「もちろん!《テレポート》!」



「え、ちょっと待っ・・・」



 よし、脱出。



「ここはどこなんだ?」


「賢者式座標地点1432番だ」


「おい、那奈。どこだよそれ!」


「えーと、確か1432番はさかすきの森だった筈だよ」


「分かるのか……」


「上二桁で分かるようになっているからね!まあそれ以前に僕が魔法使ったんだから、場所は分かっているんだけど」



 テレポートは座標を分かった上で使うからな。それでノエルは座標を作っていた。でも座標を作るためにわざわざ世界全部を見に行ったというのはやりすぎだと思う。



「ふむ、賢者の家が近くにあるみたいだぞ。行くか?」


「行けるの?」


「ここ、ノエルの家の近くなのか……。俺としては行きたい」


「僕も行きたい」


「じゃあ、行こう」



 とりあえず、賢者の家がある方向に歩いていく。後ろを見ると、二人ともちゃんとついてきているようだ。よかった。



「ここだ」


「……随分近かったな」


「ノエルのことだし狙って移動させたんだろう」



 この家さかすきの森なら移動し放題だからな。この状況を狙っていたんだろう。



「ノエル、久しぶりだな」


「……。よく来たな」



 嬉しそうな顔をしている。自分でこの状況を仕組んだんだろうに。



「ノエル、なんでこんなことをしたんだ?」


「こんなこと?」


「勇者召喚?とか言うやつだろ」



 ■■が助け舟を出してくる。



「あーあれか」


「あれだ」


「わたし抜きで同窓会やるなんて酷いぞ!わたしも同じクラスメイトなのに!」



 ……。思わず額を抑える。

 同窓会に参加したかったから、同窓会ごと異世界に呼んだって?馬鹿なのか?馬鹿だろ。


 ノエルは低身長で愛らしい顔をしているので、13歳くらいの少女に見える。見えるが、だからなんだよ。許しちゃいけないだろこの所業は。



「フフフ、はいお茶ですよ」



 完璧な所作で紅茶を置くメイドが俺の前に現れる。困惑と怒り、動揺がスっと消えていく気がする。



「クララさん、ありがとう。いやあ、クララさんは相変わらず美しい」


「お世辞は結構ですよ」


「お世辞ではないのに」



「……」



 ノエルは何を黙っているんだ?クララさんは美しいだろ。こういう美人は賢者のような華奢な少女との絡みを俺にみせるべきだよな。



「つくづく残念なやつだよな」


「それな。変に卑屈だし」


「あ、それ多分妹さんのせいだと思いますよ」



 む。俺に会話は筒抜けだぞ。


 しかし、次の目的地はどこにすればいいんだろうか。ここはやはり冒険者ギルドだろうか。いやでも商業ギルドも捨てがたい。両方とも2000年前にはなかったからな。一度見ておきたいものだ。


 ……冒険者ギルドにするか。



「次の目的地は3000番な」


「いいよ。駆け出しの村の冒険者ギルドだよね」


「ああそうだ。ノエルといい雰囲気になっているあれも連れて行くぞ」


「もちろん。《テレポート》」



「え、ってうわっ」


「……。またな」



 ちなみにクララさんは文句のつけようのない完璧な礼で見送ってくれた。


 やっぱり賢者とキャッキャウフフな関係になってくれないものだろうか。そんなことを考えながらニヤニヤ笑いつつ。



「着いたよ」


「おお、ここが冒険者ギルドか」



 今は深夜にあたる時間帯だからか、さすがに空いているようだ。



「なあ、どうしてあのタイミングで魔法を使ったんだ?つーか、あのメイドさん誰だよ」


「メイドさんは知らないけど、タイミングに関しては偶然だよ」


「どのタイミングだ?」



 なんかしようとしていたのか?ふむ。調べてみるか。

 ……調べるんじゃなかった。



「ま、まあ、それはともかく受付嬢さーん。今からギルド登録ってできますか?」


「できますよ」



 わあ、これが噂の受付嬢か、可愛い。これは周りにいるギルド職員の女の子と組み合わせて想像するべきだな。うむうむ。



 だが、受付嬢さんが■■を見る目は恋する乙女のそれだ。はあ。■■は本当に笑っちゃうくらいモテるな。現実ではあきらめるしかないようだ。しかし、



「貴女みたいな可愛らしい女性に対応してもらえるなんて、散々だった今日がいい日になるな」


「ありがとうございます」



 何故か據が苦笑いを浮かべている。



「さすが受付嬢さん、こういうの慣れてるんだね」


「こういうのは口に出して言うことが大事らしいぞ。妹が言っていた」








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