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「別に遊びでやってただけだしなー」
「じゃとりあえずこの紙にサインよろしく」
この紙、サインしたら約束を違えると息絶えてしまうという怖い1品だ。いわゆる呪いの紙ってやつだな。
「ふうむ。まあいっか。サインするから紙貸して」
「ほい」
あ、サインせずビリビリに破いた。
「バーカバーカ。はっ、こんなのにひっかかるとか単純すぎんだろ」
「な、那奈様を堂々と騙した!?」
「……俺がこんなものに騙されるわけがないだろ」
これくらいの可能性、俺は考えている。
流れるように嘘をつく父親のせいでこれくらい予想できる。
まあ情報把握で予測することもできるしな。
「呪いのかかった恐ろしき契約書よ、今我が命ずる。その時を戻しもとの姿を取り戻せ《復元魔法》」
ふう、疲れた。この呪文長すぎる。ノエル作の呪文だが。
いつまで経っても覚えられないから、情報把握を使い呪文を読んでる。
時間系の魔法だから、一字でも間違えると失敗する。
皆固まっているし、紙は俺が拾っておこう。
「さて、紙はここにある。もう一回破壊するか?俺のミスでこの紙は逆襲の呪いが使えるようになっているけどな」
「……何それ?ま、そんなの逃げればいいだけだね!」
「いや私を忘れないでほしい」
他校生くんの後ろで待機していたドラゴンが面倒くさそうに足止めをしている。
「金がほしいなら渡すぞ」
金で買収するというのは、主人公みたいな存在がいれば真っ先に非難されそうだが、まあそんなやつここにはいないので問題はないだろう。
「金?なんでそんなもの」
「そういえばお前、前に10000000Gは少なくともポンッと出してたよな?」
10000000Gじゃなくて100000000Gな。
「な、10000000Gだと!?くっ。それしきのお金など!」
「なんかキャラ変わってないか。あと、10000000Gじゃないから100000000Gだから」
「100000000G!?しょうがないなー。それなら解散してあげないこともないかもなー?」
「じゃ、サインよろしく」
「ほい」
「聞き入れるかは別としていくら欲しいんだ?」
「今お前がマジックバック?に入れてるだろうお金の全部」
「それだけでいいのか?ギルドにも財産はあるぞ。まあほら、手持ちの分多分210000000くらい」
「ふふふ」
なんだかよく分からんが他校生の機嫌が良くなっている。労働しないで手に入れたお金サイコー!ってところか?……やはり分からんな。
「おいドラゴン、依頼が終わったから帰るぞ」
「《テレポート》」
ギルドに帰ってきた。相変わらず據はいない。
「ギルド長、據ってどうしたんだ?」
「ああ、エルフに攫われってたぞ」
「まさかお前がエルフに頼んだんじゃないだろうな……」
「ナ、ナンノコトカナ!?」
全く取り繕えていない。
するつもりもなさそうだが。
「はぁ、相変わらずクズだな」
「ギルド長、殺してもいいですか?こんなやつより私がギルド長になったほうがいいです絶対」
「いいよー」
いいんだ?それ絶対許可したら駄目な質問だろ。
案の定ギルド長は受付嬢さんに殺されかかってるし。
「……幸せ……」
「汚物を踏んだ私が悪いのかもしれませんけど、それにしたってキモいです」
ギルド長がハアハア言ってる。受付嬢さん結構ギャップあるな。ギルド長?もう考えるのをやめたよ。
……なんか踏まれながらスカートの奥を見てね?
「キモッ」
「受付嬢さんのパンツの色かー確かに気になるぜ」
……。■■も大差ない気持ち悪さだったな。あまり嫌悪感を感じないのは友だからか。
ギルド内は人が多くなってきている。ちょうど混む時間帯らしい。
「あ、そうだ。パンツの色教えてほしいか?」
「そりゃもちろん」
「誰の?」
「もちろん受付嬢さんの、いやこのギルドにいる女子全員!!」
「ほう。なるほどな。ではこの俺が一人一人言ってあげよう。ピンク、白レース、水玉、なし、ストライプ、キャラもの、」
一人づつ指をさしながら言う。
「……なしってどういうことだ?」
「柄、緑と黄色とシマシマってえっ!?シマシマ!!?」
「おい、なしってどういうことだよ!?」
「シマシマだとっ。あの二次元にしか存在しないと思っていたシマシマ……」
「だからなしってどういうことだよ!?」
「は?そんなの知るか。うるさい。本人に聞けばいいんじゃないか」
「雑!?」
■■と話していたはずなのにいつの間にか違う男とすりかわっていた。
……よく見たらこいつギルド長の後輩でチンピラ3じゃないか。
なんでこんなところにいるんだ。
あと、あのオカマとか男の娘のも言ったほうがいいのだろうか。
うーむ。まあいいか。聞かれたら教えてやろう。
「なんでボロボロになってるんだ?」
帰ってきた■■は薄汚れた姿になっていた。
「なしについて聞きにいったら、周りにいた女子に殴られた」
「へー」
マジで聞きにいったのか。勇気があるのか馬鹿なのかどっちなんだろうな?
「で、答えは分かったのか?」
「その状況で分かるはずがないだろ……」
「じゃあ、俺が教えてやろう」
「お願いします」
「彼女は幸運の神の加護により、パンツを履かなければ攻撃力があがる」
「はあ?」
「よってはいてな、っとセーフ」
危ない危ない。危うく殴られるところだった。
俺だと殺されかねん。
「なんでそんなこと知ってんのよ!あとなんで避けれるのよ!!ううっ」
「ごめんな」
ちょっと悪ノリしすぎた。
ドラゴンは無言だ。うむ。これは俺が悪いな。
「あ、あそこのおにーちゃんがあのおねーちゃんを泣かしています。って、ナナさんですか」
「ふふっ、あのおにーちゃん許せないわよねぇ。あなたは心配せずにここで見ていて。おねーちゃんが成敗しておくから。それにしてもやっぱりカンナちゃんは可愛いわねぇ」
ふう。
俺をダシにしてイチャつく妖精さんと知らない美女を見て健康になった俺はこっそり口角を上げた。
「対象者全員は全員転移せよ!《強制転移》」
離脱完了。
エルフの国に来ちゃったがまあ許してくれ。
エルフの国?なんかあったような気がする。しかし思い出せない。
「ここどこ?」
「6268番だ」
「どこだよ!?」
すもんアホ。あ、すもんというのはふざけているわけではない。ただのタイピングミスだ。あとここはエルフの国だ。
それにしても情報把握は便利だ。なにせ日記が書けるし、他人の恥ずかしい黒歴史の日記も読み放題。
あれ?これなんだろう。見たことない日記がある。
二つか……。
一つは、幸運の女神による妄想ってこれは読みたくない。
データ消去!
「エルフ!?」
二つ目の日記はなんだろう。
……これも幸運の女神の日記のような気がする。見なくてもいいか。
「なあ、エルフがいるんだが!!?」