13
「一応テストは受けてもらう」
「ケチめ」
「うるさい!これ受けさせないと俺の立場が危ないんだよ」
くはは、知ってる。
まあ■■のことだから問題はないと思うが。
「おーい。この試験落ちたら1回死んでもらうからな」
「……。ラジャ」
これで大丈夫だろ。
「では、開始」
倒された。というかゴーレムが作られなかった。
「おい。試験受けなくても死刑だからな?」
別に試験と死刑をかけているわけではない。断じて。
「なんでオレが言われるんだよ!」
「……あれ?おっかしいな。なんでゴーレム作れないんだろ。多少ミスってもできるはずなんだけどなあ」
ほら、ギルド長もこう言っているし、どう考えたってお前のせいだろ。きっと試験受けたくないなー。とでも思ったのだろう。
「まあいいや。ほいっ」
おお、■■がカウンターを入れる……!
ついでのようにクリティカルヒット。
倒されてしまった。つまらん。
「なんか納得できないが、ほらBランク昇格おめでとう!運も実力のうちだしな」
「無表情で言われてもな」
つーか、據はどこに行った。
見てないんだが。
「あ、そうだ。また長期依頼を受けないか?盗賊団を壊滅させてほしいんだ」
「殺人をさせる気か」
「いや、この紙に“私は盗賊団を辞めます”と盗賊団の団長に書かせればいいだけだ」
……盗賊団というと、護衛依頼の途中で遭遇した?あれ、遭遇って言っていいのか?盗賊達のことだろうか。
まあそうだろうな。
それにしても盗賊団の団長ってどういうやつなんだろう。
情報把握を使ってみよう。
…………今度から情報把握は少し自重しようか。
異世界人も自重してくれ。切実に。
「じゃあ受ける」
據がいないがまあいいだろう。気にすることはない。
「そうか、《強制転移魔法》発動……ッ!」
おい、ギルド長。何やってくれてんの。
それ下手したら腕もげる。最悪頭と胴体が引き離される。
強制転移魔法は任意がなくても発動するし、術者に触ってなくても発動する。
古代魔法は全般的にそうだけど。む?古代魔法?
なんでギルド長が使えるんだ?とりあえず情報把握を使っておくか。
いや自重すると決めたばかりじゃないか。
「で、ここはどこだよ」
「賢者式座標地点2354番」
「いや、どこだよそれ。ぜんぜん分かんねぇよ」
「さあ?」
正解は盗賊団の目の前だ。
「フフフ、今日こそは出てきてもらう!そうお前らのせいでどれだけ俺が損したと思ってるんだ……」
「だから俺は知らねーって言ってるだろ!多分それ別の盗賊団だよ!俺達は馬車を追いかけて脅かして金は貰うけど馬車は壊さねえから。多分。きっと」
言い切れないのかよ。
はあ、目の前にいるのは2人共異世界から来た……つまりは俺達と同郷の勇者達だった。いや、盗賊の方は勇者じゃないんだったか。もう1人ももはや勇者でもなんでもない気がするが、まあ便宜上な。
これを見たから俺は黙り込んだわけだ。
盗賊団の団長は同窓会に何故かいた他校生だった男、そいつと喧嘩している商人と思しき男は近藤先生か。
先生は強く生きているようでなにより。
「なあ?あれもしかして知り合いだったか?」
なっ。こいつもしや自分の担任の顔も覚えてないのか……?
「う、嘘だよな?いくらお前でもそんなことないよな?」
「あ、ああ。確か、担任だったかな?」
「そうだ」
明らかにほっとした顔するな。
マジで忘れていたのかと心配になるじゃないか。
しかし、こいつの場合まぐれで当たった可能性も捨てきれないんだよなあ。
「とにかく俺は何もしてない!」
「なんかしてるやつがそんなことを言うんだよ」
確かにそうだな。俺の母親がそうだった。自分で一人の人間を自殺まで追い込んでおいて私は何もしていない、と。
「大人気ないぞ!」
「問答無用!」
問答無用って流行っているのか?なんか前にも聞いたことがある気がするんだが。
情報把握を使うか。自重するって決めたばかりだが、これくらいならいいだろう。
スキル・問答無用
詳細
相手に“問答無用!”と言わせる。
何そのくだらないスキル。
……。
(幸運の女神の加護)
お前かぁああああ。
今度アリス様にチクっとこう。
多分彼が望んだスキルとは似て非なる……いや似てすらいないスキルだろうし。
「オレ達はどうすればいいんだ?これ」
「ドラゴンに考えさせる」
「え、私!?というか那奈様が私の呼び方戻してるんだが。普通に名前で呼んでほしいんだが」
「しょうがない。ドラゴンが使えないとなると、盗賊団の団長と思わしき他校生がこんどぅーに倒されたあとで、この紙を書いてもらうか」
「私使えないのか!?」
「うるさい」
叫ぶなよ。向こうに気づかれたらどうするんだ。
「いやこのままだとその他校生死にそうなんだが」
「大丈夫だ!知り合いに腕の良いネクロマンサーがいるからそいつに頼めば問題ない!」
「いや、このままだと死体も持っていかれそうなんだぞ」
「……いざとなれば、ノエルにアンドロイドを作ってもらおう」
「それは問題の解決になってない気がする」
今は復活の呪符は使えないししょうがないだろ。
依頼不履行は今後のランクアップに影響してきそうで嫌なんだよな。
「しかし、そうだな。書かせないとだめなんだよな。じゃあとりあえず、次期団長を決めてもらってその人に書いてもらえばいいか」
「そこにいる他校生とかいうやつは見捨てるのか?死にそうだが」
ドラゴンが首を傾けながら聞いてくる。聞いてきただけで、そんなに興味はなさそうだ。
「話し合いは嫌いだ」
「まあ……快適な睡眠には関係ないから」
……。そりゃないだろ。いくらお前でも睡眠って。睡眠って。くくっ。
「今の盗賊団の団長では(幸運の女神の後ろ盾があるから)攻撃が効かなそうだが、他のやつなら、脅せる!そう、力でなんとかなるんだ!」
「那奈様、言っていることがおかしい」
「オレは寝たい」
あんなに寝てたのにか?
「お、おい、お前ら!か、勝手に俺を殺すなよ!」
「噛みまくりで言うなよ。面白くない」
「というか先生はどうした」
あっちでのびてるぞ。まあしょうがないっちゃしょうがない。
盗賊団の団長こと他校生くんは俺達の会話を聞いていたらしい。こちらに向かって来ながら少し怒っている。名前は知らん。同窓会で初めて見たし。
先生がもらったのは商業系チートだから、こいつには勝てないだろうな。チートなしでも普通に強い。その前に名前調べろって?いや興味がなくてな。
「というかここ女性率低いな」
「盗賊団は団長を見捨てて全員逃げてったからな。しょうがないだろ」
比率として4:1か。いまいち低いのかよく分からない。盗賊団との戦いって考えたら多い方か。……まあドラゴンを女として考えていいのかよく分からないが。
盗賊団には女性もいたけど、もちろん男性の方が多いので、男女比率で考えたら上がってるのか。間違えたな。まあいいか。
「で、なんでお前らはこんなところにいるんだ?」
「なんだったっけ?」
「覚えてないのか!?」
「はぁ、盗賊団を解散させるためだ」
「解散?別にいいんじゃね」
なんて薄情な。お前は仲間を見捨てるのか。