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同窓会に行ったら異世界に召喚された  作者: 神谷洸希
ビームを放てるようになるまで
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プロローグ

「なあ、この状況ってなんだ?」


 体格の良い男、というか俺の友人が唖然としたように呟いた。


「うーん。異世界の勇者として召喚された、とか?さすがに希望的観測すぎ?」


 近くに立っていた、こちらは友達でもなんでもない男がそう言った。


「王女様美人だな」


 俺はもはや全てを理解しているので、状況の把握に対する言及を捨てて、今の感想を述べた。


 異世界の勇者。正しい。俺達は勇者として異世界に召喚されたのだ。


 ……勇者ってなんだろうな?そんな職業ないよな。しかし俺は、そんな阿呆みたいな役職になったのは二回目なのだった。もう勇者のプロと言っても過言じゃないだろう。なんで俺だけこんな恥ずかしいことを二回やんなきゃいけないんだろうな!?



 ……取り乱した。


 まずは何故こんなことになったのか説明しよう。



 それは今から一時間前───────




「なあ、なんか一人男子が多くなってないか?っていうか女子が一人男子になってないか?」



 そんな馬鹿なことを聞いてきたのは、俺の幼馴染であり、友人の■■だ。


 今は高校の同窓会だった。

 なおこの友人とは大学もなんなら学科も同じなので、普通に昨日も会っている。



「今頃気付いたのか?高校の最後のほうにはもうこの状態だったと記憶しているが」


「気づいてたなら教えてくれよ。俺いつも寝てたから分かんねえんだよ」



 ……やはりこいつは救いようのない馬鹿だったようだ。女が1人男になったんだぞ?寝てても分かるだろ。

 例えば3年の夏休みが開けてしばらくした頃、お前は席を間違えていたよな?それは男子の席が一個多くなったからだったんだぞ。なんでそれでも気づかなかったんだよ。



 そうこう話していたら、本人が話しかけてきた。



「ねえ、今僕の話していたよね?僕が性別変わったこと、もしかして分かるの?」



 何の話かなー。俺には分からないなぁ。そもそも誰に話しかけているのかな?無視だ無視。……俺じゃないよな?うん俺に対してじゃない。だから俺が答える義務はない。



「は?」



 俺の間抜けな友人は俺が素知らぬ振りをしていることに気づかずに、そのまま反応してしまった。



「おい、ここは無視しなきゃ駄目だろ。それがこのシチュエーションに対する礼儀と言うものだ」


「何言ってるかさっぱり分かんねえ」



 はあ。これだから浪漫の分からないやつは。向こうの発言から察して困惑する。これが秘密を知る上でのルールというものだ……俺も自分が何言ってるか分からなくなってきた。



「ねえ、無視しないでよ!」


「おお!なんだか知らんが無視できていたんだな!」


「すまん。據、オレにはお前の発言の意図が分からん。知りたいんだったら、こいつに聞け」



 據っていうのは件の性転換ボーイの名前だ。性転換は男→女が醍醐味なのにその逆をやってしまうとはな。つくづく残念だ、なんて高校時代は考えていたっけ?いや、よく考えたら精神的百合が見れるかもしれないのか。それはそれで悪くないな。



「那奈くん。なんでわかったの?」



 ちなみに那奈とは俺の名前だ。

 親が名無しなのに名前があるっておかしくない?面白くない?っていう非常に雑な理由でつけたらしい。俺の親は良くも悪くも変わっているので、もう諦めつつある。まだDQNネームをつけられたほうが子どものことを考えている分マシだった。



「……」



 理由は概ね予測がついているが説明が面倒臭いので、俺は適当に答えることにした。



「俺もそいつも1回異世界行ってるからな。多分お前が行ってたとこと同じ異世界な。それでだと思うぞ。これで分かったか邪神」


「!?はぇっ!?な、なんでその名前知ってんの!!?もー!その名前で呼ぶな!!……てか久しぶりに呼ばれたかも……」


「ははは、まあ安心しろよ、こいつも元職業リアル勇者だし」



 ■■が唐突に俺の黒歴史を暴露した。なんてことしやがる。いつも無知なお前に情報を与えているのは誰だと思ってんだよ。俺だぞ?俺の秘密くらい守ってくれてもいいんじゃないか、なあ?



「それこそ偉大なる帝国の初代皇帝。くくっ、完璧にして清廉にして高潔な国主が何言ってんだよ」


「ぐあっ!?すまん。いやもうほんとそれだけは忘れてくれ。お願いだ」


「いやだ。……まあでもそうだな?俺の黒歴史を全て忘れてくれたら考えてやろうか」


「えー?じゃーやめとくか」



 チッ。俺の弱みを握っているのはこいつだけなのに。まあ俺もこいつの弱みを握っているんだから釣り合いは取れてるか。



「そんなことよりさ、勇者って何?そんなもんいたの?あの世界に」



 據が俺の黒歴史を掘り返すようにそんなことを言った。



「そう思うだろ?実にバカバカしい話だが、いたんだなこれが。まあほとんど役に立っていないがな」


「そういや男一人、女二人の構成でなんでハーレムにならなかったんだろうな」



 ■■が首を捻りながら俺に聞く。いや、男と女が揃えば必ず恋仲になるわけじゃないだろ。前時代の人間か?



「一人はあの完璧超人に惚れてたし、もう一人はあのノエルだぞ。ハーレムにはならん。というか成立しない」



 完璧超人というのは、クラスメイトだった加宮のことである。同窓会にも来ているので、顔を見る。相変わらずイケメンだ。つまり加宮に惚れていたやつもこの学校のやつだったわけだ。


 ちなみに加宮というのは顔の良さはもちろん、頭も良く、運動もでき、ついでに高身長でスタイルもいいという男でまさしく完璧超人だ。


 少し欠点があるとすれば、あまりにも自分を客観視できておらず、自分ができるやつだと気付いていないことだろう。なんなら中身は大分アホなことを考えているから、個人的にあいつは残念イケメンだと思う。



「ノエル?あの賢者の?え、あの人この世界の人間だったんだ」


「そうなんだよ。っていうかあいつのことだから異世界を移動する魔法くらい作ってるんじゃねえか?いや、さすがにないか」



 據と■■が何やら話し合っている。



 ……ノエルは原因あっての結果にこだわる。【異世界間の移動ができる】という言及が何かしらのキーになるよう設定しててもおかしくない。


 つまりノエルのことはあんまり話すべきじゃないし、特に仮定の話は持ち出すべきではない。あの女はフラグってやつが好きなんだ。それで俺が何度巻き込まれたと思っている?


 ほらだからこの通り俺達のいる待ち合い室に魔法が?魔法が、えっ、マジで?



「おい、絶対これお前のせいだ。やっぱキーにされてた。異世界から召喚される!」


「は?え?……ええぇぇええ、そんなことってあるのか?」


「いやノエルだぞ?普通にあるだろ」


「知らねえよ!というか俺は異世界でのノエル、ほとんど知らねえし!それにあいつこっちでは普通だっただろ?だよな?」


「それは微妙なところだな」


「え?微妙ってどういうこ、ってうわあぁぁぁぁ」



 結果として俺達は召喚に巻き込まれた。今回のは揺れるタイプか。ノエルなら揺れなんて消せただろ。というかわざとオプションとしてつけてるだろ。この揺れは気持ち悪い。しかもギリギリ吐けない気持ち悪さだから、イラッとくる。




 これで冒頭に戻るわけだ。



 王女が天然ものの美人だ。化粧で作られたわけじゃない、自然で完璧な美しさにただ感嘆する。


 やっぱ王族は美形同士で交配していくから先鋭化された美形になっていくのだろうか。……。



「王女が天然物の美人かぁ。何か仕掛けがある方が面白かったのに」


「そっちが本音だね?」



 友人でもなんでもない男、據がおいおいみたいな顔をしながら俺に話しかけてくる。

 そうだぞ。2回目なんだから楽しみたい俺だ。



「それより分かってるか?親友。俺達の気楽で楽しい2回目の異世界ライフはお前の手にかかってるんだと」


「?」


「ほら、魔物に攻撃が出来ない呪いがかかってる邪神と攻撃力皆無の俺だぞ。ここは運が良すぎてクリティカルヒット以外が出ることのほうが珍しいお前に頼るしかないだろ!」


「な、なんでそんなことまで知っているのかな?」


「璩、那奈は情報収集に特化してる。こいつに隠しごとだけは出来ないと思え」


「お前、據の漢字間違えてるぞ」



「……無視しないでくれん?時間切れで私罰則くらっちゃうんだけど」



「なんでお前漢字のことなんて分かるんだよ?」


「今俺に隠しごとは出来ないっていったのは誰だ」


「俺だな。うん間違いなく俺だ。すまん」



「だから無視しないでくれん?お前ら私の全権力をもってチートもらえなくするけどいいの?」



「こいつ、とうとう権力使いやがった。汚ねえ」


「でも別に僕達チートいらなくない?」


「俺、視力上げたいかもしれない」


「なるほど、眼鏡面倒臭いって言っていたしな」



「いいかげん、私の言うこと聞いてくれないかな!?いいだろう、腐女子の全力をもってそういうチートをつけてやる」



「はあ!?それはやめてくれよ!!」


「む、見るだけなら面白いんだがな。そりゃあもちろん百合のほうがいいけど」


「……僕ならありかも?」



 血迷うな。どちらかというと、精神的百合を見せてくれ!お前の情報は散々見させてもらったが、あの修羅場とか可愛いくて眼福だし、面白いしで最高だったんだぞ。



「うん。そっか、残念。じゃあチートは何がいい?」



 女神らしい女が今更可愛らしく小首を傾げながら聞いてくる。


「視力がこれ以上下がらない」


「オレの前でパンチラの確率が上がるとか」


「え、えっと、じゃあ身長を高くしたいかな?」



「しょぼい!全員しょっぼい!もっとすごい力はいらないの?」



「えー、だって僕魔法は最強レベルで使えるし」


「さすが邪神。俺も前回情報把握貰ったからいらん」


「オレもとくに前回困らなかったしなあ」



「……全員、異世界二回目か。なにこのグループ。ハズレなのかな?私幸運の女神なのに!」



 手元にある資料を見ながら女神が焦りながら言った。結構いい神だな。しょぼいとか気にせずさっさと能力付与して送ればいいだけなのに。



「日頃の行いのせいだろ。そういえばお前、運が良いしパンチラいらなくないか?」


「そうだな。よく考えたらいらんかった。俺、どうしよう」


「攻撃力アップでももらえ」



「はあ……。分かった分かった。じゃあ、送るから!」



「お疲れさまです」



「誰のせいだと思ってんだよ!」



 さあ?誰のせいだろうな。俺ではないだろうよ。



 うえ、気持ち悪い。絶対これ悪意が入っているよな。



 さて、王女様に会いにいこう。実はまだ会っていないんだよ。情報として知っているだけで。ちなみに今いたところは精神世界って言うらしい。スキルで見た。



「前と同じ世界だったかー」


「まあ、そりゃあな。じゃないと魔法使えないんじゃないか」


「地球でも使えたよ?」


「……。というか2000年でこの世界も大分変わったな。当然だが」


「5000年前はもっと大きかったしなあ」



 5000年前はもっと文明進んでいたしな。魔法の技術がとても発展していた。なんでここまで衰退しちゃったんだろうな。



「2000とか5000とかどういうこと?」


「ああ、微妙に時間軸がづれているんだ。地球とここでは」


「え、じゃあお母様死んでいるの?」


「大丈夫死んでいない。御年136歳だが生きている」



 まだ全然元気だぞ。お前の弟が二十年前に生まれているみたいだしな。



「すっげ。地球のギネス超えてるじゃねえか」


「3000年以上生きていたやつが何を言う」


「俺は例外だろ。敵が偶然不老不死の薬作っていて、偶然俺がその敵を倒して、偶然俺が飲んじゃったんだから」


「改めて聞くとすごいな」



 まあ俺は普通に不老不死の薬作れるんだけどな。


 そうこうしているうちに美人の王女が話しだしたぞ。



「この世界に来ていただきありがとうございます。勇者様がた」



 あ、一応言っておくと美人は美人でも幼女に片足残してるタイプの美少女だから。






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