参 初音(はつね)店長の二つ名
"可愛いものと衣装作りが好き"と言う趣味を持った一人の高校生、吉水雪那【よしみずせつな】と雪那の趣味を一番に理解して雪那が心を許せる存在、御影那由多【みかげなゆた】の二人が世の中に未だ蔓延る理不尽極まりない固定観念や見世物を見るような眼差しを向けられながらも、"自分らしく"を貫き学園生活を送るのだが。。。
初音店長の活躍のお陰で、無事にファッションショーを開催できた雪菜たち・・・
喫茶ゆぐどらしるのメンバーと他店舗のキャストの総勢七十名。
裏側で、初音店長の友人や協力者による雪菜に対しての誹謗中傷ともとれる投稿した人物の特定等のたゆまぬ努力があったからこそ実現した今回のファッションショー。
そして...今回が開催最終回という異例の終わり方をしてしまった背景には、ただならぬ事情が隠れていたのだ。
それは・・・遡ることファッションショー開催二ヶ月前。
初音店長は、喫茶ゆぐどらしるの開店作業をしようとしていた。
店長である為、他のキャストたちより一時間早く喫茶ゆぐどらしるに出勤していて、業務用のパソコンを立ち上げSNSで今週の開店時間についての投稿をしようとしていた。
まさにその時であった。。。
初音店長が思わず目を疑うような内容の投稿を見つけてしまい一人”ボソッ”と声に出してしまう。
「え?これって...まさか。」
この時、初音店長が見ていた投稿の内容は...
とあるキャストに対してのストーカー行為や盗撮。
そして...根も葉もないとあるキャストに対してのありもしない噂や、そのキャストに対しての素性を暴露!?的な事がかかれていたのであった。
余りにも、モラルの欠片も無い投稿に底知れぬ怒りを覚えてしまった初音店長。
「これはひどいわ。いったい何者だ?こんなありもしない噂を流している人物は...」
今にも怒りを爆発させてしまいそうになってしまう初音店長であったが・・・
喫茶ゆぐどらしるの開店作業をしなければならないということを思い出して取り急ぎで、開店作業に戻りどうにかこの日は、時間通りに開店作業を終わらせられて無事に開店させるのであった。
初音店長は自身の休憩時間を利用して、彼女が持つ人脈を頼りにとあるキャストに対しての誹謗中傷ともとれる内容の投稿や、情報の発信者の特定。
そして・・・誹謗中傷を受けたとあるキャストが誰かという情報収集を初音店長自身の持つツテを利用して進めていくのであった。
それから、二週間もの月日が流れた・・・
初音店長は、自身の休みの日も情報収集に時間を費やしていたある時・・・ついにストーリーに急展開が起きる。
それは、誹謗中傷を受けたとあるキャストが…。
吉水雪菜だということを特定された。
まさかの身内・・・しかも家族の様に付き合いのある雪菜だということに驚きを隠せないでいた初音店長。
だが...雪菜本人に事の展開を伝えるか伝えないかという葛藤に、襲われるようになった初音店長は今にも感情が爆発しそうなくらいに、自身を追いつめてしまっていたのだ。
それから、ファッションショー開催の約一週間前まで時は進み。
誹謗中傷を受けている雪菜本人に、未だ事の顛末を伝えられていない初音店長。
彼女自身は、普段通りに雪菜に接し内に秘めた今にも爆発しそうな感情を押し殺して、優しい姉的存在を演じ続けていた。
しかし...彼女の我慢もついに限界を迎えることになった。。。
それが...雪菜本人から自身のSNSに、誹謗中傷を書かれていると直接言われたことによって、彼女の今まで溜めにためていた見えない存在への怒りがついに爆発した。
まさか雪菜本人から誹謗中傷を受けていると、話されて雪菜を守らなければいけないと心に誓った初音店長は、ここから猛スピードで行動開始をしたのであった。
彼女自身の古き友人、そして...信頼のおける彼女自身のネッ友に逸早く情報を回して即座に、誹謗中傷を行っているアカウントの主の特定に尽力した。
ついにその結果が実を結んだのがファッションショー開催の前日であったのだ。
阿修羅の如く情報をかき集めて家族同然の雪菜を守り切ることに成功した。
この事件が初音店長を“”鬼の初音店長“”という二つ名を付けられてしまう発端となってしまうのであった。。。
だが...この事件が雪菜本人の人生観を歪め捻じ曲げてしまう事の序章に過ぎなかったのである。
何時になれば、差別や奇怪な眼差しを向けられずに過ごせるのだろうか...否定ばかりの人生じゃ何も楽しくない。何事も快く受け入れられた時こそが。。。人間としての成長なのかもしれない。