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病み描写あります。苦手な方はバックをすぐにお願いします。
豆腐メンタルです。アンチコメントは受け付けません。
注意喚起毎度します。忘れてたらすみません。コメントで教えてください。
それでも良ければ、最後までお付き合い下さい。
それではどそ。
いつからだろうか。私が私じゃなくなったのは_ 。
冷たい風が街中を満たす。暖かな光を照らす太陽、雲ひとつない晴天の空。信号機の音、街行く人の雑踏が私の耳に届く。青く澄み渡る空を見る度に虚無感が拭えず、雫の波紋のように広がる。
もしも、1度でも願いが叶うなら、私は…
心底どうでもいいことを頭に思い浮かべ、スマホを開く。流れるようにヘッドホンをし、プレイリストの再生ボタンを押せば、悲しいような苦しいようなそんな曲が私の世界を満たす。口からこぼれるものはため息ばかり、楽しみもなく、平凡の日々。家に帰れば、私にとことん干渉してくる親の小言が待っている。全てが憂鬱だ。この世に存在する理由は、私にあるのだろうか。
「帰ろ。」
ただ一言、誰に言った訳でも無く、そのまま裏路地に入っていく。薄暗い道は不気味な雰囲気が漂っている。誰しもが悲鳴をあげたくなるくらいの恐怖感。だが、私は恐怖を感じない。逆に、心地よいくらいだ。何も無くて、孤独で冷たい。価値も名誉も何もかもない虚無が私の生きる世界そのもの。否定され、存在すらない。この世界に光なんてない。
影は私を包み、雨は心を冷ます。わかるのだ。親に、友達に、世界に、求められず、生きる価値もない人間もどき。こんな世界に縛られる意味は、どこにもない。
「…ただいま。」
沈黙が家の中を満たす。おかえりもなければ、頷きの反応もない。この家は冷めきってしまった。もう、暖かな場所などここには残っていない。いつからなんて、思い出したくもない。
「…今日の妹たちの夕飯はどうする?」
私には妹が2人いる。人懐っこい性格をしていて、周りと上手くとっつきあえる優しい子。私よりも愛されるべき存在なのに…私よりも冷遇されている。なぜなら…
「んー?カレーでいいんじゃないか?ほら、買ってきたから。入ってるでしょ?」
「…わかった。」
台所の上から3番目の引き出し。そこを開ければ買い溜めされているお徳用の中辛レトルトカレー(大盛り)を取り出す。個数は1つで、お湯を貼ったフライパンの中に入れ火をかける。
妹たちの夕食は決まって、買い溜めされているレトルトカレーとインスタントラーメンがループ化している。もしくは、月一の私か両親の手料理。
私はと言うと、両親と同じような豪華な食卓。両親が鍋を食べるなら、私も鍋だ。妹たちに比べればなんて豪華なことだろう。なぜここまで差別ができるのか、こんなにも冷遇しなくてもいいんじゃないかとひっそり思う。思うだけで、口にできない小心者だ。
「「お姉ちゃん。ただいま。」」
「おかえr」
「波奈。伽奈。おかえりなさい。」
私の声は母親の声にかき消された。言いかけた言葉を飲み込み、夕飯の準備を進める。ご飯を2人分よそい、カレーのルーを半分ずつかける。いつもの手抜き。
「波奈、伽奈。ご飯できたよ。」
「伽奈〜。ご飯できたって!」
「はーい。って今日はカレーか。」
落ち込んだ声が私の耳を支配する。その声を聞いた瞬間、私は何も言えない自分が、逃げてしまう自分が情けなくて許せなかった。「ごめんね。」の一言を心の中でつぶやき、今日の夕飯の準備をする。
「叶。今日は鍋にするぞ。」
父から突然に言われた今日の夕飯。あぁ。妹たちはレトルトカレーなのに…文句1つ言わずに食べる。私は…最低だ。
「わかった。食材は?」
「買い出しに行かないと無いな。」
やはりそうか。私に拒否権はない。否定すればとばっちりを食らうのは私の方だ。
「わかった。買ってくる。」
夕方は夜と言った方がいいくらいに暗く、そして冷え込んでいる。普段よりも厚着をするのを忘れたが、冷たい風は私の冷めきった心を代弁してくれているような気がした。そんな寒空の下、私はため息をつき買い物に出かけるのだった。