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魅了の魔法が解けたので。  作者: 遠野
嘲弄編

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08 まもなく開演、ご着席ください。(2)

 もしも本当に、王太子の暴走を止めるための大きな役割を果たしたとして、イルゼちゃんの功績が認められたなら。

 そしてその後、イルゼちゃんとアレクシス殿下の婚約・婚姻が国王陛下から承認されたなら、その裏では貴族の――というかこの国の王家の思惑がたくさん絡んでくることは間違いないだろうね。

 魅了の魔法すら無効化できる純潔の乙女の力を取り込みたいとか、あわよくば継承させたいとか、王太子の醜聞をうちうちに留めておくためとか、イルゼちゃんがむやみやたらに吹聴しないよう監視するためとか……ちょっと考えただけでもこれだけあるし、もっと深く突き詰めていけば山のように出てくるんじゃないかな。


 もっとも、過去の事例を見る限り、神様の加護を子々孫々まで受け継いだことはないみたいだし、弱体化(デバフ)無効を継承させるって目的は『あわよくば』くらいの感覚だろうけどね。

 そう考えると、神様の加護は血に宿るものじゃなくて、もっと狭い範囲……そうだなぁ、個人を個人とたらしめる根源的な要素、たとえば魂なんかに紐づいているのかもしれない。

 こういう研究課題はなかなか興味深いし、面白そうだし、もっと誰かやってくれたらいいのに。

 お城なんて特に加護持ちの人間に関する情報が多く集まっている場所なんだから、誰か一人くらいやってくれないかな?


 閑話休題。

 もちろん、いかにも王侯貴族らしい裏事情の中に、両想いのあの二人への配慮がまったくない、というわけではないと思う。

 ひそかに想い合う二人が力を合わせて巨悪を討つ、なんていかにも民衆ウケしそうなシチュエーションだし、そんな二人を間近に見て絆される人も一人か二人くらいならいるんじゃない?

 そんなお優しい誰かさんが働きかけて、二人が結ばれるように動いてくれることも、十分に考えられると思う。


 ……ただねぇ、アレクシス殿下は王族だし、イルゼちゃんは神様の加護を賜った国内屈指の貴重な人材なわけですよ。

 そうするとやっぱり、どうしたって本人たちの気持ちだけで物事は決められない。

 世知辛いけど結婚なんてその最たるものだし、ましてやアレクシス殿下が王太子に据えられることになれば、どうしたって政治の色が強くなってしまうものなんだよね。

 そう考えると、アレクシス殿下が王妃に迎えるのは加護持ちの平民よりも良いとこのお嬢さん……元々スペアである彼が王太子になるにあたりその地位を磐石にしてくれて、なおかつ王太子の婚約者として相応しいと誰もが思えるような、青い血のお姫様にすべき! って話になっちゃうかな?

 だけどそれだと、せっかく頑張ってくれたあの二人へのご褒美がおじゃんになっちゃうから、私としては申し訳ない気持ちになるわけで……。



(いや、うーん……?)



 でも、今の王太子が魅了の魔法を使ったことで廃嫡になるなら、貴族から王家の人間への不信感はどうしたって拭えなくなるはずだよね?

 アレクシス殿下が兄と同じ轍を踏むんじゃないかと疑惑を抱いたり、不安に思ったりする貴族は絶対に少なくない。

 となると、弱体化無効の加護を持つイルゼちゃんって、アレクシス殿下に対する牽制と監視を兼ねることができるとっておきの人材じゃない?

 アレクシス殿下を監視することで、王家に対する不信感を持つ人たちを安心させるという意味でも、王家に娘を差し出すことを不安に思う貴族たちにとっての体のいい()()という意味でも、イルゼちゃんほどアレクシス殿下のお嫁さんに向いた女の子っていなくない??



(これならやっぱり、アレイルが公式カップリングってことでよくね?)



 ――さっきから生贄だなんだと、お前はいったいあの二人を応援したいのかそうじゃないのかどっちなんだ? なんて言われそうな気もするけど、もちろん私は応援したいし応援しているつもりだ。

 そりゃあ、なかなか酷いことを言っている自覚がないわけじゃないけどさ、王族と平民の女の子が結ばれるにはそれ相応の理由がなくちゃ駄目なわけ。

 周囲の思惑も疑惑も何もかも利用するつもりで動かなきゃ、アレクシス殿下もイルゼちゃんも、お互いに手を伸ばすことも相手の手を取ることもできないし、そんなことは許されない。

 それに、ほら。想い合う二人が結ばれて、結婚して、めでたしめでたし……なんてのはおとぎ話だけだからね。

 現実には結婚したあとも厳しい現実が待ち受けているんだから、あの二人には王太子とウィロウの関係を足蹴にするくらいの図太さがなくちゃいけないよね?


 ……とまあそんなわけで、上から目線で申し訳ないけど、アレクシス殿下とイルゼちゃんには頑張ってもらいたいところ。

 大丈夫大丈夫、ウィロウと王太子の関係はとっくのとうに修復不可能なところまで来ちゃってるからさ。

 踏みにじったところで罪悪感を覚える必要はないぶん、心の負担はそこまで重くないでしょ?

 特に、いずれ国のトップに立つとなれば、アレクシス殿下は必要に応じて身内すら冷徹に切り捨てなくちゃいけないわけで……。


 うん、やっぱりその入門編として、今回の事件はこれ以上ないくらいピッタリな関門だな!

 アレクシス殿下におかれましてはぜひとも最後まできっちりやり遂げてちょうだいね、私は草葉の陰から応援してるよ!

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