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魅了の魔法が解けたので。  作者: 遠野
遠征編

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07 ぎすぎすクエスト(2)


「で?」

「ア?」

「まあ、この際、私のことは横に置いといてさ。フォンさんのことは案外ちゃんと面倒みてるし、それなりに可愛い後輩ではあるんでしょ」



 だから私のためじゃなくて、風さんのために教えてよ。

 私がそう言うと、同士はうぐっと言葉を詰まらせ、気まずげに視線を逸らす。


 ……うーん、アラサーでも似合う人には似合うしょぼくれの仕草だけど、悲しいかな、同士には壊滅的に似合わない。

 盾使いとして身体鍛えてるぶん図体デカいし、線が細いとか華奢とか繊細とか、そういう言葉とは完全に無縁の強面なビジュアルだし。


 まあ、そういうところも王太子を彷彿とさせなくて、個人的にはとっつきやすいタイプかなと思うポイントなんだけどさ。



「……ヤ、ほんと、さっき言った以上のことは俺からは何も言えないし、いくらお前が俺の同士でも絶対話さないですわ。無理寄りの無理なんで、どうぞ大人しく諦めてもろて」

「ふーん……。ま、同士がそう言うなら仕方ないか」

「ところでヴィル殿」

「何?」

「なんでそんなに熱心に風のことを訊いてきたんで? ……ハッ、もしや風に惚れた!?」

「あ゛???」

「ハハハ、ジョーダンに決まってるじゃないですかセンパァイ……」



 表情筋がこれでもか! というくらい引きつった同士に宥められて正気に戻り、こほん、とひとつ咳払いをして気持ちを落ち着ける。


 いかんいかん、ウィロウの身体であんまりガラの悪いことしちゃいけないな。

 もうちょっとこう、同士の髭だけを綺麗に消し炭にするとか、そういう穏便な方向で済ませないと。


 ……。

 ……、……。


 ……穏便ってなんだっけ?



「いやでも、わりと純粋に疑問なんだが」

「そんなに?」

「そらそうよ。だって、ヴィル殿は踏み入った話、自他問わず好まんでしょう」

「まーね」



 忖度なく切り込んできた同士に、否定はしないよ、と素直に頷いた。


 なにぶんこちらも隠しごとが多い身なので黙っておける話は黙っておきたいし、相手が隠したがっていることを暴く趣味もないし、そもそもウィロウ以外の人間に興味ってあんまりないので。

 同じギルドに所属していても話すメンバーが数名で固定されているあたりでお察しというやつだ。



「で、なにゆえ?」

「うん? んー、別に深い意味はないけど」

「『けど』」

「うっわ言葉尻拾ってくるじゃんめんど。……まあいいや」



 じぃ、と私を見据えてくる同士は、軽い口調に反して真剣な目をしている。

 感じ方によっては探られている、とも取れるかもしれない。


 しかしそれも、同士が風さんのことを目にかけているからこそと思えば当然なわけで、気に病むようなことでもない。

 仕方ないなぁ、と肩をすくめながら、同士が納得できるだけの理由を提示することにした。



「微妙にニュアンスが違うとはいえ、風さんと私って似たようなものじゃん」

「……あー、なるほど?」

「そ。だからなるべく嫌がることはしたくないなと。知らないことが免罪符になるような年でもないしね」



 それに、と言葉を続ける。



「なんか風さんの女嫌いって、ちょっと特殊? な感じするし」

「はて?」

「女嫌いって言うわりに、私とかパトリシアさんたちとかと話をする時はきちんと対応してくれるところとか、特にそうじゃない? 言葉は少ないけど会話は成立するし、舌打ちしてきたり、悪口言ったり悪態ついたりしないから、ある程度は我慢してくれてるみたいだなと。だから、そんな風さんでもどーーーーーしても許せない『何か』があるなら、やらないように注意しておきたかった。理由なんてそれだけだよ」



 だってよく言うじゃん?

 普段怒らない人ほど怒ると怖いってさ。


 おどけるように最後に付け加えれば、なーるほど? と同士も納得した様子。

 確かに風が怒っているところは見たことがない気がする……と考え込む同士の顔は少々青く、その可能性を危惧しているのかもしれない。


 しつこく構い過ぎて風さんに怒られないように気を付けなよーと茶化したところ、縁起でもないことを! と震え上がっていたのにはさすがに笑った。

 大丈夫だいじょうぶ、フラグじゃないから安心しなよ。……タブンネ!



「……ヴィル殿」

「なんでござろう、同士殿」



 来るかどうかもわからない未来に震えることに飽きたのか、珍しく……本当に珍しく真剣な面持ちをした同士に名前を呼ばれ、とっさにふざけた返事をしてしまったのはご愛敬。


 いや、なんかこう、同士と真面目な話をすることはあっても真面目な雰囲気になることってあんまりなくて、思わず空気を弛緩させずにはいられなかったというか。

 そんな私の渾身のボケに同士は一瞬驚いた顔をしたあと、へらっと軽薄に笑いながら言葉を続けた。



「俺からのアドバイスはホント、最初の通り。ヴィル殿に限った話ではありませんが、ここの女性陣って距離感の取り方上手いんで。普段通りの感じでいれば風も邪険にすることはない……と思われる。だから、まあ、ヴィル殿が変に気にしすぎることはないんですわ」

「――そ。了解」

「……ちなみに今回の相談料はいかほどで?」

「この前のオーク討伐クエストでノラさんがめちゃくちゃカッコ良かった話、とか?」

「ッシャオラァ!!!!!!!」

「うーんこの」



 やっぱり同士といえばこうだよなと、なんだろう、ものすごく安心した。

 このノラさん推し同担歓迎同士(※ただしガチ恋)、本当にブレねぇな……。


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