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魅了の魔法が解けたので。  作者: 遠野
遠征編

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02 ワンス・アポン・ア・タイム(2)


 とまあ、そんなこんなでちょっとしたトラブル(?)が起きてギルドの厨房に出入りすることになる……なんて、思いもよらぬ出来事は起きたりしたけども、それ以外のことは概ね問題なく、つつがない毎日を過ごしているんじゃないかなぁと思う。


 基本的には今まで通り、一人でEランク冒険者でも受注できるクエストをこなすのがデフォルト。

 その上で、空いた時間を使って魔法をあれこれ試してみたり、町を歩いてウィンドウショッピングみたいなことをしてみたり、はたまた子どもたちの遊び相手になってみたり。

 わりと気侭に、その日に思いついたこと・やりたいと思ったことをやって過ごす、という日々を送っている。


 そこに時々、ノラさんに誘われて例のオークを一狩りしに行く……というのが、最近のルーティンになりつつある。

 頻度的には週に一回、多くても二回くらいだろうか?

 そのたびに討伐証明をギルドに持って行くための袋がパンパンになるくらい狩り尽くしていくんだけど、これがちっとも減らなくて、オークの繁殖力のすさまじさに戦慄したのは言うまでもないだろう。


 確かにこれはノラさんがフラストレーションを溜めるのも納得できる、と思ったし――同時に、よくもまあノラさんたちはこのオークを数の暴力(物理)で押し留めてきたな……とめちゃくちゃ感心した。


 だってアイツら、ちょっとした好奇心から死んだオークを護身用のダガーでつついてみたんだけど、マジでびっくりするくらい肉? 肌? が硬いんだもん。

 私は鉄か鋼かダイヤモンドでもつついているのか? って思うくらいダガーが刺さらなかったし、無理に切りつけようと思ったらダガーの方が刃こぼれしそうな気がした。

 ダガーに二重、三重の強化付与エンチャントをかけてようやく『すぱっ』と肉を切りつけられるようになるあたり、本当、あのオークの物理防御の固さは異常だと思う。


 そしてそんなオークを魔法なしで退けてきたノラさんたちも漏れなく異常。

 ……それとも、私とウィロウが無知だっただけで、量より質のギルド総勢でかかればそんなもんなのだろうか……?


 ま――まあ、なんにせよ、オーク狩りが私にとってはいい小遣い稼ぎになっているのは確かだ。

 オークだから数は多いし、戦闘技能は魔法特化な私がゲームで言うところのいわゆる『特攻持ち』だし、一回クエストに行くだけで金貨一枚は確実だし?


 おかげで私の生活費の確保はもとより、ウィロウのための貯蓄が増えること増えること!

 冬になればオークの動きも大人しくなるから、こんな風に私ががっぽり稼がせてもらえるのは本当に今だけなんだろうけど……だからこそ稼げるだけ今のうちに稼いでおこう! と決意して意気込むくらい、私にとっては本当に美味しいクエストだった。


 それに……お金をしっかり稼げるのはもちろんだけど、ノラさんと一緒に『今度はああしたらどうだろう』、『じゃあこっちは?』なんて具合に、あれこれ試行錯誤できるのがぶっちゃけとても楽しいのだ。

 やれ魔法剣だ、二人連携技だ、って具合にさ。

 クエストに行く回数が増えるたびに、できることの幅が広がっていくのが面白くて仕方がない。


 ……もちろん、相手が魔物オークとはいえ命を奪っていることに変わりはないし、それを楽しむべきではない、とは思っているんだけど。

 元々の私の気質的な問題なのか、はたまたウィロウの中でずっと独りでいたからか、今の私は自分にとって『大切なもの』と『そうでないもの』の線引きがひどくはっきりしていて――『そうでないもの』に対する思いやりが、自分でもどうかと思うほど非常に薄かった。


 ……それこそ、前世ではもっと思いやりがあったはずじゃなかったっけ? と真剣に考え込み、パトリシアさんやナタリーさんから心配されるくらい薄情な自分に気付いて『マジか』ってなった。


 オークに対する非情さと言うか、情のなさと言うか、心無い人でなしの言動を取ってしまうはたぶんそれが原因で――反対に、今の私にとって『大切なもの』に対しての依存ともとれる執着の強さもまた、この線引きが働いているんじゃないかと考えている。

 もっとも、多少の親愛や憧憬の域を超え、依存に近い執着を抱くほど大切な人なんて、まだウィロウしかいないんだけどさ。


 あれほど憧れて慕っているノラさんでさえ、ウィロウに並ぶにはまだ遠い。

 まあ、二人を比べた時、想いと愛情を注いだ年月の長さがあまりにも違いすぎるので、当然といえば当然の話ではあるよね?


 ……、……『あの子に執着している』という点では、本当に、本っっっ当に不本意だけど、私と王太子は同じ穴の狢なんだよなぁと理解せざるを得なくて、いかんせん悲しくなってくる。


 でも、あくまでも私の執着はウィロウの幸せを願うものであり、ウィロウを幸せにすべく動くための原動力。

 王太子のようにあの子の自由意思を奪い、破滅への道を舗装して導くようなヤベーもんではなく、もっと健全な執着なので決して悪いものではないことをどうかご理解ください。


 ……。

 ……、……。


 ……いや、その、うん。

 ……自分で言っておいてなんだけど、健全な執着ってなんだ……??


唐突に虚無になるヴィルの図。

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