表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魅了の魔法が解けたので。  作者: 遠野
新人編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/134

03 青い鳥を探して(3)


「ごめんなさいね、別室に案内してしまって。でも、あのままだと周囲の目が集まりすぎて、不快な思いをさせてしまいそうだったから……許してもらえると嬉しいわ」

「いえ、私もちょっと大人げないことをしてしまったと思うので。お心遣いに感謝します」


 男たちをあしらったあと、無事にパトリシアさんへの接触ができた私は、手続きのためにと別室に通された。


 冒険者の新規登録の時は皆こんな感じなのかな、と思っていたのだが、パトリシアさん曰くそうではないらしい。

 どうやら酔っ払い連中との騒動で周囲からの注目を浴びてしまったようで、衆目が集まる中での手続きはあまりよろしくない、と取り計らってくれたのだとか。


 そりゃそうなりますよね、ただでさえ悪い意味で注目浴びてた連中が騒ぎ起こしたわけですし!

 むしろ騒ぎを大きくしてすみません、という気持ちなので、良い子ちゃんモードに切り替えて謙虚な姿勢をとる。


 さっきのが例外なだけで、普段のヴィルは悪い子じゃないよ? 本当だよ? なんて、第一印象の塗り替えを狙っているのはここだけの話。


「あ、そうだ。手続きの前に、こちらを」

「あらまあ、紹介状なんて一体いつぶりかしら? ……となると、手続きの書類はこれだけじゃ足りないわね。追加の書類を持ってくるから、少し待っていてくれる?」

「すみません、お手数おかけします」

「いいのよ、仕事だもの」


 うふふ、と笑うパトリシアさんのお上品さよ……!


 実はどこぞの貴族の令嬢でした、と言われても納得できるくらい、彼女の一挙一動には品があることはウィロウの観察眼が見抜いている。

 ギルドの受付嬢だけあって、頭のてっぺんからつま先まできちんと身なりに気を遣われているし、角を感じさせない柔らかな表情と丁寧な言葉遣いもとっても素敵。


 結い上げられた薄い茶色の髪や、春の萌芽を思わせる緑の瞳も、パトリシアさんの印象を優しげに感じさせる一因だろう。

 酔っ払いに絡まれてささくれだった気分が、じんわりと癒されていく感覚がする。


「お待たせしました。読み書きは大丈夫だと思うけど、書類を読み上げて職員と本人とで確認するのがギルドの規則だから、付き合ってちょうだいね」

「わかりました」

「それじゃあ、まずは秘密保持契約についてからいきましょう」


 秘密保持契約とは、ざっくり言えば『本来の生まれについて口外しないこと』というもの。


 ギルドが身元捏造の手助けをしているんだから、本人もちゃんと隠す努力をしなさいね?

 努力を怠るような真似をしたらペナルティを課すからね? みたいな。おおよそそんな内容だ。


「質問してもいいですか?」

「ええ、もちろん」

「ギルド側も本人もきちんと隠す努力をしていても、元の素性について探り当てられることがまったくない……なんてことはないと思うんですけど、その場合はどうなるんですか?」

「第三者の洞察力や推理力、あるいは不可抗力によって、元の素性が割れてしまった時のペナルティが知りたいのね?」

「はい」

「一般的には、知ってしまった人にも秘密保持の契約を結んでもらうことになるかたちになるだけで、本人やギルドへのペナルティはないわ。もちろん、故意にバラしたとなれば、相応の『痛い目』を見てもらうことになるけれど。……でも、うちは『量より質』のギルドだから、そのあたりの心配はしなくても大丈夫よ」

「『量より質』、ですか?」


 首を傾げる私のために、パトリシアさんが補足の説明を加えてくれる。


「冒険者ギルドって、地域の暮らしの様子や発注されやすいクエストを鑑みて、『量より質』型、『質より量』型、『どちらも重視』型に特色が分かれているの」


 傾向としては、『質より量』のところは弱い魔物や魔獣が広範囲かつ頻繁に出現しやすく、それらの討伐クエストが多いため人海戦術が必要な場所。


 『量より質』のところは頻繁に魔物や魔獣が出てくるわけではないが、魔物や魔獣の上位個体が出てきやすい土地柄、一人でも対応できるだけの実力者が必要な場所。


 そして『どちらも重視』するところは、上位個体に限らずとにかく強い魔物・魔獣が出没しやすいだけでなく、スタンピードが起こる危険性を孕んだ土地なので、どちらか片方に寄れるだけの余裕がない場所……ということらしい。


「もちろん、どのタイプでもギルド員に対してある程度の質は求められる。その中でも、より質の高い冒険者を集めたり、そういう冒険者になれるよう新人育成に力を入れているのがウチってことね」

「なるほど」

「特にウチが認める『質の高さ』っていうのは、冒険者としてだけではなく、人間性の部分も含まれているの。だから、もし貴女の素性が割れてしまっても、言いふらしたり強請ったりしてくるような人はいないはずよ。……でも、万が一そんな人がいたら、私たち職員がキュッと締め上げて『お話』するから、遠慮せずすぐに教えてね?」

「アッハイ」


 笑みを浮かべるパトリシアさんには脊髄反射で人を頷かせるだけの凄みがありました、まる……。


 いや本当、にっこりとほがらか~な笑顔でえらいことをおっしゃるわこの人。

 なるほど、優しいだけじゃ受付嬢は務まりませんかそうですか。


 歴戦(?)の受付嬢はやはり一味違うらしい。

 その強さ、ぜひ見習いたい。


ギルドの受付嬢だって強くてもいいじゃない! ……という、完全に筆者の趣味ですね。はい。


昨日から異世界転移・転生の恋愛月間ランキングで表紙入りをさせていただいております! 本当にありがとうございますー!

もうちょっと上位に行けるかな? どうかな? と、とてもソワソワしておりますが、投稿は粛々と続けますよ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ