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魅了の魔法が解けたので。  作者: 遠野
嘲弄編

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19 月になんて返さない(1)

 おいしいごはんでおなかがいっぱいになったら、いい子はもう寝る時間ってことで、私と風君は部屋を借りている宿へ。

 お酒を飲んでいるノラさんと同士は、まだまだ飲み足りないからと二軒目を探して夜の王都へ繰り出していった――というか、むしろノラさんが同士を引きずる勢いで連れて行った、と表現した方が正しいのかも。


 アルコールが入ったおかげでちょっとずつノラさんとちゃんと喋れるようになってきたとはいえ、さすがに二人きりになるのは、同士の心情的にだいぶハードルが高かったらしく……。

 引き続き緩衝材として私を連れて行きたそうにしていた同士には悪いが、眠いからパス、と半分冗談半分本気で断り。いい年した大人が年下の女の子に無理強いすんじゃないよ! とド正論をかますノラさんに襟首をつかまれ、ドナドナされていく彼を笑顔で見送ったのだった。

 ちなみにこれは余談だが、同士はすっかり酔いが醒めた顔で青ざめていたことを追記しておく。


 なお、そんな私の隣では風君がちょっと気の毒そうな目を向けていたけど、引き止めもせず見送った時点で私と同罪だと思います。

 まあ、もし風君がついて行こうとしていたら私がストップをかけていたので、どっちにしろってところだけどね。わはは。


 ――さて、そんなこんなでひと足もふた足も速く、宿に戻って来たわけですが。



「ねぇ風君、寝る前にそっちの部屋にお邪魔してもいい?」

「俺がヴィルたちの部屋に入るわけにもいかないし、それでいい。とりあえずラッセルの散らかした荷物だけ寄せておくから、五分くらいしたら来てくれ」

「魔法使っても良ければ私がやるよ?」

「……確かにその方が早そうだが、いくら魔法を使うと言っても、あいつの下着を片付けるのは嫌だろう?」

「お気遣い痛み入りますお手数おかけしますが何卒よろしくお願いします」



 あーあ、ちょっと真面目な話をしようと思った途端にこれだよ! なんて、呆れる声がどこからともなく聞こえてきそうなやり取りをしたあとは、大人しくいったん自分の部屋に戻ることに。

 屋内だからとりあえず外套は脱いでおかなくちゃいけないなーと思ったのもあるし、あとは長話になってもいいように、水かお茶をもらえないか宿の人に訊いてみるのもありかな? とかね、待ち時間が五分もあるから色々と考えて動いてみたりなんかもして。


 ……いやだって、手のひらドリルで風君のご厚意に甘えたくなる気持ちもわかるでしょ? わかるよね??

 私はわりとおおざっぱなところがあるから、テキトーに脱ぎ捨てられた服くらいなら、まあ、壁際に適当にぽいぽい放って寄せておくことはできると思うけど。

 下着類はさすがにちょっとね……いくらおおざっぱと言っても、身内でもない男の使用済みの下着に触る気概の持ち合わせはないんでね。

 ありがとう風君、君の気遣いのおかげで明日の同士の平和は守られた。



「すまない、待たせた」

「あいつが片付けちゃんとしてなかったのと、あとは変なところで勘の良すぎる『アレ』が悪いだけであって、風君は何も悪くないし気にしなくていいんだよ? むしろこっちがさっそく巻き込んじゃってごめんの気持ち。……お邪魔しまーす」



 夜だしカフェインを取るのはやめた方がいいかなってことで、宿の人に用意してもらったのは水差しと二人分のコップ。

 そこに風君へのお詫びの気持ちも込めて、宿に帰る途中の露店で購入したナッツ入りクッキーを添え、大体五分くらい経ったところで隣の部屋に突撃した。

 未婚の男女がこんな遅い時間に個室で二人きりなんて……というお小言が聞こえてきそうだけど、やべーやつにストーキングされている現状的にそんな細かいことを気にしてる余裕はないんだなぁ、これが!



「? 何をしているんだ?」

「ちょっとね、盗聴防止とのぞき見防止の細工をね」

「魔法ってそんなこともできるのか」

「うーん。誰でもってわけじゃないけど、一応は。ほかに使ってる人がいるって話は聞いたことがないから、今のところ、この手の魔法を使えるのは私だけだと思うよ。たぶんね」

「……この前の遠征の時に使っていたターゲット集中? とやらの魔法についても似たようなこと言ってたよな? 前々からそんな気はしていたが、お前、実はかなり規格外だろ?」

「んふふ、お褒めにあずかり光栄ですってね~」



 部屋に入って持ち込んだものを備え付けのテーブルに置いたら、さっそく盗聴とのぞき見防止の魔法を部屋全体にかけていく。

 そんな私の様子を不思議そうに見て風君には、親切心で何をしているのか簡単に説明したんだけど……いざ話をすれば若干引き気味で褒められた。何故。


 まあ、才能の塊であるウィロウのずば抜けた魔法センスに引かれるのは納得がいかないけど、ちゃんと褒めてくれてもいるからいいか。

 そうだろうそうだろう、うちのウィロウはすごいんだぞ! と私の親馬鹿(姉馬鹿?)心が良い感じで満たされたので、とりあえずプラマイでトントンって感じ。

 ……こうやってギリギリ、スレスレの許されるラインで発言をするスキルは彼の実家で培われた経験によるものなのかな、なんて考え始めるとあまりにも闇が深いし下世話すぎるので、深く考えずにサラッと流しておこうね。

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