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魅了の魔法が解けたので。  作者: 遠野
嘲弄編

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16 さあさお立ち会い!(4)

 とまあ、そんなこんなで合流して早々、しょうもないやりとりがあったわけですが。

 ガチ恋してる推しの過剰供給に取り乱す同士をなだめすかしてから、改めてお互いの状況のことを軽く話をして、私とノラさんは無事にこの一週間お世話になる宿を確保することができた。


 話の流れでなんとなく察しはついていると思うけど、場所は同士たちが借りているのと同じ宿。

 部屋をとる際に受付の人に話を聞いたところ、たまたま彼らの隣にある二人部屋が空いているとのことだったので、そこをお借りさせてもらうことになったのだ。

 同じギルドの冒険者、それも関係が良好な仲間なら、近くにいた方がお互い困った時に力になれるでしょうと融通を利かせてくれた受付のおじさんには本当に感謝感激雨あられ。

 繁忙期でバタバタだろうに、宿泊客に細かな気配りをしてくれるおじさんの優しさプライスレス。



「アンタたち、メシはどうする? もしまだ決まってないなら、アタシのおすすめの店があるから連れてってやるよ」

「ひゃい」

「おいこらしっかりしろヘタレ、せっかくのお近づきになるチャンスなんだからお前が頑張らなくてどうする」

「#$%♭¥+*!!」

「だから私に理解できる言語で話せっつってんだろガチ恋限界オタク」

(しょ)(しょ)(しょ)(しょ)うは言ってもよぅ……!」



 ノラさんの言葉に腑抜けた返事をする同士を叱咤するものの、正直言って暖簾に腕押し、糠に釘って感じの反応しか返ってこなくて『頭痛が痛い』気分だった。

 あのさーほんとさー同士(オタク)くんはこれだからさぁ……!



「ほんっっっと、そんな有様でよく私に喧嘩売れたよね?」

「ウッ」



 思わずチクリと嫌味を刺してしまったのは、今でこそ同担歓迎、むしろ俺が沼に引きずり込んでやるぜと言わんばかりのウェルカムっぷりを見せる同士も、かつてはバチバチの同担拒否だったからだ。


 前にもどこかで、ちょっとだけ話したような気がするけど、同士……ラッセルと私のファーストコンタクトは最悪の一言に尽きるほど酷かった。

 なんせ当時のラッセルはノラさんにガチ恋のファンであると同時に、ノラさんへの敬愛と恋愛がぐちゃぐちゃに入り混じった同担拒否過激派。

 そんな拗らせ男がぽっと出の新人()がノラさんに構われて、世話を焼かれて、なんならきゃっきゃうふふと同性ならではのいちゃつきと戯れる様子を見せつけられれば、嫉妬の炎をめらめらと滾らせたラッセルが大人しく我慢できるはずもなかったわけだ(あとから本人がそう自白していたので間違いない)。


 そんで結局、ラッセルはノラさんがいない隙を見て私に絡んできて、お互いに相手を煽ってマウントを取って取られてを繰り返して……それから、そう!

 解釈違いというか、主張というか、むしろ感じ方なのかな。

 その違いが出てきたところで、私がラッセルを言葉でボコボコにして完全勝利Sをおさめた結果、今の関係に落ち着いたって感じなんだよね。

 その時、ラッセルがついでに同担拒否から同担歓迎の穏やかな方針にシフトチェンジしたからこその関係、とも言えるけど。


 ……まあ、何はともあれそうして衝突したからこそ私はラッセルがノラさんにガチ恋していることを知っているし、ガチ恋のラッセルだったらノラさんの妹分として、ノラさん推しの同士として手を貸してやらんこともないかな~と思っているわけですよ。

 ほら、同士だったらクエストでもノラさんと肩を並べられるし――というよりは、盾使いだから背中を預けるって言った方がいいか。

 どっちにしろノラさんに負けず劣らずの力があることに間違いないし、ノラさんが今の仕事に誇りを持っていることをちゃーんとわかっているから、たとえ付き合ったり結婚したりしても無理に家庭に入れなんて絶対言わない。


 それに、()()同士だったらノラさんのお顔に傷があることについてもとやかく言わないから、まあいいかなって?

 最終的にはノラさんの気持ちが一番大事なので、結論から言えば私は決して同士ではなくノラさんの味方だけど。

 どこの馬の骨とも知れない輩に盗られるくらいなら、信頼できる見知った相手と幸せになってくれた方が安心できるなぁっていうね。

 そんなのは傲慢だ、なんて言われそうだけど、みんな大体そんなもんじゃない?

 信頼できる相手かそうじゃないかって、結構大事なことだと思うけど。


 だから、まあ、要するにだ。



「本気で私にサポートしてもらいたかったらちゃんとノラさんに好きになってもらう努力をしてくれないと困るんですけど」

「サーセン……」



 惚れた女の妹分にすら嫉妬して絡んでくるくらい前に、オタクはノラさんとちゃんと会話できるようになってくれませんかねぇ!?
















「しっかしこの二人、ほんっと仲が良いねェ……」

「そうだな」

「色気のかけらも感じられないし、どっちにもその気がないのは見りゃわかるが。それでも、ここまで仲が良さげだと妬けちまうってものさ。なぁ、アンタもそう思わないかい?」

「まったくだ」

「…………………………ん?」

「なんだ?」

「あ、いや、……んんん?」

「?」

(風から普通に反応があったこともびっくりだけど待ってこれどっちに対して妬いてんのかどういう意味で妬いてんのかでだいぶ色々おもしろ……ン゛ンッ、えっこれホントどっち??)

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