ふさふさの耳とふさふさの尻尾
宇宙から見た地球の海も格別に綺麗だったが…それとはまた違う美しさがあった。
「良し!今日はここら辺にキャンプを張ろう」
海岸から少し離れた位置にシェルターを張る。
「海の中に入りたいけど…筋力が落ちている今、入るのは危険か…先に筋力を戻す方がいいな。危険を冒すのは万全な筋力が戻ってからだ。しかし…海に付いたはまでは良かったけど、何もないな…」
僕が期待していた、漁船や港などは何もなく…ただただ、海の美しさと水平線の白い輝きしか見えなかった。
「仕方ない…切り替えていこう」
僕は浜辺に素足で踏み入れる。
小さな砂が足の指をすり抜ける感覚がくすぐったい。
「うん…歩ける。浜辺の砂は力が分散しやすいから…足の筋トレには効果てきめんのはず」
僕は浜辺を一歩ずつ…少しよろめきながらも、確実に一歩、足を前に出す練習を重ねた。
「ふ~キッツい!さすがに堪えるな…ここでプロテインでも飲みたいところだけど…そんなものは無い」
僕は残り物の焼き魚で我慢する。
「ここまで来て…振出しに戻ったか…この先どうしよう」
漠然とした不安が僕を襲った。
海に沈む夕日が僕に掛けて一本の光の道を海に描く。
幻想的な景色を僕はスマートフォンで撮影した。
「綺麗だな…この景色を誰かと共有したいものだけど…僕にはその相手がいない…」
写真を勝手に撮っておいて、なぜか凄く落ち込む。
「皆はもうこの地球にはいないのだろうか…」
何か手掛かりでも…ん?
「何だ…これは…」
僕が撮った写真によく分からないものが写っている。
「尻尾…いや尾鰭、翼みたいなものも生えてる?いや…それにしても大きくないか…鯨?いや!鯨は空を飛んだりしないだろ…」
僕の捕った写真の中で真っ赤に染まった空に大きな何かが写り込んでいた。
「こんな生き物見たことが無い…少し前の大きなゲンゴロウと同じだ…この地球でいったいが起こっているんだ…」
夜になり…海でも僕は星を眺めていた。
「ああ…やっぱり星座はもう何も残ってないな…あの星たちを餃座って名前にしようかな…」
僕はシェルターで身を隠していたが…何か物音がするのを感じ取った。
「ん?何か音がする…砂を踏む音だ…いったい何が…何がいるんだ」
僕は恐る恐る、シェルターから顔をのぞかせるとそこには見たことも無い生き物たちがいた。
何だ…あの生き物は、サル?
いや違う、サルよりも背が高く、さらに背筋もいい。
人かと思ったが…決定的に違うところが2つあった。
「ふさふさの耳と…ふさふさの尻尾が付いている…そんなことがあるのか…」
ふさふさの耳…ふさふさの尻尾…僕の頭は訳が分からなかった。
大きなゲンゴロウはまだ信じられる…きっと何年も生き抜いてきたのだと思えるからだ。
さっきの写真だって僕の身間違いかもしれない…
しかし…今目にしているのは紛れもない事実…疑いようもない。
僕は、自分でも気づかないうちにシェルターの外に出てしまっていた。
その生き物を見るのに夢中になっていたのだ。
「服らしいものを着ている…つまり、服を作れるだけの知識があるのか…相当賢いな、もし僕が奴らの敵とみなされた場合、あの数でリンチにされるのだろうか…」
『チョン、チョン』
「ん?」
何者かが僕の腕を突いた。
僕は思わず腰を抜かす。
「な…な…」
「%&’%&%&%$%$#“#!」
言葉を発している…相当知能が高い…
クソ!…何いてるか全然わからん…英語の発音でもない、ましてや日本語でもない…いったいどこからそんな声出してる。
いや、今はそんなこと考えている場合じゃない…いったい何される…殺されるか…食われるのか…
「あーあ~、えーと、聞こえますか?」
「?…え…日本語をしゃべってる…いや喋ってない…」
その生き物は決して喋っていない、口が動いていないのだ。
それなのに、その生き物が言っていると確かに分かる。
「え~と…今あなたの頭の中に直接話しかけています。大丈夫ですか?」
「だ…大丈夫って…いったい何が…」
今この状況は全く大丈夫じゃないが…
「いや…凄く弱っているなと思って。可愛そうなので保護してあげようかと…」
いや!俺はどこかの子犬じゃないぞ!
「子犬?」
その人型をした生き物は首をかしげる。
「いや!違うそこは読み取らないでくれ」
しかし…この生き物たちに言葉が通じる…意思疎通ができる…人ではないが人にすごく違い生き物だ。
それによく分からない力を持っている、直接頭に話しかけるなんて芸当は人にはできない。
いやそれにしても、ふさふさした耳と尻尾が付いた可愛い女の子…コスプレか…
「あなた…頭の中で良く喋りますね。何言っているかほとんど分かりませんでした。すみません…」
その生き物は頭を下げる。
「いやいや、気にしないでくれ。ちょっと考え事をしていただけなんだ。ところで君たちは行った誰なんだ」
僕は聞いた…聞いてやった、『地球を侵略したエイリアンだ』とか…そんな言葉を期待していたわけではないが、どうしても気になったのだ、これだけ知能が高いんだ、自分たちのことくらい知っているだろう。
「私たちは、この世界を旅してまわっている民族です。丁度このジャポニカ王国付近の島に来たところです」
「民族…ということは君たち以外にも生き物がいるというのか…」
「それは勿論、私たちの他にもいっぱい、いますよ。大きな翼をはやした生き物とか…いろんな生き物が。私たちはその中でも、知識が高い種族なんです。この耳と尻尾も本物ですよ…『コスプレ』…というものではありません」
「は…はは、もしかして火を使っていたのは君たちかい?」
「火?」
「ええっと、赤くてすごく熱い燃えている奴…ていうの…火って説明するの難しいな」
「もしかして、これのことですか?」
そう言うと…その子は手から火を出した。
「は!いったいどういう事!何かのマジック!」
「『マジック』…とは何ですか?これは魔法です。ファイアと言います」
「ファイア…ね」
母さん…僕は本当に地球にいるのでしょうか…
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