人の捜索
その時見たのは、とてもきれいな星空だった。
だが、気づいてしまった。
「北極星がない…いや、あるにはあるが、ずれている…」
確かに、時間がたてば星の位置だって変わる、北極星だって時間がたてばほかの星に置き換わる事だってある。それにしたって、変わりすぎじゃないのか。オリオン座もない、北斗七星もない…どうなっているんだ。星の位置が変わるなんてものじゃないぞ、星自体が消滅している可能性があるってことか。でも、そうなると、この地球はいったい僕がいた時代からどれだけの時間がたっているんだ…」
僕はそこから考えるのをやめて、カプセルに戻り、眠ることにした。
次の日の朝
「は!」
僕は目を覚ますとすぐさま、カプセルの扉を開けた。
「良かった、夢じゃなかったんだ」
そこには緑の生い茂る、地面が存在していた。
「さてと、今日から筋トレでも始めますか。まずは宇宙服なしで歩くことから始めよう」
僕は宇宙服を脱ぎ、自力で歩こうとしたが、まず立てない。
「は、はは、まるで力が入らないな。宇宙服にここまで助けられていたなんて。」
僕は地面に寝ころび、ストレッチを始める。
「いきなり、動くと筋か切れるかもしれないからな、入念にストレッチをしておかないと」
そして、近くに落ちていた木の枝を拾い、杖代わりにして何とか立ち上がろうとする
「ふ!」
初日は立ち上がることすら出来なかった。
筋トレを初めて1週間がたった。
何とか杖ありで歩けるまで回復し、まだまだ、走ったりはできないが、自分の足を地につけて歩けることに感動を覚えた。
「やはり来ないか…」
1週間救助を待ち続けたが、一向に救助が来る気配がない。
「このままだと、ここが僕のお墓になってしまう。このまま一人で死ぬなんて嫌だ」
そう思い僕は、何とか、人里まで行けないか考える。
「僕のいた時代とはきっと何もかもが違うはずだ、人がいるかさえ怪しい。もしかすると、僕がこの世界で勇逸の人かもしれない…いや、人の生命力をなめるなよ、きっとゴキブリのように生き残っている人類がいるはず。一時でも、生態系の頂点に立ったんだ、僕が信じなくてどうする」
僕は一里の望みをかけて、人を探すことにした。
「川沿いを歩いていけば、きっと生き物がいるはず。人が進化しているか、それとも退化しているか。はたまた絶滅しているか…」
カプセルを後にするのは名残惜しかったが、宇宙服とロープ、スマホ以外をカプセルに置いていく。
万が一に備えて、ナイフや銃があるともっと心強かったが、そんなものは無い。
良かったことは宇宙服に搭載されているAI機能が反応すること、しかし、GPSなどの機能は使用できなかった。
宇宙服の電力は太陽光発電によって補えるが使えば使うほど、消耗していくため、できるだけ使いたくはない。
だが、身体機能が回復するまでは使用するしかないだろう。
スマホは圏外を表示している、時間も表示されていない、使える機能は、メモや写真だけ。
しかし、この世界を写真に収めておくことは重要なことだろうと思う、いつか、役に立つときが来るかもしれない。
写真フォルダに残っている昔の写真を見てやる気を取り戻す。
「母さん、僕頑張るから…」
僕は人に会うために動き出した。
僕は川を下降していくことにした。川を下っていけばいつしか、海にたどり着ける、もしかしたら、漁船があるかもしれない。
「は、は、体力が落ちてる、やっぱり、木の実と水だけでは体が限界か…魚や動物が取れたら、タンパク質を得られるんだけど…」
ナイフも銃もないため、大型の動物がいたとしても捉えることはできない。
選択肢は、釣りをして取れる可能性がある魚か、罠を仕掛けて取れる可能性がる小動物のどちらか。
以前魚を探したが、全く見つけることが出来なかった。
今回も依然と同様に見つからない可能性がある、小動物もいるかどうかさえ怪しい。
「罠を仕掛けて、釣りするか…」
時計がないため、古いが日時計でだいたいの時間を把握する。
「出発してから、数時間が経ったな。もうすぐ正午だ、そろそろ、キャンプする場所を探さないと」
サバイバルで重要なのは、水、食料、シェルターの3つ。
その中でも最も重要なのがシェルターだ。
水有食料無しだと3週間、水無し食料無し3日、体温が維持できない場所の場合、3時間で死に至る。
「まずはシェルターをつくらないと、雨が降ってきたらヤバイ」
川より少し高い位置にシェルターを作ることにした。
「ここなら川が増水しても大丈夫だろう。早速、木と草を集めないと」
僕は数時間かけて、何とかシェルターを完成させた。
「よし、初めてにしてはよくできたぞ。次は食料だ」
大きめの石を立て、小さな木で支える。
その下に、木の実を置いておく、もしネズミや小動物がいれば捕まえられる可能性がある。
小動物が木の実を取ろうとすると、木の枝が倒れ、石に押しつぶされる仕組みだ。
この仕掛けを数か所に仕掛けた。
「これで良し、お願いです、かかってください…」
次に、太めの長い木を見つけ先端にロープを結び、ロープの先端に木の返しと、重し用の石を付け、餌に木の実を付けた、ぼろい釣竿をつくった。
「はは、こんな釣り竿で魚が連れたら、魚が馬鹿すぎないか…まあ、物は試しだ、こんなぼろい釣竿で釣りをしていても誰も見てないんだ、気にすることない」
僕は川まで歩いていき、釣竿を振った。
ロープは川に落ちていった。
「あとは待つだけだ…」
数時間経っても、竿はビクともしない。
「まあ、そうだよね…」
僕は竿を弾いて帰ろうとした、その時だった。
「竿が引いてる…竿が引いてるぞ!」
竿が何かに引かれている、僕は慌てて、竿を引いた。
「ぐぐぐっ!一応、宇宙服で身体機能は通常なはずなんだけどな」
釣竿はとてつもなく強く引かれる。
「このままじゃ、木が折れてしまう…一か八かだ」
僕は宇宙服の身体機能を最大に上げ、一気に引き上げることにした。
「AI!身体機能最大だ!」
「了解しました」
「うりゃ!」
何とか、僕は引き上げることに成功した。
「は、は、は、何とか引き上げることが出来たぞ…それにしても、これは…」