地球
それから僕は何とかして地球であるという証拠と今どこにいるのかを知るため行動することにした。
「この草も木も、見たことないぞ…AIの演算機能が設定した緯度と経度は北緯36度、東経140度、ということは東京に設定してある…」
僕は目を疑った、一年前までビルが立ち並び、人が溢れんばかりの場所だったのに。
「いや、きっと落下中に緯度と経度がずれてしまったんだ。そして、無人島についてしまっただけだ。そうだ…そうに、違いない。きっと無人島だから電波が届かないんだ、きっと管理衛星が僕の帰還を知らせてくれるはず、それまで待っていればいいんだ」
僕は現実逃避をするように、都合のいいよう考えをまとめていく。
「よし、水と食料を調達しにいかないと、まさか無人島に着陸するとは思ってなかったから、食料も水も持ってこなかったぞ。こんなことなら、少しだけでも持ってくるんだったな…」
僕は歩き回り、川を見つけることが出来た。
「よかった、川だ…まだ飲める水か分からないけど、川があるだけありがたい」
川の周辺には見たこともない木の実が多く実っていた。
「この実は食べられるのか…パッチテストでもしてみるか」
僕はその実をすりつぶし、腕の皮膚が薄い部分に塗り付ける。
「よし、これで10分くらい待って何も反応がなければ食べられるはずだ、味は分からないけど」
10分間後
「よし、何も反応は起こってないな」
僕は木の実を1個口に頬張る。
「うん、旨くはないが食べられる。は~、母さんのカレーが恋しい」
まず、木の実という食料を手に入れたが、次は水だ。
「この川の水飲めるのか?一応流れは速いし、水も透き通っている。後魚でもいれば飲める水のはずなんだけど」
僕は魚を探したが、一向に魚の姿が見当たらなかった。
「こんなにきれいな川なのにどうして魚がいないんだ」
僕は魚を探して、川の下流付近まで歩いて行くことにした。
「カプセルから離れすぎない程度にしておかないと」
僕は魚を探しながら歩いていく。
その時何かが動く影を目のはじでとらえた。
「何だ!今、何か動いたぞ!」
僕は、近くに落ちていた木の枝を何かがいたであろう場所に投げ込んだ。
すると、黒い塊のようなものが水面に浮かんでくるのが見えた。
「何だあれは…」
その黒い塊は、ものすごい速さで、こちらの方に接近してきた。
「な、何だ!」
黒い塊は水面から上がると、1mはあるのではないだろうかと思うほどに大きな生き物だった。
「この生き物、もしかして、ゲンゴロウなのか、いやそれにしても大きすぎる。僕が知っているゲンゴロウは数㎝のはずだ。なのにどうしてこんなに大きく、」
水中ではものすごい速さだったが、陸に上がるとものすごく遅かった。
しかし、収穫はあった。
「ゲンゴロウがいるということはこの川の水は綺麗なはずだ。すぐに火を起こして飲もう」
喉が渇いて仕方がなかった僕はカプセルに一度戻り、紐を取り出すと拾った木の枝で簡易的な火起こし器を作った。
「本当はマッチとかライターとかがあれば便利なんだけど、宇宙ステーション内で火は危険だから持ち込まれないんだよね」
数十分かかったが何とか火をつけることが出来た。
「よし、何とか火を起こすことが出来たぞ」
カップに川の水を入れ、火にかける。
数分のうちに水は沸騰した。
「よし、これで飲めるはずだ」
僕は地球に戻ってから初めて水を口にした。
「は~生き返る。これで何とか救助が来るまでは生き残れそうだな」
あれやこれやしている間に夜になってしまった。
「今夜はカプセルの中で寝るか…」
しかし、さっき見た黒い生き物がゲンゴロウの亜種だとするのならば、この場所が日本である可能性が出てきてしまった。
「いや、あれはきっと何か違う生き物が突然変異したものなんだ、そうだ、そうに違いない」
カプセルの前に座り何となく星を眺めていた、その時だった。
「!」
星を眺めていたら、何か違和感を覚えた。
「う、嘘だろ…」