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宇宙飛行士

「それじゃ、行ってくるよ母さん」

「行ってらっしゃい、家であなたの好きな料理を作って待ってるから」

「ああ、きっと成功させてくるよ」

「信じてるは」

「それじゃあ行こうか、和也」

「ジェームズ、分かった、せかすなよ」

「相変わらずマザコンだな、もう20歳だろ。そろそろ、ママンの乳を吸うのをやめたらどうだ」

「な!そんなことしてるわけないだろ、そもそも、家族と仲がいいのは普通にいい事でしょうが」

「はいはい、分かってますよ。ちょっとからかっただけだろ」

「お前ら、いい加減にしろ!これから仕事だ」

「すみません、リーダー」

「はいよ~、リーダー様」

テレビのリポーターが近づいてくる。

「すみません、宇宙飛行士の忠地和也さんですか」

「はい、そうです!」

「我々、日本テレビの者です、これから宇宙に行かれるよいう事ですがどのような気持ちですか?」

「そうですね、待ち遠しいです。子供のころからの夢だったので」

「そうですか、宇宙に行った際、まず何をしたいですか?」

「はい、それはもちろん、地球を眺めることです。一度この目で地球を眺めてみたかったので」

「なるほど、ありがとうございました。日本テレビでは忠地さんが宇宙ステーションに滞在している映像を随時公開していきたいと思います。こちら日本テレビアナウンサー、佐々木がお送りいたしました」

カメラマンが離れていく。

「佐々木さんありがとうございました」

「いや~、訓練からずっと追っかけてきた忠地君がとうとう宇宙に行っちゃうのか、私もうれしくなっちゃうね」

「そうですか…あの、帰ってきたら伝えたいことがあるんです」

「何々、気になるな~、それは、忠地君が地球にちゃんと生還して戻ってきたときに聞かせてもらおうかな」

「もちろんです、僕はきっと宇宙での仕事をこなし、この地球に帰ってきますよ」

それぞれの宇宙飛行士がインタビューを受け終わり、ついに出発する。

「よし、皆位置についたか!」

「はい」

「それじゃあ、行くぞ!」

リーダーがそういうと、ロケットが振動し始め、轟音と共にものすごい重力が自身の体にかかる。

「ウぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐ…」

訓練でも同じようなことを行ってきたが、本番となるとやはり緊張感が違う。

意識が飛びそうになる中、耐え続けた。

「よし、軌道に乗った。ここからは、AIが宇宙ステーションまで自動でいってくれるはずだ」

「ふ~、第一関門突破だな」

「これから、何個関門があるんでしょう」

「そりゃあ、99個くらいじゃねえか」

「はは、途方もないですね」

そして僕たちは何とか宇宙ステーションに到着することが出来た。


「よし、まず、システムの確認だ、それぞれの持ち場に付け」

「了解!」

「僕もここまで来るのにいろいろあったな。」

「忠地君、何やり切ったような顔をしてるの、私たちの仕事はまだまだこれからよ」

「す、すみません、サテラさん」

「私の初めての宇宙だからいろいろ不安なの、それじゃ、またあとでお話しましょ」

サテラさんいつみてもきれいな人だな

そして僕たちは仕事をし続け、食事の時間が来た。


「やっと食事だ、マジでこれがなきゃこんな仕事やってられねえぜ」

「ほんとにおいしくなりましたよね、リーダー」

「そうだな、昔はもっと離乳食感が強かったが、今では普通の食事と変わらんからな」

「見た目は昔のままですけどね」

「お前、昔の宇宙食食ったことあるのか、あんなもん食えたもんじゃねえぞ」

「地球にいる研究者が私たちのために頑張ってくれた証拠ね」

「そうだ、我々は地球の代表としてここに居る。失敗は許されない」

全員の顔つきが引き締まる。

「残り半年間、最善を尽くそう」

「了解!」


宇宙に来てから3か月がたったとき、問題が発生した。

「どうした!」

「宇宙ステーションの軌道上に、直径約2キロの小惑星が数分後に衝突するとのことです」

「回避は不可能なのか!」

「それが、システムが作動しないんです」

「自動操縦での回避は試したのか!」

「それが、なぜか動かないんです」

「どういうことだ、ここの点検をていたのは誰だ、クソ」

「どうします、リーダー!」

「全員避難だ、今すぐ救命カプセルに全員乗り込め、この宇宙ステーションから離脱する」

「しかし、このステーションを作るのにどれだけのお金と時間がかかるか」

「そんなことは分かっている、しかし、チームの命の方が大切に決まっているだろ!分かったなら、すぐに乗り込め!」

「わ、分かりました」


「どうしました?」

「和也も今すぐ救命カプセルに避難するんだ!もうすぐここに小惑星が衝突する」

「そ、そんな」

「グズグズするな、死ぬぞ!あと残っているのは私とお前だけだ」

「リーダーはどうするんですか」

「私は、チームのリーダーの責任として、ここに残り、救命カプセルの発射ボタンを押す」

「どうして、救命カプセルは遠隔でも発射できるんじゃ」

「どういうわけか、作動しないらしい、そうなってしまっては手動で発動するしかない」

「でも、それじゃリーダーが」

「私のことは気にするな、これを妻と娘に渡してほしい」

そう言われ、手紙と写真を渡されそうになった。

「いや、それはリーダー自身が渡してあげてください。僕がここに残りますよ」

「それはだめだ、お前はまだ若すぎる、これからの地球のためにお前のような奴が生き残らなければならない」

「いえ、僕には待っている人が少ないので、母さんもきっと許してくれると思います」

「おい、まて、何をする」

僕はリーダーを縛り、救命カプセルに乗せた。

「まて、和也考え直せ、お前にはまだ未来があるんだ、ここで死ぬ必要はない」

「良いんです、僕のあこがれの宇宙飛行士だってこうやって死んでいったので少し感慨深いです」

「おい、それは映画の話だろ、今は現実だほんとに死ぬぞ」

「分かってますよ、でも決めたことなので」

「まて、」

僕はリーダーを括り付け、救命カプセルの入り口をしめる。

「あ~あ、何やってるんだろうな僕は」

急いで、救命カプセルの発射ボタンを押すと、隊員が乗った救命カプセルは、地球に向って発射された

「ここから急いで救命カプセルにのっても発射されないんじゃ意味ないよな。なら最後の悪あがきでも使用か」

僕は手動で動かせないか確認することにした。

「ぐ、マジで動かないな」

小惑星はすぐそこまで迫ってきている。

「う、動け…ん?」

少しだが、宇宙ステーションが傾いているような気がした。

「動いてる…動いているぞ」

宇宙空間によって全く使われていなかった筋肉を無理やり使い、思いっきり操縦レバーを動かす。

すると、次第に宇宙ステーションは動き出し、小惑星との正面からの衝突を避けることが出来た。しかし、

「よし、何とか、宇宙ステーションとの正面衝突は避けたぞ、ん、何かおかしいな」

小惑星とぶつかった宇宙ステーションは小惑星の運動エネルギーを受け、地球の衛生軌道上から離脱してしまった。

「もしかして、流されているのか、このままじゃまずい、地球に戻れなくなる」

どんどんと小さくなっていく地球を見ながら、僕は必死に宇宙ステーションを衛生軌道に乗せようと努力したが、全く動くことはなかった。


「どれだけ離れてしまったのだろう、今どれくらいの速度で移動しているんだ、何でほかの小惑星と衝突せずにこれだけ、」

僕はこの時絶望のどん底にいた。

しかし、「無事帰ってきて」という母の言葉、「帰ってから聞かせて」と言われた知り合いの女性アナウンサーのことを思い出し。

「まだ、僕は死んでないぞ!」

不貞腐れるのをやめた僕はすぐに、宇宙ステーションの修理に取り掛かった。

「いったいどうして、操縦が動かなくなったんだ」

何とか、電力は太陽光によって賄えれているが、もし止まってしまった場合、僕は凍死してしまう、第一にソーラーパネルの点検を行うことにした。

「一人で行うのはやっぱり怖いな」

しかし、やるしかない。

何とか点検を終え、中に戻る。

「よし、点検終了、これで何とか凍死するのは避けられたかな」

次に、小惑星が衝突した部分を確認した。

「よかった、物資の運搬部分に衝突したのか、この部分だったら、切り離しができるぞ」

宇宙ステーションに衝突した小惑星の欠片が挟まっていたので記念に取っておくことにした。

「どれだけ時間がかかっても、きっと僕は地球にたどり着いて見せる!」

運が良かったのは、ちょうど、水と食料が輸送された後に小惑星が衝突したことだ。

「これだけ、食料があれば、1人でなら、数年は持つかもしれない」

チームの皆用に朝昼晩とそれぞれに必要な水分がある。

「こんなところで、皆に助けられるなんて」


小惑星が衝突してから、約半年が過ぎただろうか。

この宇宙ステーションは今でも動き続けている。

「半年かけてようやく、修復の目途が立ってきたな」

操縦が利かなかったのは巧妙に細工されていた為であった。

「いったい誰がこんなことを」

何とか修復することが出来た。

「よし、これで軌道を変えられる」

そう思ったが、宇宙ステーションは止まらなかった。

「どうしてだ、まさかエンジンの方にも何か起こっているのか」

イオンエンジンの方に何か起こっていた場合僕にはどうすることもできなかった。

「イオンエンジンが停止している、これじゃ宇宙ステーションを動かすこと求めることもできないぞ」

何とか治す方法を探すために、宇宙ステーション内をくまなく捜索していた時、あるものを見つけた。

「何だこれ、」

そこには、サテラの名前と文章が書かれていた。

「和也君へ、あなたが困っているとき、一度だけ助けてあげる。助けてほしいことを願いながら、この手紙を開けてね。サテラより♡」

「何だこれは、あのサテラさんが、ふざけるとは思えないし」

手紙をポケットに入れ、もう一度探してみることにした。

しかし、どうしても、イオンエンジンの治し方を見つけることが出来なかった。

「クソ、イオンエンジンのエンジニアはジェームズだったよな、直し方くらいメモに残しておいてくれよ。このままじゃ、一生僕は地球に帰ることが出来ない」

そう思った僕は、最後の望みをかけて、サテラさんの手紙を開けることにした。

「お願いします、僕を地球に帰れるようにしてください」

自分でもバカなことだって思ってる、しかしもう極限状態だったため、頭がおかしくなっていたんだ。

地球に帰りたいと願いながら開けた手紙には驚くべきことに、イオンエンジンの修理方法と、よく分からないことが書いてあった。

「イオンエンジンの修理方法は以下の通り、イオンエンジンを直したら、ちょうど、近くに浮いている小惑星があるはずなんだけど、その方向に移動しなさい、そうすれば、あなたは地球に帰れる。はは、どういうことだ、これは夢なのか、いや、夢だろうが現実だろうが関係ない、やるだけやってみよう」

手紙の通りイオンエンジンを修理すると、エンジンが治った。

「マジか…本当だったのかこの手紙、じゃあもしかしたら本当に戻れるかも」

操縦席から小惑星があるかどうか見渡してみた。

すると

「あれのことか」

そこには、真っ暗闇の中にポツンと一つだけ小惑星があることに気が付いた。

「あの方向だな」

最後の望みをかけて、僕は、その方向に自動操縦を固定した。


自動操縦を固定して、どれくらいたったか、もう少しで食料が尽きてしまう。

僕はできるだけ、エネルギーを使わないように、動くことをやめた。

できるだけ、体内時計を狂わせないように、睡眠の7時間以外は起きているようにしていた。

「もう少しで食料が尽きてしまうな、水も残り少ない」

もう、何度生死の狭間をよぎったか分からなかった。



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