森の中で出会ったのは熊ではなく、偉そうな男でした。
あの後、森の中で出会った性格クソ男、ギースに助けられた私は、彼の住む街まで連れていかれた。
そしてあれよあれよといっている間に、私はお城の中に連れ込まれていた。
これはやってしまったかもしれない。
もしかして、このギースとかいう男、実は騎士ではなく王子だったとかそういう説はない??
大丈夫??私の予感っていやな時だけ当たるのよね。
いやでもさっきあの男、いつでも処分できるって言ってた・・・。
一度状況整理しよう。うん。そうしよう。
さらに部下も従えてるってことはそれなりに身分が高いと見た。
まあ、どちらにせよ、やばいことだけは確かよね。
でも、よく考えるのよ、らる。
大体の乙女ゲーム的な展開から言えば最初は犬猿の仲だったとしても恋愛に発展していく可能性だったあるわけじゃない?? 私が恋愛フラグさえ折らなければ、もしかしたら私はここで穏やかに生きていくことも可能なのかもしれないわ。そうよ。私がこの男を上手く・・・・(この間10秒)
ここで私の思考回路は停止した。
いやいやいやいや、待てよ!?
初対面のか弱い女子に対してゴリラと言ってくる男だ。
MU・RI☆
そう、無理なんだよ。とりあえず、宿無しの身としてはここにおいてもらわなきゃ困る!!!!そう私には従う以外ないのよ!それに、いつでも処分できるということは殺される可能性もあるということ。
つまり、完全にギースは私の見方であるとは言い切れないということ。
諦めるのよ!らる!!異世界で生きていくために!
何でもやるの!!!私は!やるしかないの!!!従え。耐えろ。抗うな。
お城に入った途端、ギースは私に問いかけた。
「おい、ゴリラ娘。お前の名前はなんという?」
彼は城の入り口に入るなり、私の方を振り返ると問いかけた。
「私はゴリラ娘ではありませんが、別に自分のことを美少女だなんて思うほど思い上がってはいないのでお答えします。らる、と申します。」私はありったけの皮肉を込めながら笑顔で答えてやった。
しかし、彼は私こ皮肉を皮肉だとは思わなかったのか「あっそ。」と興味のなさそうな返答を残し、城の奥へと消えていった。
待て待て!!!私はここからどうしたらいいのよ!!
置いてかないでよ!!!やっぱりクソ男だわ!!!
私が1人で心の叫びをあげていると、どこからかメイドがやってきた。
そして、私の前に立ち止まると、私に挨拶をしてくれた。
「初めまして、お嬢様。ギース様からお嬢様のお世話を頼まれました、メルと申します。これからよろしくお願い致します。」そういい、深々とお辞儀をしてくれたのは私と同じくらいの少女だった。
メルと名乗る少女は、艶やかな黒髪を上品にお団子でまとめあげ清潔感を感じさせる雰囲気、更に大きい綺麗な瞳が印象的だった。
私とは正反対の可愛らしい女の子。
どちらかといえば、私がメイドでメルさんがお嬢様、といった方がしっくり来るのかもしれない。
はぁ、やっぱりこの世の中の判断は顔なのかもしれない。
あ~異世界にきても生き辛いことには変わりないのね。
「初めまして、メルさん。私はらると申します。ご迷惑おかけしてしまうこともあるかとは思いますが、何卒よろしくお願い致しますね。」私はありったけの営業スマイルを浮かべて挨拶をした。
人間の印象は出会ってすぐ決まるとか聞いたことがある気がする。とりあえず愛想良く笑っとけ、的な??
まぁ、そういうこと。
「本当に可愛らしい方。らる様は、特に笑顔がとっても素敵な方ですわね。」とメルさんは微笑みながら私に言ってくれた。
「あらやだ、お上手ですわ。」私はそう応えることしかできなかった。
「さぁ、お着替えの前にまずは入浴に行きましょう。」
「入浴?? 今から?」
「そうですわ。ギース様から、らる様の身なりを整えるように、と申しつけられておりますので。さぁ、行きましょう」
そういうとメルさんはノリノリで私を風呂場へと案内してくれた。
「女の子はちゃんとお手入れをすれば、可愛くなれますわ。特にらる様、貴方はまだ本当の自分の魅力に気づいていらっしゃらない。だから、私が可愛くなるお手伝いを致しますね。」メルさんはそういうとテキパキと私をお風呂にいれ、身なりを整えていく。
本当に、手際が良い。
同じ女性なのに、全然違う。メイクの手際も、ヘアセットもとっても早いのに丁寧で綺麗。
こうして、メルさんにしてもらうこと30分。
自分でも驚くような自分の姿になっていた。
薄いピンク色のふんわりとした上品なドレスに、派手じゃ無いのにしっかりと私の顔がはえるようなメイク、綺麗に整えられた髪の毛。
「私じゃないみたい!」私は思わず声を上げてしまった。
「あらやだ。これが、らる様の本当のお姿ですわ。きっと、ギース様はこれを分かっていらっしゃった。だから、私にメイクやセットを頼まれたのだと思いますわ。」そういうと、メルさんはにっこりと微笑んだ。
「ねぇ、メルさん?」私はメルさんにギースについて聞いてみることにした。
きっと、メルさんはギースの事を悪くは思っていない。
ということは、彼も部下の信頼を得ていると言うこと。
それはつまり、ちゃんとした支配者だから信頼を得られている。
そう考えると実は悪い人では無いのかもしれない。
私はそう考えるようになったのだ。
「どうなさいました?」
「あのね、メルさん。ギースはどんな人なの? 私は彼と今日初めて会ってからずっと毒を吐かれているの。だから、正直怖い人だと思っているの。でもね、今のメルさんのお話を聞いていると実はそんなに悪い人じゃないのかもしれないって思ったの。だから、私メルさんがどういう風にギースさんの事を思っているのか知りたいの。教えてもらえるかしら? 」
すると、メルさんは最初は驚いた表情をしていたものの、すぐに答えてくれた。
「皆様が思うほど、ギース様は悪いお方ではありません。彼は暴君なんて呼ばれていますが、本当は心優しい王子さまなのです。」メルさんはそういうと、優しく微笑んだ。
とうやら、やはりギースは王子さまのようだ。
私の推測は正しかったようだ。逆らっちゃいけないやつだ!!
「ギース様は、孤児だった私を拾ってくださったのです。あれは、寒い冬の日の話です。あの日はとっても寒く、雪が降り積もっていました。ですが、私には帰る場所もなく、雪をしのげる場所もなく、ただ路地裏でひっそりと過ごすことしか出来ませんでした。そんなとき、あのお方は私に声をかけてくださいました。あたたかい食事と寝床も用意してくださったのです。私はそんな彼の優しさに救われ、こうしてメイドとして彼に遣えているのです。私はとっても幸せ者なのですよ。だから、らる様? ギース様はとってもお優しい方なのですわ。確かに口は悪いけれど、悪い人ではないのです。だから、何か困ったことがあれば、ギース様に相談すると良いですよ。女の子同士が良ければ私も居ますから。いつでも頼ってくださいね。」メルさんはそういうと私の手をそっと握った。
「ありがとうございます。私本当はすごく心細かったんです。不安だったんです。だけど、なんとか頑張れそうです。これからもよろしくお願いしますね、メルさん。」私がそう言うと、メルさんは首を横に振って「私はメルって呼んで頂きたいのですわ。」と笑顔で話してくれた。
「じゃあ、私はメルって呼ばせて貰うね。」
「かしこまりました。らるお嬢様。」彼女はそういうと、今日1番の笑顔を見せてくれた。
「でも、私だけ、らるお嬢様とからる様とか呼ばれるのはおかしいよね? 私も呼び捨てに…」
「いいえ! ダメですわ!! 」彼女はそういうと口を尖らせた。
「どうして? 」
「あなたは、ギース様に選ばれた方。そんなお方を私が呼び捨てに出来るはずありませんわ。どうか耐えてくださいませ。」そういうと彼女は私に反論出来ないように笑顔で圧力をかけてきた。
こっわ…笑顔の美少女こっわ…。
よくあるよね、普段温厚そうな人ほどたまに有無を言わさぬ笑顔を浮かべるとき。
今がまさにその時。メルだけは怒らせちゃいけない(確信)
こうして身支度を終えた私はとある部屋へと連れていかれた。
「ギース様、お待たせ致しました。」メルはそういうと扉をノックした。
「今開ける」中からギースの不機嫌そうな声が聞こえてくる。
なんだか嫌な予感しかしない。
扉を開けて最初に言ったギースの一言。
それは「まあまあだな。ゴリラが着飾ったところで所詮ゴリラであることには変わりないな。」だった。
私は別に自分のことをかわいいとは思ってはいない。
どうせ現実世界でも持てない非リア充だよ!!!
だけど、せっかくメルが可愛くなるようにしていくれたのに、たったその一言がすごく悲しかった。
「もういいわよ。私はどうせ石ころだもの。石ころをいくら磨いても石ころには変わりないわ。」私はそういうとその場をあとにしようとした。
ばしっ!!!
勢いよく、私の腕が引っ張られた。
思わず振り返ると、そこには怒った顔をしたギースが立っていた。
どうしてこの男は怒っているのだろうか。
私にはわからなかった。
こんばんは。
かれんです。2週間ぶりの投稿です。
私の投稿のペースは、2週間に1度土曜日の夜9時という形にしようと思っています。
お時間のある時にでも覗いてやってください。
あ!あとTwitterやってます!
良ければフォローお願いします(*´ω`*)
Karen98suになります!!!割と浮上率高めなので、仲良くしてやってくださいね!
さて、ギースは相変わらず嫌な男ですね。
だけど、メルも言っていましたが本当は優しい人なんだと思います。
本当に暴君なら、らるのことも見捨てていたでしょうから。
もう少し、二人の様子を見守っていただけたらと思います。
そして、このお話にはまだまだキャラがたくさん出てきます。
そちらのほうも楽しんでいただけると嬉しいです。
あ、感想とかいただけたら喜びますので是非お願いします( *´艸`)
まあ、まだこの段階で感想かけって言われても私なら書けませんが(おいっ)
だって、まだ主要キャラもそろってないですもん。仕方ない。
さて、主人公の自己肯定感の低さにイライラしてきた私ではありますが、ここから主人公がどのようにして、素敵なヒロインへと成長していくのか、お楽しみにです。
さて本日はこのあたりで失礼いたします。
それでは!!!!
どろんっ。