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ドブリンたちのザーグ戦術2


アロッホとエトルアはダンジョンの中を走る。

通路は複雑で入り組んでいるが、道に迷うような事はない。

この数日の間に、ダンジョン内のマッピングは終えている。


「ナメクジは時間稼ぎにしかならない。全部、俺たちで倒す気で当たらないと無理だ」

「でも、あんな大軍、私たちだけで倒しきれるかしら?」

「わからないけど、まったく戦わないってわけにはいかないだろ」


そんな事を言いながら、カエルがいた部屋までたどり着いた。

ドブリン軍団の先頭も、ちょうど部屋の向こう側にたどり着いていたらしい。


水の上に掛かった百メートルの桟橋の此岸と彼岸で対峙する。


『ウルガァァアァッ、ウラレルカァアァアァァァァァッ!』


拳を振り上げて威嚇してくるドブリンたち。

エトルアはここにきて怖気づいたのか、アロッホの腕にしがみついてくる。


「そ、それで、ここからどうするの?」

「とりあえず、ちょっと攻撃してみるか」


アロッホは左手を前に向ける。

メカアームの左腕も前に向いた。


バシュッ


弾丸が射出される。

直径一センチにも満たない鉛玉は亜音速で飛び、先頭にいたドブリンの頭に命中した。

ドブリンは頭から血を吹きながら倒れる。

もう一発、隣にいた奴の頭に撃ちこむ。

そのドブリンも倒れた。


騒いでいたドブリンたちが静まり返った。

ここまでナメクジを軽々と倒して、進んできたのだろう。敵は自分より弱いと思っているはずだ。

それがこうもあっさりと狩られては、気分は良くないに違いない。


エトルアが横から小声で聞いてくる。


「ねえ、この距離から一撃で倒せるのは凄いけど、もっと早く連射できない?」

「それは無理だ」


そもそも、連射できても意味がない。

千匹以上いるドブリンを全滅させるには、弾が足りない。

手持ちの弾丸は百発ぐらいしかない、ここで使っていいのはせいぜい十発ぐらい、残りは温存したい。


今の攻撃で判明したのは、ドブリンの強さは見かけ通りという事だ。

防御力も、反応速度も、アロッホの予想を上回っていない。

数が多い以外に、敵の持つアドバンテージはない。それを確認したかった。


一方、ドブリンたちは、遠距離では勝てないと悟ったか、接近戦に持ち込む事に決めたらしい。


『オオオオオオオオッ!』


雄たけびを上げて、突撃してくる。

そして、何かにはじかれたように数匹が桟橋から横に落ちた。


カエルだ。水中に潜んでいたカエルが、桟橋を渡るドブリンたちを横から舌で突き飛ばしたのだ。

ドブリンの中には泳げない者もいたのか、そのまま溺れて沈んでいく。

だが、半数ぐらいは泳いで桟橋に戻ってくる。


『ウテェ!』


後方からドブリンアーチャーの一団が出てきた。

桟橋の上に並んで、小さな弓矢でカエルを攻撃し始める。


エトルアの言葉を信じるなら、あれは毒矢だ。小さく見えても、当たれば致命傷になるかもしれない。


「ここは私が出るわ。ドラゴンの力で一掃するわよ」


エトルアは強がりを言いながらも前に出る。

カエルが一方的に攻撃を受けるのを、見ていられなかったのか。

羽織ったままだったアロッホの上着を脱ぎ棄てると、ドラゴンの姿に戻った。


『ガァァアァッ!』


エトルアは口から火を吐きながら、桟橋の上を走りドブリンたちに突撃する。

ドブリンたちは壁を作って応戦する。

ドブリンアーチャーが薙ぎ払われれば、戦線が維持できないと分かっているのか。


「……見えない」


アロッホは忸怩たる思いでつぶやく。

ドラゴン化したエトルアが邪魔で、その向こう側が見えない。この狭い道の上で戦うことにしたのは失敗だったかもしれない。


しかもエトルアはドブリンの近接部隊に足止めされている。

炎を吐いて牽制し、尻尾で殴り、一匹ずつ水の中に叩き落としながら前に進もうとしているようだが、その歩みは牛のように遅い。


仕方ないので、アロッホは錬金爆弾を投げることにする。


使うのは、錬金爆弾、コラスィアネモス。

風の魔術を誘発させ、突風で周囲の物を吹き飛ばす。


エトルアの頭上を越えるように放り込んだ錬金爆弾は、狙い通り桟橋の上で発動した。

ドブリンアーチャーたちが百匹ほど、まとめて吹き飛ばされて水に落ちる。


『ススメェッ!』


ドブリン達はひるむことなく、続々と前に進んでくる。

ドブリンアーチャーも追加が入ったのか、今度は、アロッホの方に矢が飛んでくる。

もちろん、被弾率が高いのはエトルアだった。


『ギッ、グィッ、ギィィィィィィッ!』


エトルアが奇怪な悲鳴を上げる。

後衛のドブリンアーチャーの攻撃を受けたのだ。

しかも毒矢だ。赤かった皮膚が少しずつ紫色に代わっていく。


「おい、エトルア、なんか不味いぞ。一旦下がれ」


アロッホが呼びかけると、エトルアは後ろ歩きで戻って来た。

だがドブリンたちも同じ速度で近づいてくる。

しかもドブリンアーチャーの攻撃により、カエルも倒されたようだ。


「この部屋では、もう戦えない、一旦、後方に下がるぞ!」


アロッホは、二つ目の風爆弾を遠投してドブリンアーチャーを蹴散らしてから、エトルアの前に出た。

メカアームの右腕、ヒートブレードが赤熱する。


右腕を一閃、アロッホに襲い掛かろうとしていたドブリンが、首から血を流しながら倒れ、水に落下していく。


『ヒルムナーッ!』


ドブリンは恐れる事なく突っ込んでくる。

しかし、メカアームの攻撃は全て一撃必殺。ドブリンなど敵ではない。

しかも敵ドブリンは、一度落水した時に武器を手放したのか素手。

アロッホには触れる事すらできない。


しかし、ドブリン軍団も、倒れたドブリンを踏み越えながら、さらに前進してくる。

数の差が尋常ではない。

後ろから新たに来たドブリンたちはしっかり棍棒を持っている。こちらが相手では無傷で無双できそうにない。


補給路を断つ方法は一つしかない。

左手で次の錬金爆弾を投げる


火炎爆弾、インフェルノフロガ。

灼熱の炎で全てを焼き尽くす。


もちろん範囲内のドブリンは即死だが、アロッホが破壊したかったのは桟橋だ。

木でできた足場は跡形もなく消し飛んだ。

効果範囲の外の足場も、延焼して燃え広がっていく。


『ガァ、ガガガガァ?』

「え? 何か言った?」


エトルアが何か叫んでいるが、ドラゴン状態で言われてもわからない。

たぶん、ダンジョンを破壊した事に抗議しているのだろう。

気持ちはわかる。


しかし、道を塞いで時間が稼げるなら、それでいいではないか。

むしろ魔力さえ回収できているなら、ダンジョンの通路や入り口など、さっさと塞いでしまうべきでは?


もう、ドブリンたちがダンジョンの奥に進もうとすれば、自分の意思で水に入り、泳いでこの部屋を渡るしかない。

武器を持って奥に入ることは不可能。

これで、駅長室が落とされ可能性はゼロに近くなった。



ダンジョンの戦闘ってこんなんで良かったんだろうか?

まあ、防衛はできているし別にいいか

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