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後片付け


帝国軍人達が帰ってから、既に二日が過ぎていた。


アロッホ達は、駅長室に集まっていた。

全員が疲れた顔をしている。


「じゃあ、状況を確認しましょうか……」


エトルアが言いながら、ダンジョン端末を動かす。


「まず、突入してきたドブリンの数は、三万以上、六万以下。多すぎる上に、カマキリの攻撃でグチャグチャになっているから、正確な数を数える事は不可能よ」

「結構多かったな。前に来たドブリンだって、千よりは多かっただろうけど……。帝国は何を考えてるんだ?」


アロッホは困惑するしかない。

あれは野生のドブリンを集めたというわけではないだろう。

まさか、ドブリンを養殖するなんて……。

そもそも、最初にダンジョンに襲ってきたあのドブリンの群れ、あれも帝国が関係していたのだろうか?

カルナが聞く。


「あの、侵入者って魔力に変換されるんですよね? 撃退という結果があっての話ですけど、多ければ多いほど、得したことになるのでは?」

「そうね。全部の片づけが終わった跡なら、そう思えるかもしれないわね……」


エトルアは大きなため息をついた。


現時点では、片づけは終わっていない。

というか、始まってすらいない。

どこから手を付けていいかわからないから、とりあえず被害状況を確認してリストを作ろうとしているけれど、それすら終わっていない。


ウィノーラが言う。


「あの巨大カマキリはやられちゃったけど、大丈夫なの?」

「ああいうのは、アップキープが来れば復活するから気にしなくていいわ……」


もちろん、片づけが終わらなければアップキープも来ない。

戦力の回復もダンジョンの拡張もできない。


「で? ドブリンゾンビが急におかしくなった理由、わかった?」

「理由は調べなくてもわかってるよ。帝国軍人が持っていた未知の薬品が原因だ」


あんな方法でドブリンを操るという考えはなかった。

このダンジョンのドブリンゾンビは、エトルアの言うことに従うから、薬品で暴走させるなどという発想は必要ない。

それゆえの盲点だったかもしれない。


「対策は?」

「何も思いつかないな。成分の分析はあと三日ぐらいで終わる。ただ、効果範囲と有効期限がはっきりしてないから、この駅の墓地はしばらく使わない方がいいと思う」

「そうね……」


まだ薬品の影響が残っているなら、作業をしているドブリンゾンビがおかしくなる可能性がある。


「入口直ぐの部屋でも、同じ薬が使われてたよね。あそこの片づけはどうするの?」


入口に陣取った巨大カマキリが片っ端からドブリンを狩ったせいで、死体の数はあの部屋が一番多い。

その片付けにドブリンゾンビを使えないというのは、致命的だった。


人力でやるとしても、アップキープの自動処理に任せるとしても、時間がかかるだろう。

さらに、この駅の墓地が使えないとなれば、ダンジョン内の死体は地下鉄で他の駅に運ぶしかない。

必要な手間を考えると、気が遠くなりそうだった。


「これは、ドブリンゾンビ以外の労働力を確保しないとダメかしら?」

「都合よくそんなものが手に入るかな……」


鳥や蜘蛛も、まだ手に入っていない。

どちらにしても、片づけが終わらなければ、どうにもならない。


「まあ、どちらかと言うと、ドブリンゾンビの訓練が全部無駄になるかもしれないって方が痛いわね……巨大カマキリもやられたし、このダンジョン、全然戦力が足りないんじゃないかしら?」

「マンティコア・マンティスは、十分強いでしょ。私でも勝てるか怪しいし……」


ウィノーラが言うと、エトルアはにらみつける。


「それよ! あんたが勝てそうな時点でダメじゃないの。あんたと同じ強さの魔術師が何人も来たらどうするわけ?」

「王国の宮廷魔術師を全員投入されたりしない限り、大丈夫だと思うけど……」

「どうかしらね。少しずつ王都に近づいてるみたいだし、それも時間の問題よ」


「あの、王国と帝国、二つの国を同時に敵に回すのは、よくないと思うんですけど」


カルナの言う事も、もっともだ。

そして今回の件で、帝国側と敵対する事はほぼ確定した。


「戦力の事を棚上げするとしても、できれば王都は行きたくないんだよな……誰に会うかわかった物じゃないし」

「だよね……この調子で進まれると、私の実家とかに近い所にも駅ができそうだし……」


ウィノーラも頷く。

今のこの状況では、仲がいい人にも仲が悪い人にも会いたくない。


いっそ、帝国の中枢に直行してくれたりしないか。


アロッホとしては、王国と帝国、どちらにつくかと言われたらやはり王国だ。

確かに王都は追放されたが、出身国の滅亡を願うほど恨んでいるわけでもない。

このまま帝国側に駅を増やして、少し戦力を削るぐらいの感じで行けたらいいな、と思っているのだが……。


「どこに駅ができるかは、選びようがないわね……。せめて予測ぐらいはしたいけど、難しいと思うわ」


地図さえ入手できない状況だ。


「それで? 後片付けはどうするんだ?」

「そうね。とりあえず、薬が使われなかった部屋の死体を回収する所から始めるしかないわね」


エトルアは言って、ため息をつく。


「実はね、まだ侵入者が残ってるの」

「……え?」

「ドブリンが、たぶん二千匹ぐらい」


エトルアは何でもない事のように言うが、大事だ。

カルナが慌てだす。


「は、初めて聞きましたよ。それ、マズいですよね。私、普通にダンジョンの中を出歩いてましたよ!」

「ああ。シャッターで閉じ込めているから大丈夫よ。ただ、放っておくわけにもいかないから……ウィノーラ、場所を教えるから片付けておいて」

「私が? ……まあ、他にいないか」


それで決まりかけた所で、アロッホが口を挟む。


「待った。そのドブリン、生け捕りにできないか?」

「生け捕り? 何かに使うの?」

「帝国が使った薬を再現出来たら、効果を実験したい。あと、薬の残留があればそのドブリンが反応するはずだから、カナリア代わりに使えるかもしれないだろ」

「なるほど。そういう考え方もあるわね。じゃあ、扱いはやっぱり保留にしましょう」


ようやく、立て直せそうな気配になって来た。


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