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地下鉄に揺られる事、およそ三時間。


『次はアイスマウンテン駅』


地下鉄は新たなダンジョンに到着した。

四人はホームに降りる。


「まずは駅長室を探すところから始めましょうか」


エトルアが先頭に立って階段を上がる。

階段を上がった先は、青系の色に塗られた通路だった。

キラキラした光を放つクリスタルのような柱が点在している。


「なんだか、他の所と雰囲気が違いますね」


カルナが気圧されたように言う。

アロッホはクリスタルに触れてみた。

ひんやりと冷たい。

エトルアも不安げにあたりを見回す。


「なんか寒いわね。こんどは氷系のダンジョンなのかしら?」

「暑い所の次は寒い所か、バリエーションは豊富だな……」


廊下を抜けると大部屋に出た。

森のような所で、地面には雪が積もっていた。

木々の間を、灰色のオオカミのような魔物がノソノソと歩いていた。

さほど強そうには見えないが、ゾンビを除けば初めての哺乳類系の魔物だ。


「お、オオカミですよ!」


カルナが怯えたように後ずさる。

辺境の村では、オオカミは村を危機に陥れる厄獣でもある。


「大丈夫よ。みんな私の配下だもの」


エトルアが前に出ると、オオカミたちも集まってくる。


「ほら、かわいいじゃない……、ちょっ、こら……服を引っ張るのはやめなさい! ベロベロ舐めるのもダメぇ……」


エトルアはオオカミたちにもみくちゃにされて戻ってきた。

生き物の相手をするのは難しい。



その後、毒沼の部屋や、迷路のようになった通路を通り抜けて、駅長室らしき場所にたどり着いた。


岩場のような所に、ログハウスがあって、その前にダンジョン端末の石が置いてある。

ダンジョン端末がある以上、ここが駅長室なのだろう。


「……なんで地下なのに小屋があるのかしら?」

「誰かの趣味じゃないか?」

「誰かって、誰の?」


アロッホは適当に答えただけだが、エトルアは悩んでいる。

カルナが言う。


「この前、ログハウスを作ったのは、エトルアさんですよね?」

「えっ? 私?」


駅長室の隣には、妙な部屋があった。

20メートル四方ほどの四角い部屋、中には何もない。

ただ、柔らかそうな土が一面に広がっている。


「これはが畑ね。作物を植えれば、数日で収穫できるようになるわ」

「そんな凄い物があるのか?」


錬金術でも数日で生える植物は作れる。

だが、食用には向いている物ではなかった。


「たぶん、魔力を大量に使うから、常に稼働させておくのは無理だと思うけど……」

「火山の魔力をもってしてもか?」

「魔力は、ダンジョンの成長が優先よ。そろそろ人間に見つかるのも時間の問題だと思うし、その前に少しでも拡張しておきたいもの」


アロッホは畑の利用法を考える。

今の所、食料についてはさほど困っていない。

ここで育てるような物があるとしたらギト草ぐらいか。

一か月近く人里に降りていないので、ホロム病がどうなっているのかはわからないが、マキアートに話を持ち掛ければ、あるだけ全部持って来いと言うに違いない。


「下手をすると、このダンジョンの入口のすぐ近くに町がある可能性だってあったのよ。魔力は無駄遣いできないわ」


今度は入口を捜すために、移動を始める。

入口付近には、テスラタワーの部屋や、溶岩部屋もちゃんと完備されていた。


そして、地上へと続く階段にたどり着いた。


「この外は、どうなってるんだ?」

「それがよくわからないの。映像で見た限りでは、なんか暗くて、あと白かったわ」

「天気が悪いのかな?」


詳しい事は、登ってみればわかるだろうと思ったので、アロッホ達は深く考えず階段を上り始めた。

だが階段は、やたらと長かった。



「ちょ、ちょっと休憩しませんか?」


階段を上り続けておよそ二時間。とうとうカルナが音を上げた。


「これは、無理をしない方が良くないか? 帰る時も同じ距離を降りなきゃいけないんだぞ」

「あと少しでつくかもしれないじゃない。諦めるのは早いわ」

「休憩には賛成」


エトルアは先に進む事を主張したが、ウィノーラも休憩に一票入れる。

結局、休憩することになった。


四人で階段に座ってサンドイッチを食べる。


「いくらなんでも階段が長すぎる。おかしくないか?」

「山の上にあるんじゃないでしょうか?」

「カステラ駅だってほとんど山みたいな物でしょう? アレより高い山なんてあるのかしら」

「ビルカルム峠なら、ありえるかも……」


ウィノーラは何か知っているらしい。


「ビルカルム峠ってどんなところなんだ?」

「一年中雪が積もってる山。バルトリー村から南に一日ぐらいの距離のはず」

「南なのに、雪が積もってるんですか?」

「氷系の魔物がいるらしい」


それでアロッホも思い出した。

ビルカルム峠は、年に一度錬金術師協会が遠征を出しているはずだ。

ヘルフロストなどの錬金爆弾の材料が確保できるのだという。


ヘルフロストもこの前使い切ってしまった。

できるなら、ここで材料を集めて置きたい。


「一休みしたら、もうちょっと頑張ってみようか」


アロッホが言うと、カルナとウィノーラはため息をつく。


登る事、さらに一時間、ようやく一行は階段を上り切った。

そこは雪国だった。

一面の銀世界。


ごうごうと音を立てて、冷たい風が吹き抜けていく。


エトルアが、うんざりしたように言う。


「……なんていうか、ダンジョンドラゴンに優しくない土地ね」


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