表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
36/76

ウィノーラの執心戦術3


とにかくアロッホの居場所を突き止めなければいけない。


それから数日間、ウィノーラはディスオルトの周囲の監視を続けた。

遠距離を監視する時は、魔術で作った鳥を飛ばす。

同じ部屋の中まで飛ばした事もあったのだが、ディスオルトは全く気付いた様子がなかった。


しばらくすると、王都の外に出ていたカーネルスが戻って来たが、めぼしい情報は何もなかった。


それどころか、ディスオルトたちは、アロッホが王都の中で、他の貴族に匿われていると思い込んでいるらしい。

荷物を盗んだのがアロッホを匿う貴族に違いない、というのがその根拠だ。


真犯人であるウィノーラは、もう見ていられなかった。

こいつらはダメだ。


敢えて対立派閥の方を監視してみる。


グラッセン公爵の派閥は、ディスオルト達、バラライム家と対立している。

ディスオルトも、グラッセン公爵を疑っているようであった。


対するグラッセン公爵はどうしているのかと言うと……どうやらウィノーラを支援しようと考えているらしい。

ただしそれは親切心ではない。

ディスオルトを妨害し、もしウィノーラが暗殺されたら、その時こそバラライム家を潰そうと画策しているようだった。


宮廷魔術師の審問が始まる前に王都を脱出しよう、ウィノーラは決意した。

さもなくば命が危ない。


それはそれとして、グラッセン派閥に属するモロトロス伯爵から興味深い話を得た。

モロトロスの領地ではホロム病が発生していたが、薬が市場に出回って助かったという。

薬の出どころはベルナス市。

謎の錬金術師がいるらしい。


ディスオルトは、アロッホがベルナス市の方に逃げたと思っていたようだ。

そしてベルナス市には謎の錬金術師が。

これは、もしかするともしかするのではないか。


ウィノーラはベルナス市周辺の地図を入手した。

地図は特別書庫に置いてあったのを書き写しただけなので正確性に欠けるが、これで十分だろう。


だが、まだ動くには早かった。

王都を離れてしまえば、情報の入手は困難になる。

なにか確定的な情報が欲しい。

そして、王都脱出は、宮廷魔術師の審問の日付の、ギリギリまで引き伸ばしたい。

追跡を避けるためにもだ。


アロッホの居場所とは全く関係ないが、ディスオルトは質のいい魔石をいくつも集めていた。

宮廷魔術師になったら、新しい杖を作るつもりなのだろう。

これは慰謝料代わりに貰っていくことにした。


さて、審問まで一週間に迫った頃に、モロトロス公爵を経由して、確定的な情報がもたらされた。

謎の錬金術師の正体はアロッホで間違いないというのだ。

しかも、かなりの用心をして隠れているらしい


届いた報告書の正確な文章を確認したかったが、暗号はさすがに読めない。

こうなれば、報告者であるメルワーレという女に会って直接聞きだすしかない。

ウィノーラは馬車を手配し、アロッホの荷物を乗せてベルナス市へと向かった。


ベルナス市に入った途端、メルワーレに目をつけられた。

メルワーレはマキアートの薬屋の近くの建物の屋根の上に張り込んでいた。

アロッホが姿を表すのを待っているようだ。

こちらから声をかけるわけにもいかず、ウィノーラはメルワーレの後方の建物の屋根の上に陣取った。。


ここからどうしようかと迷っているうちに、成り行きで子どもの恐喝事件を目撃して、なんとなく勢いで飛び出してしまった。

恐喝犯を殺すかどうかは、ちょっと迷った。

結局殺したが。


状況が決定的になっても隠れているメルワーレを引っ張り出す事には成功した物の、一歩間違えば今後の行動が制限される可能性があった。

わりと賭けだった。


メルワーレから情報を引き出すのは時間がかかりそうだった。

一緒に食事をすることになり、酔わせたまでは良かったが、さすがに仕事上の秘密をベラベラしゃべったりはしてくれない。

しかも、勝手に酔いつぶれて寝てしまったたので、ウィノーラが部屋まで担いで運ぶ羽目になった。


だが、部屋に入った時に書き物机を見てふと気づく。

もしかして、この部屋のどこかに、報告書の下書きがあるのではないか?


部屋中を探した挙句、棚の裏にまとめて隠してあるのを見つけた。


「もしかして、本人に会う必要はなかったかな……」


これなら、本人がいない時にこの部屋に忍び込めば目的を果たせただろう。

文章だけではなく簡単な地図もあって、小屋の位置が書かれていた。


ウィノーラは、それらの情報を頭に叩きこむと宿屋を飛び出し、そのままメルワーレが見つけた小屋へと向かった。

到着したのは明け方ごろ。

一晩寝ていないせいで頭にもやがかかっているような気がしたが、あと少しでアロッホに会えると思うと胸がドキドキして溜まらない気分だった。


メルワーレが眠らされたという茂みを見つける。

これは知っている。

錬金術で作り出した特殊な植物で、植えると半日で茂みに成長する物だ。

アロッホは、王都の庭師に注文されて、これをよく作成していたらしい。


アロッホは、メルワーレを罠に誘導するために、わざとここに茂みを用意したに違いない。

しかし、罠は何もない所から生えてきたりはしない。

丸太小屋もだ。


この小屋は木を使って作られているが、周囲の木を伐採した様子はない。

つまり、材料がどこかから運ばれてきたのだ。

どこかに大人数が通った跡があって、そこが道になっているのではないか。


もちろん、ここまで用心しておいて、その道を隠さないという事はないだろうが……。

アロッホはどうやって道を隠すだろう。

原始的な手段を用いていたなら、メルワーレに発見されたに違いない。

逆に、メルワーレが気付かなかったという事は、同じく、錬金植物を使った可能性が高い。


ウィノーラは、用意していた洗面器を取り出すと、小屋の中にあった水を張った。これが画面の代わりだ。

魔術の鳥を飛ばす。

川沿いを重点的に探して、同じ植物が大量に生えているのを見つけた。そこを中心に扇状に捜索して、別の丸太小屋を発見。

こちらは、少し大きめだ。


この周辺でも木が切り倒された跡が見つからないのは気になったが、とりあえず鳥を小屋に侵入させる。


小屋の中には二つの部屋があった。

一つ目の部屋は何もない。

二つ目の部屋は、ただ下へと続く階段があるだけだ。


地下に何か秘密があるのかと鳥を進めたら、何も見えなくなった。

通信が妨害されている。

ただの地下施設ではない。魔術的な防御が施された要塞だ。


いくらなんでも、アロッホが一人でここまで用意できるわけがない。

ウィノーラは訝しがりながらも、とにかくその地下施設に直接侵入することにした。



同じ頃、メルワーレが追いかけて来たが、一つ目の小屋まで来た時には、すでにウィノーラは移動した後だった。



ウィノーラは小屋の地下へと足を進める。

長すぎる階段を最後まで降りて、不可思議な照明が灯る廊下を見た。

地下なのに、妙に明るい。

もちろん自分が知っている魔術の明かりとも違う。


これで確信できた。


これはダンジョンだ。

ダンジョンドラゴンは、30年ほど前に絶滅したと聞いたことがあるが、まだ生き残りがいたのだろう。

まさかダンジョンはさすがに予想していなかった。


「アロッホ……もしかして闇落ちしてない?」


とりあえず、ウィノーラはアロッホを殴りに行くことにした。

ダンジョンに踏み込む。


廊下の中央に巨大ナメクジがいて、進路を塞いで威嚇してきたが、それは一撃で吹き飛ばした。


どっちが闇落ちしているのかは微妙なところ


闇落ちって言うか病み落ちでは

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ