【第三章】あらすじ・登場人物
<あらすじ>
山中の隠れ家にたどり着いたオリヴィアは、クロエと名乗る少女に出会う。クロエの笑顔に、不意にドロシーを思い出したオリヴィアは、すぐにクロエと打ち解ける。
オリヴィアも、オリヴィアの母・フェリシアと同じ風を操る能力があるはずだ──クロエがそう言った瞬間、ルークが冷ややかな言葉を浴びせる。
オリヴィアは魔導士と人間との混血であり、魔力の欠片もないリブラ家の面汚しだと、ルークは言う。ルークの嫌悪感を見て、オリヴィアは「どこに行っても自身は異物なのか」と唇をかみしめる。
遅れて無事にたどり着いたレナードに呼び出され、オリヴィアはレナードから自身の出生について知る。
魔導士の母と人間の父の間に生まれたのがオリヴィアだった。人間の血は魔導士の力をかき消すため、あってはならないはずだった契り──その末に生まれた彼女は、魔力を持たないのだという。
レナードは、そうであっても、オリヴィアの存在は魔導士にとって必要なものだと語った。直系一族の末裔としてのその血を絶やすわけにはいかない。「お前の事は必ず守る。だから、協力してほしい」そう語るレナードに、オリヴィアは救いを求めるように「隊長」と呼んだのだった。
暫くののち、オリヴィアはクロエの仕事の護衛としてフランの村へ赴く。クロエは傷を癒す力を持っており、医師のいないこの村で定期的に診察を行っていた。魔導士であるレジスタンスの者達を、村人たちは黙認し受け入れているのだ。
同行するレナードとアルフレッドは、父子のように仲が良く、オリヴィアは不意に孤児院の院長先生を思いだしていた。
クロエが仕事をこなす間はすべきこともなく、アルフレッドの強い希望で村の広場へと向かう。隊商という、小さな村々を回る商人の集団が来ているのだという。
広場の様子を眺めていたオリヴィアに、レナードは不意に口を開く。かつて内乱があったというその名残が、村の周囲には残っていた。
レジスタンスは、その魔力を振るうことを厭わず国と立ち向かっている。国は、魔導士の言葉に耳を傾けない──どちらの立場も経験して、どちらの気持ちも痛いほど気持ちが分かる。オリヴィアは、決意を新たにレジスタンスの一員として生きるのだった。
オリヴィアがレジスタンスに入って二月が経とうとする頃、見慣れない男が隠れ家へとやってくる。イアンと名乗った青年は、「サイラスが捕らえられた」という報告を持ってくる。
サイラスとは、レジスタンスが王都へ放っていた密偵の男だ。軍部へ入り込み、主にリチャード王と、参謀であるブライアンの動きを見張っていたが、ブライアンに存在を気付かれてしまったのだという──。
レナードは、即座に王都へサイラスの救出に向かうことを決断する。
<登場人物>
【オリヴィア・ウェイバリー】
直系一族の一つ、リブラ家の末裔だが、人間との混血のため、魔力を持たない。
少女なりの決意を新たに、魔導士としてレジスタンスに身を置く。
【レナード】
レジスタンスの隊長。
隠れ家にてオリヴィアの出生を語る。
【ルーク】
混血であるオリヴィアに、強い嫌悪感を見せる。
【クロエ・シェラタン】
オリヴィアとほぼ同い年で、魔導士の少女。傷を癒す力を持ち、フランの村では医者の代わりとして働いている。
【アルフレッド・ハイドラ】
直系一族の一つ、ハイドラ家の末裔の少年。強すぎる魔力故に家族にすら恐れられ、レジスタンスによって保護された過去を持つ。
【イアン】
密偵として放ったサイラスとの連絡役として、王都に送り込まれていた。サイラスの消息をレナードに伝えるため、隠れ家まで戻ってきた。




