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1話

ファニー・ロジック第二皇女、彼女は珍しく魔法を使える。

ファニーは愛する国と家族のために力を振るうが、精神をすり減らし、感情に左右される彼女の魔法では助けを出すにも難しい。


(偉大なる師が必要だわ。)


ファニーは父と母に珍しく我儘を言い、自身で調べあげた情報を元に、城を飛び出した。

乗馬は慣れっこだったので、そんなに酷なことではなく、雨風が吹き荒れようとも、その意志は揺らがなかった。


向かうは"賢者の森"と呼ばれる森の中。

今も尚存命ならば200を超える大賢者アレン・バルバルドの家だ。


大賢者だと言うのに、城へは顔を出さず、戦争が起きても出てこないので、噂では亡くなったのだとか、存在がおとぎ話だとか言われている存在だ。

しかしファニーは信じていた。

まだ16程の少女だからなのか、夢が捨てられないでいたのかもしれない。


(火のない所に煙は立たないわ!居るのよ…!)


焦る気持ちを抑えきれずに馬を飛ばせば、馬は森の手前でけたたましく悲鳴を上げて白目を向いた。


(やってしまったわ!)


空中に放り投げられ、地面に落ちたらどれほど痛いだろうと見やれば、そこに人影が見えた。


(ぶつかるっ!)


忠告の声を出そうにも、吹き飛ばされる衝撃が強すぎて声が出ない。

強く強く目をつぶるが、巨大でいて柔らかいクッションにぶつかるような感覚がして、なんの衝撃も受けなかった。


ちらり、と目を開けるとそれは先にいた人の胸ぐらいの高さで、もしかして受け止められたのかと思っていた時、ドサりと雑に落とされた。


「いったぁ〜い!」

「僕がいなかったらそれの数千倍は痛かった筈だ、感謝しろ」


それでも下ろし方というものがあるだろうと思う。

そこでふと不思議になり、理解したファニーは目を輝かせた。


「あなた!大賢者アレン・バルバルドでしょう?」

「だったら何…?」


当初の目的を忘れるほどファニーは馬鹿じゃない。

すぐに立ち上がり仁王立ちになる。


「私を弟子にしなさい」

「なんて高圧的な態度の弟子希望者なんだ。僕は生まれて初めて見たよ。224年生きて初めてだ、だがしかし、断らせてもらう」

「ちょっと!なんでよ」

「逆に何でそれで良いよって言われると思ってるの?」

「それは…」


それはファニーが皇女だからだ。

皇女であるファニーにとって、手に入らないものは無い。

我儘を言ったことはないが、決まって父と母は「欲しい物ない?」と甘やかしてくれていた。

今回はそんなファニーが珍しく「欲しい!」と言ったのだ。

「師匠が欲しいから探しに行く!」と。

そして見つけたものは全て手に入れていた。

見つけたら弟子にしてと頼み、承諾されるだろうと思っていたのだ。


「私はファニー・ロジック第二皇女。断る理由は無いでしょう?皇女よ?立場が違うわ」


家紋入りのローブをチラつかせて微笑む。名乗るだけで敬われ、身なりのいい侯爵や名のある騎士が求婚する。美しい金の髪に、魔力を帯びた赤の瞳、完璧なプロモーションである。

しかしアレンは深くため息をついて人差し指をファニーに突きつけた。


「理由ならいくつかある。1つ、馬を殺すような乱暴な人はそばにいて欲しくない。2つ、ぶっ飛ばされて自分で対処出来ない魔法使いは総じてドアホだから面倒。3つ、お礼も言えないやつとは仲良くなりたくない。4つ、立場を一番わかってない。5つ、高圧的、人にものを頼む態度じゃない。6つ、僕は王家とは一切の交流をやめてる。7つ、もし来たとしても君の生きる環境はない。8つ!」

「多い多い!多すぎるわよ!」


まだまだあるぞと言いそうなアレンの言葉を遮り、ファニーはギロりと睨みつけた。


「この森開拓して平にするわよ…?」

「今度は脅しかい皇女様、随分と我儘だね」

「私は我儘なんて言ってないわ!」

「充分我儘だと思うけどな」


目の前の男、アレンは相変わらず変わりもしない呆れたような表情のままだ。


「手に入らないない物を権力と脅しで手に入れてきたんだろう?我儘皇女様」

「今回がたまたまよ!」

「どうだかなー」

「いいじゃない!減らないでしょ!ケチ!」

「増えるから嫌なんだよ」

「弟子にしてよ!弟子にしてほしいのよ!」


しかしアレンも何度言っても引き下がらないファニーに痺れを切らしたのか、深すぎるため息をついて頭を抱えた。


「なら、条件付きでね、1つ、僕は君の生活の面倒は一切見ない。2つ、僕が認めるまで弟子とは名乗らないこと。3つ、君はファニーとだけ名乗り皇女だとかロジックだとか言わない。4つ、僕の家に入るな。5つ、僕の顔に泥を塗るような事をしたら破門する、2度と取らない。6つ、僕の命令に従え、歯向かえば破門。以上」

「多いわよ!」

「こんな暴れザルに教えてやるって言うんだから感謝しろ。嫌なら取らない。帰ってもらう」


ぐぬぬと歯を食いしばって睨むが、アレンは涼しい顔で見下ろしていた。


「望むところよ!アナタに認められて跪かせてやるわ!」

「命令その1、僕のことはアレンと呼べ。アナタでもお前でもない。アレン」

「……アレン」

「利口な猿だね。飼い慣らしてあげよう」


アレンは面白い玩具でも見つけたかのように不気味に笑った。

そんな長くないですが1、2話ではないので連載という形で。

2日おき更新にします。

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