表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/8

6エルフの里


「と、いうことでエルフの里へ行こう ! 」


青痣と腫れあがった顔で出発の号令をかける、ルークは全員の顔を見渡して言った。


「儂んとこのは若いもん2人連れて行が、ルーク坊その顔はどうにかならんかのぉ。おいマリィ治したれぇ」


進み出たのはスレンダー、筋肉がのった体つき。色気を放つ女性だった。男女問わず目を引く。赤いローブから見えるのは、真っ赤な頭髪を編み込んだ髪に鋭い眼差しのクールな美女。手には杖を持っており、杖の頭には青い水晶がはめ込まれている。


フードをとりながら彼女は進み出ると、小さな角が2本側頭部から生えていた。ルークに青い水晶を近づけると、小さく何かを呟いた。すると、あっという間に傷が治ってしまった。


「よしよし、このマリィはうち唯一の治癒師じゃ。くれぐれも手を出すんじゃないぞぉ、その隣に立っとる男がマルコといってなマリィの婚約者じゃ。マルコはうちでも最強の棒術師じゃから手を出したら生きては居れんのぉや、ダ―ッハッハッハ、ィ―ヒヒ。おいルーク坊、おもしれぇから手出してみなぁ。ブッ、ププププ」


ミノタウロス族の族長はルークがボコられている間笑いっぱなしだった。またルークがボコられることを想像しながら笑っているようだった。ルークは拳を固めて、顔を真っ赤にして怒っていたが。ここにいるミノタウロスには誰にも勝てないので、背中を向けていじけてしまった。


「は―い、そんくらいにしてください。まだオークがそこまで来てるかもしれないから早く出発しましょう。ミノタウロス族の皆さんよろしくお願いします」


手を叩きながら若い兄ちゃんが場を仕切ってくれた。


それから1時間。岩山を登り、切り立った崖は崩れやすい足場をひやひやしながら進む。途中サソリや蛇が出たが、マルコが一撃で潰してくれた。臨時食料と喜んでいたのは、衝撃だった。岩場を抜けて峠を越えると森が見えてきた。深く暗い森は、背の高い木と密集した下草で入る者を拒んでいた。


エルフが先導役となって入っていくと、霧が出てきた。1m先も見えない状況でお互いの服を掴み、ムカデリレーのように一列になって歩いた。


「は―い着きましたよっと」


着いたと言ったが、目の前には大きな岩が2つ。その大きな岩に挟まれるようにして四角い墓石のような石があった。ルークはその石板に触れると四角い墓石の文字が光始めた。


「いま、里に連絡を取ったから時期に迎えがくると思うよ―」

「若様、いいのですか ? 里にミノタウロス族はともかく人間を招き入れて問題になりますよ、ここは港町まで送るだけの方が人間と我々両方にとって良いと思いますけど。下手をするとこの人たち殺されますよ」


ルークのお目付け役のミームが顔を顰めてルークに詰め寄った。エルフ族だけあって美人だ、いや美少女と言っていいほどの童顔だった。クリーム色の髪を後ろで三つ編みにして纏めている。


「元老院の長老たちが何て言うか、考えただけで恐ろしい。怒られるなら若様一人で怒られてくださいよ」


線の細いエンダはルークが美青年としたら、その弟で美少年だろう。エルフは全員美男美女なのだろうか、答えを見たら殺されそうで帰りたい。


「え―ここまで来たら皆で長老に会って行ってもらおうよ…(その方が面白いし)」


小声で何か言ったが聞き取れなかった。エンダとミームはため息を一つ、そして首を横に振った。

そんな話をしていると、サ―と霧が晴れて行き。岩と墓石が消えた。消えた先には壁と入口が見える。上を見上げると、200mはあるだろうか。壁とその上に木造の建物が見える。石の壁は苔に覆われ一面緑だ。丸太を組んで作られた入口が内側に開き、中から武装したエルフが出てきた。


「若様、こちらが若様を助けた人間ですか ? 元老院会が大樹の円卓の間で待っています。ご同行願えますね」

「ああ、石碑で伝えた通りだ」


ルークが鷹揚に応えている姿に、吹き出しそうになった。なんとか我慢をして、言われるまま門を潜ると、民家は見当たらなかった。壁から出て目につくのは木。その木の根元には階段が作られており、地下室につながっているようだ。不思議に思ってルークに聞いてみると、得意げな顔で説明してくれた。


なんでもエルフは木の根元を掘り返して、木の真下に家を作る。木が吸い上げた水を生活用水として利用し、下水は木に吸収させる。その時、マナを混ぜることで木は栄養とマナで大きく成長する。それを何十年何百年とすると、目の前に見渡す限りの大樹の森が出来上がるというわけだ。一本がビル一個分の大きさで視界に入るのはせいぜい十数本、全体では何百本という巨木に住むエルフは真に森の民だろう。


きょろきょろしながら30分近く歩いた。途中、自宅の木を一部店にしている商店街を通り抜けると、ひと際大きな木が視界一杯に広がった。学校のグラウンド程度の木で、東京のスカイツリーを本物の木で再現したような高さだった。


「3階だ、入れ」


一階はソファ―や受付があり、床には毛皮が敷かれていた。全てが木から削り出されている。壁際に木を削って作られた階段を上ると、大きな扉のある踊り場にでた。さらに上へ、3階の会議室へと通された。


元老院会の長老が7人円卓についていた。全員20歳にも満たない顔だが、雰囲気は歴戦の風格を漂わせていた。


「君たちが内のバカ息子を助けてくれたのかな。私は元老院会、第一議席ローラン」


第一議席から第七議席までの紹介が終わると、我々も自己紹介を始める


「ロイスです」「エミリアよ」


「私はザンバテールで冒険者をしている、カインと言います」


若い兄ちゃんの名前を初めて聞いた。丁寧なお辞儀をして周りを見回す余裕がある。


「ラダ…という」


ローブのフードを深くかぶった男はダーラと名乗った。フードをとると丸めた頭に幾何学模様の入れ墨が入っている。


「私は、ローズ ! ザンバテールの冒険者組合で受付嬢をしてたわ」


分厚い眼鏡にぼさぼさの頭を二つ結びにした若い娘は、一歩前に出てお辞儀をするとまた元の位置へと戻った。


「ガンズ・ビーンじゃ」「マリー・ビーンよ」


老夫婦がそれぞれ名乗りを挙げると、椅子を勧められた。


「それで、ルークはミノタウロス族と同盟を結べたのかな」

「はい ! 父上、こちらはミノタウロス族族長とその従者二名です」

「紹介に預かった、族長をしている10代目ミノタだ」


父上とよばれたエルフはどう見ても30代前半だった。そしてミノタウロス族長は襲名性だった。2人のミノタウロス族も会釈をしている。


「自己紹介も終わったところで、本題に入ろうと思う。今回ザンバテールを襲ったオーク族約2000に対して我々も兵を挙げようと思う。というのも、過去の因縁から彼奴等の狙いがこのエルフの里であるのは間違いないからだ。ザンバテールに拠点を築かれると後々まずいことになるから、今のうちに叩くというわけだ」


ロイスが手を挙げた


「何かね」

「たしかに…ザンバテールの住民だけど、なんで僕らが参加してるの ? 」

「君たち、とくにロイス君だったね。それが関係大ありなんだ、入ってくれ」


入ってきたのはカンナだった。眠たそうに入ってきた顔はつい2日前に別れた姿そのままだった。


「彼女は獣人討伐軍の将軍をしてもらっている」

「…ぇ…はぁ !? 」


久しぶりに会った彼女はエルフの里で将軍をしていました。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ