エピローグ その先の未来で
―あの戦いから8年後―
僕たちの世界には、空が戻ってきていた。
自由に飛べる大空、なんの恐怖もない、平和な空。
「きれいな青空だなぁ…」
僕は草むらに寝そべり、空を見上げる。
ゼロを倒したことにより、使徒も消滅した。ACFは解体となり、その一部の技術を航空自衛隊へ伝承した。
元来、使徒と戦うために開発されたフライトユニットは戦争の道具にならないよう、その全てが設計図と共に廃棄され、今は自力で空を飛べるものは7人しか存在しない。
そう、翼だけは消えなかった。
エクス曰く、「翼の能力は個人に与えられた特殊なもので、持ち主が最期の時を迎えた時、新しい命へと転生する。が、ゼロを倒した以上その機能も失われるであろう。つまり、今の7人が最後の所有者となる。」
だそうだ。
当の本人は「我の生きる時は終わった。」と言って僕の心の奥深くに眠ってしまった。もう恐らく目覚めることはないだろう。
「パパ~~」
草むらでまどろんでいると、聞きなれた子供の声が聞こえてきた。
「またここにいた。今日はお出かけの日だって言ってあったのに。」
「時間までのんびりしてただけじゃないか。由乃も横になったらどう?」
「あたしはいいわ、お洋服汚れちゃうし。」
「じゃああやが横になる~!」
戦いから4年後、専門学校を卒業し一般企業へと就職していたた僕は由乃と結婚した。
そして今は、3歳になる愛娘の彩と3人でアパート暮らしだ。
「ほ~ら、もう時間だよ。今日は久しぶりに一航戦のみんなが集まるんだから、遅れると梓さんに叱られるわよ?」
「それは勘弁。」
そう、今日は元一航戦での祝賀会が開かれるのだ。なんのかは全く知らされていないが…
「それでは、この度ご結婚となりました浜野桜…じゃなかった、有原桜さんを祝いましてーー乾杯!!」
カーン!とグラスがぶつかる。
「しかしまぁ、一航戦から3組目のカップルたぁ俺も年を取るわけだ。」
「もう30手前だからな、おっさん。」
「その言葉、そっくりそのままお前に返すぜ雅哉…。」
「僕だってもうすぐ…いや、そうでもないな…」
「ほらそこ、今日は桜を祝う会なんだぞ、お前たちの独り身を嘆く会じゃないんだからな。」
「分かってますよ隊長~。」
梓さんはというと、ACF解体後に結婚し今は2児の母だ。
「悠と由乃は、最初から分かってたけどよ。今はどうなんだ?」
「おかげさまで楽しいですよ、彩も元気ですし。」
「残されたのは、男子3人ってか~!なんだかよ。」
「あーそのことなんですけど。」
海斗がおずおずと手を上げる。全員の視線を浴びた海斗は龍一さんと雅哉さんから目をそらしながら続けた。
「俺、先月入籍しました…ごめんなさい、報告が遅れてしまって。」
「な…」
「なんだと……」
あの雅哉さんまでもがショックを受けていた。なんなんだろう、この結婚ラッシュは。
「あら、じゃあ今日は私と海斗のお祝い会ね。」
「そんな、俺はいいですよ。今日は師匠の結婚祝いで来てるんですから。」
「だが知ってしまったら、見過ごすわけにはいかないな。…ほらそこの二人、いつまでもほうけてないでシャキッとしろシャキッと。」
「雅哉、今日は飲み明かすぞ。」
「ああ、徹底的にな。」
「祝い酒ならともかく、ヤケ酒なら酔っ払っても面倒みませんよ?」
「由乃も厳しくなったなぁ。」
「あたしもお母さんですから。」
「しっかりして…、随分、面倒かけてんじゃないのか悠?」
「そ、そんなわけないじゃない…ですか…」
「なんでそんなキョドるんだよ。」
「いや、残業とかあって帰るの遅い日もあるんで…」
「別に苦労に思ったことはないですよ?せんぱ…悠がいつもあたしと彩のことを気にかけてくれてるの知ってますし、それに…帰るのが遅い日だって、一生懸命働いてきてくれてるわけですから。」
「…。」
「…。」
「だ、黙らないでくださいよ!ほら、悠もなんでそんな顔してるの!?」
「お前…いい嫁さんをもらったな。」
「それは間違いないですね。」
祝賀会が始まってから2時間ほど経ち、僕たち一家と桜は帰宅の途についていた。
「それにしても、桜も結婚かー。おめでとう。」
「あ、あらためて言わなくたっていいでしょ。」
「いやほら、幼馴染のこういうことって、やっぱ嬉しいもんじゃん?」
「そりゃあ、そうだけどさ…。それなら、あんた達の方がおめでとうよ。もう子供までいて。」
「そりゃどうも。」
「ねえ、一つ聞きたいんだけど。「翼」の話は、彩ちゃんにはしたの?」
「それは…」
と、いいかけたところで背中に彩を背負った由乃が割り込んできた。
「話はしてないです。今は「あの日」を「人が空を取り戻した日」なんて言って教科書にのるくらいになってますけど、別にあたしたちから話す必要はないかなって。」
そう、僕がゼロを倒したあの日は「空の日」として祝日になっている。当然、教科書には一航戦の名と共に掲載されており、彩がそのことを知るのも時間の問題ではあるのだが…
「いつか、彩がそのことを知って、あたしたちのことをもっと知りたいって思った時に全部話そうと思ってます。」
「そっか、そうよね。今の私達は普通の人、だもんね。」
「ああ。もう翼で空を飛ばなくてもいい。だって僕たちには、自由な空があるんだから。」
夜風がさぁっと吹き抜ける。まるで、僕らを空へと誘うように。
視線の先には、浜ノ宮の夜景が映る。あれを見たら、きっときれいなんだろうな…と思った僕は、思わず白銀の翼を広げていた。
「…一回だけ、飛んでみよう。」
「え?」
「桜、彩を頼んだよ。由乃、行くよ?」
「え?え、ちょっと待って…きゃっ」
僕は由乃をお姫様抱っこして、空へと羽ばたく。少し上がっただけで、夜景が一望出来る。
「昔、父さんが見せてくれた航空写真にも、こんなきれいな夜景があったよ。」
「きれいだね…それに、なんだか暖かい光。」
「いつか彩が全てを知った時、その時は僕と由乃でこの光を彩に見せよう。」
「そうだね、絶対。」
3分もしないうちに、地上へと降りたけど、空中での時間はとても長く感じた。久しぶりに飛んだからだろうか。
「ほら、帰るわよ?」
キィィィィィィンと甲高い音を立てて、僕たちの上を飛行機が飛んでいく。
それについていくように、僕らは歩き出す。
その先にある、未来と、自由な空を思いながら。
ようやく、ようやく完結しました!
ここまで長らく読んでいただいて、本当にありがとうございます。
拙い文章ではありましたが、書きたいことを書くというのはとても気持ちがいいものですね
かくいう私は、中学時代から何かとこのような文章を書くのが好きでした。
しかし、完結までさせたことがなかったので、今回が初の完結作品になります。
終わって早速ですが、いちおう新作のネタを考えております
定期更新はままならないですが、今後とも浦風晴斗をよろしくお願いいたします。




