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もう一度、僕たちの空を  作者: 浦風晴斗
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最終話(第21話) 未来

 ―水星(アクアスター)―が折れた、それは僕にとって想像もしていなかった出来事だった。

 いくらゼロが「赤の翼」の火力を剣に加えたとは言っても、「藍の翼」の防御能力を得た剣が折られるなんて…


「これでキミは二刀流を使えない。それでも、まだ足掻くって言うのかい?」


 二刀流は封じられ、精神力も残りわずかになってしまった。でも、ここで諦めたら…僕を信じて送ってくれた一航戦のみんな、今も戦っているACFのみんなを裏切ることになる。


「足掻くさ…ここで僕が諦めるわけにはいかないんだ…。お前を倒せるのは、僕しかいない!!」


「その自信は一体どこから湧いてくるのか…まあいい、どちらにせよキミはここで殺すよ。」


 ゼロが静かに一歩踏み出す。僕も立ち上がり、残された白雪(スノーホワイト)の柄を両手で握る。

 今の精神力では、白銀の翼(ホワイトネス)の能力はまともに発揮出来ないだろう。となると僕に出来ることは一つしかない。

 ―蒼天の翼(スターダスト)の能力だけで7色の翼に対抗する―

 それが、どれだけ無茶なことかは重々分かっている。白銀の翼(ホワイトネス)の能力を持ってしても倒せなかったゼロをどうやって倒すのか。今は深く考えている場合じゃない。


「うおおおおおおお!!」


 先手を切って僕はゼロに斬りかかる。こうなれば、ゼロを超えるスピードで追い込むしかない。


「やはり蒼天の翼(スターダスト)の持ち主なだけはある、ここまで追い込まれてもスピードだけは変わらないとは…でもね!」


 白雪(スノーホワイト)からの斬撃は全てゼロの剣に防がれてしまう。片手剣では隙間を縫うことも難しい。


「一撃の威力は足りないみたいだねぇ。それに…」


 僕の斬撃を悠々と躱したゼロは、反撃の一閃を放つ。それは僕の右腕を捉え、腕からは血が流れ落ちる。


「防御も薄い、スピードだけでボクを倒せるとでも?」


「それでも、やるしかない!」


「やれやれ…とんだ馬鹿だなキミは!!」


 ゼロの周囲に黒い玉が浮かぶ、合わせて玉に赤い光が灯る。

 緑×赤、砲撃強化型のビット攻撃が来るのは間違いない。僕は蒼天の翼(スターダスト)を展開し、一気に飛翔する。

 いくらゼロのビットとはいえ、僕に追いつくほどの速度は出せず、ビットと僕の距離は離れていく。

 僕に追いつこうと一列になって飛んでくるビット、僕はその瞬間を見逃さなかった。

 エンデュミオンに少しだけ赤の翼の能力を込め、引き金を引く。

 砲身から迸る青い光はゼロのビットをすべて飲み込み、消していく。


「まだやれる…!」


「へえ、まだそんな力を残していたとはね。伊達に白銀の翼(ホワイトネス)を覚醒させたわけじゃないか。」


 余裕の表情を浮かべるゼロ、だがその奥には若干の疲労が見え始めていた。

 ここまでくれば、時間を稼いでゼロを疲弊させるしか勝ち目はない。幸いにも少しだけならば白銀の翼(ホワイトネス)の能力を発揮できそうだ。

 白雪(スノーホワイト)に少しだけ橙の翼の能力を込める。これだけで斬撃の威力は少し上がり、刀身の硬さも増す。


 白銀の翼(ホワイトネス)を覚醒させても、大元である蒼天の翼(スターダスト)の能力を発揮させるのに精神力を消費しないのが利点だった。速さを維持したまま、能力を発動するタイミングを間違えなければ長く戦える。現に、戦いが始まってからもう30分近く経っている。


「案外粘り強いじゃないか。」


「ようやくこいつの使い方に慣れてきたからね。そっちこそ、少し疲れてきてるんじゃないのかな?」


「笑わせるね!」


 何度目かわからない鍔迫り合い。互いの剣は火花を散らしながら、それでも拮抗を保っている。

 ジリジリと、僕はゼロに迫っていく。そしてその距離があと数センチになったところで、僕はゼロの無防備な腹を思い切り蹴り飛ばした。


「ぐっ…」


 体勢を崩したゼロに向かって、僕はエンデュミオンを構え引き金を引く。

 赤の翼の能力が込められた魔力砲はゼロの左肩に直撃し、大きなダメージを与える。

 左肩をおさえるように立つゼロに、僕はソニックエッジで追撃する。


「左が使えなくたってねぇ!!」


 ゼロは放たれた斬撃を右腕の剣を振るうだけで防いでみせた。だけど、それは予想通りの行動だ。

 僕は急速旋回でゼロの後ろに回り込み、エンデュミオンの砲撃を背後から叩き込む。


「どうだ…っ」


「…よくもここまで!!」


 白い煙の中から、ゼロの手が伸びてきて、僕の首を掴んだ。

 さすがに絞める力は残されていないようだが、ダメージを受けている左腕で僕のことを掴み上げる。


「さあ、この状態からどう逃れる?」


 ゼロの右腕がゆらりと上がる。その手に握られている剣の切っ先は、僕の左腕を狙っていた。

 今ここで左腕が使えなくなると、剣を握れなくなり僕に勝ち目はない、かと言ってここで緑の翼の能力を展開させるには僕の精神力が少ない。


 でも、ここで諦めるくらいなら…!!


 僕は残された精神力を振り絞ってビットを6基展開させる。そこに赤と青の翼の能力を込め、一気に砲撃を繰り出した。

 さすがのゼロの回避を余儀なくされ、僕の首から手が離れる。蒼天の翼(スターダスト)を展開してゼロと距離をとるが、ビットを破壊して接近するゼロの動きの方が早かった。


「今のは驚いたよ、まさか自分ごと砲撃に巻き込むなんてね。」


「そうでもしなきゃ、離れてくれそうになかったからな。」


「でも、今度こそ限界なんじゃないかな?今の飛翔でも十分な速度は出ていなかっただろう?」


 確かに、最後のビット攻撃で消耗した精神力は、蒼天の翼(スターダスト)の速度をも低下させてしまった。


「長かった戦いもこれで終わりだ。」


 ゼロからの横一閃が、僕の左腕から右腕までを斬る。

 流れる血、痛みに耐えられず、僕はついに白雪(スノーホワイト)を落とす。

 そのまま前に倒れこみ、意識がはっきりしなくなっていく。


「さようなら、悠。」


 振り下ろされる剣、意識が朦朧としているからか、スローモーションに見える。


 目を閉じ、最期の時を待つ。


 そんな僕の脳裏に、外の様子が流れ込んできた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――

『こんなところで…っ!』


『海斗、おい!うぉぉぉぉ!』


 海斗と龍一さん、ずっと前線で戦い続けているのか…


『由乃、右から来るわ!』


『やらせません!』


 桜と由乃、後衛の要である二人も、前の方で必死に戦っている。


『どんな数で来たって、ここは通しませんよ!!!』


 機動防盾(フォートレス)で由乃・桜を中心に一航戦を守っている雅哉さん。顔には疲労が滲んでいる。


『悠はたった一人で戦っている、私たちがここで諦めては、帰ってきた悠に申し訳がつかん!生き残るんだ!!』


 梓さん、一人敵陣の奥深くに斬り込んで戦っている。その姿は戦姫と呼ぶにふさわしく凛々しい姿だ。


『そう、先輩は一人っきりで戦ってる!6人もいて、ただただやられるわけには行かないんだから!!』


 「大和」と「武蔵」から弩級の魔力砲が放たれる。それでもなお、使徒の進軍はとまらない。


 映像が切り替わる。そこには傷つきながらも懸命に戦い続けるACFの仲間たちが、そして勝利を信じて官邸で待つ総理の姿が映った。


 そうだ、苦しいのは僕だけじゃない。みんな苦しみながら、明日を掴むために戦っている。

 大きな空を、自由に駆け巡る時が訪れるのを信じて。


『悠、空は好きか?』


 この声は…父さん?


『これは父さんが昔撮った航空写真だ、綺麗だろう。いつか自分の眼でこの景色を見ることが出来る日が必ず来る。父さんはそう信じてる。』


白銀の翼(ホワイトネス)の能力は、全ての翼を包み込む、いわば母のような能力です。』


 聞き覚えのない女性の声、これはエクス達に翼を与えた神なんだろうか。


『大いなる闇が降りかかろうと、光はそれを晴らします。そう、闇を晴らす一筋の光、白雪(スノーホワイト)…。共に戦う仲間の意志を集め、あなたに力を貸すでしょう。』


 力を貸す…


『長きに渡ってしまったこの戦いを、終わらせる力を持っているのは悠、あなただけです。白銀の翼(ホワイトネス)白雪(スノーホワイト)の双方を持つあなたならきっと出来るはず…さあ、もう一度だけ立ち上がってごらんなさい。神のご加護があらんことを。』


――――――――――――――――――――――――――――――――――


 脳裏に流れ込んできた声や映像が全て消える。剣はまだ僕の体に触れていない。

 ―もう一度だけ、立ち上がる。―

 そう、その力をみんながくれた。


 振り下ろされた剣を、僕は素手で掴んで止めた。


「何っ…」


「みんな戦っているんだ…僕だけじゃない、みんなが。これまでもそうだった。」


 剣を掴んでいる左手からは血が滴るが、不思議と痛みはない。


「苦しいのは僕だけじゃないんだ、僕の後ろには、みんながいる。仲間たちが、力をくれる!!」


 足元に、巨大な白い魔方陣が展開される。それと同時に白銀の翼(ホワイトネス)白雪(スノーホワイト)が光輝く。

 光を纏った白雪(スノーホワイト)を振るうと、身体中の傷が癒えていき、精神力が回復していく。それでもなお、白雪(スノーホワイト)には魔力がこもっていく。


「全ての闇は僕が晴らす、これはそのための翼だ!!」


「どんな光でさえ、深淵の闇の中では無力になる!キミのその光、ボクが消してあげるよ!!」


 お互いの剣にこれまでにない魔力が投じられる。僕はさらに、全ての翼の能力を白雪(スノーホワイト)に込める。

 7色の翼が一つにまとまり、白雪(スノーホワイト)の刀身が虹色に光る。


「うおおおおおおお!」


「はあああああああ!」


 虹と闇がぶつかり合う。その衝撃は強固な建物を震わせるほど強いものだった。

 ここで押し負けるわけにはいかない、僕の背中は、みんなが支えてくれている。

 みんなから流れ込む、「意志の力」が無限に魔力を発生させる。


煌剣一閃(こうけんいっせん)、セイクリッド・ザンバーーー!!」


 両腕に力を込め、一歩踏み出す。白雪(スノーホワイト)はゼロの剣を弾き飛ばし、そのままゼロの身体を深々と斬り裂いた。

 大きく後ろにのけ反るゼロ、僕はその胸の中心をめがけて白雪(スノーホワイト)を突き刺す。

 周囲の時が一瞬止まったように思えた。

 血を流しながら、ゼロが倒れていく。その瞳に、力は残っていなかった。


「僕の…勝ちだ、ゼロ。」


「ふふふ、はははは、まさかここまでやるとはねぇ…今まで戦ってきた誰よりもキミは強かった。」


 ゼロの声は弱々しい。


「長い時を生きてきた中で、この星の空はとてもきれいだった。だからキミたち人類を滅亡させ、ここをボクたちの楽園にしたかった…。だがキミたちは抵抗し、そしてボクを倒してしまった。最後に聞きたい、キミたち人類の、その力の源はなんなのか。」


「人それぞれにある、想いだよ。」


「想い…」


「想いは人を強くする。お前も、それは目の当たりにしてきたんじゃないか?」


「確かに、キミは何度も強くなった。そこには想いがあったということなのか…感情を持たない使徒には到底無理な話だ。さて、そろそろ最期の時だ。」


 ゼロの体が少しずつ崩壊していく。


「その剣…黒焔(ブラックフレア)はキミにあげるよ。おめでとう、空はキミたちの元に帰ったよ。」


 ゼロはそう言い残し、消えていった。

 残されたのは、一本の剣。

 僕はその剣、黒焔(ブラックフレア)を拾い上げ、無線を繋ぐ。


「隊長、全て終わりました。ええ、今から帰投します。」


 こうして、長きに渡った人類と使徒の戦いは終わりを告げた。

ついに戦いが終わりました。エクスたちが成しえず、そして長い時をかけてようやくの終焉をみた空を巡る戦い。


最後の一騎打ちを描くには少し早すぎた展開だと反省しています。

21話で終わらせるなんて言わなければよかった…

残るはエピローグだけです。ここまで読んで頂き、本当にありがとうございます。

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