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もう一度、僕たちの空を  作者: 浦風晴斗
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第20話 自由の空へ(スカイ・ザ・フリーダム)

 午前10時、ACF本部の各隊舎に集結した全航空戦隊の隊員達。大規模作戦が決行されるという噂もあってか全員が緊張した面持ちで待機していた。

 そして、梓さんの放送が始まった…


「かねてより各航空戦隊に依頼していた探索任務、その遂行にむけて各人が努力してくれたことを心より感謝する。そして、ついに我らは使徒の本拠地を発見することができた。今こそ、この戦いに終止符を打ち、再び自由な空を取り戻す時だ!」


 各隊舎から歓声の声が上がる。


「だが、今後の戦いは本当に過酷なものになることが予想される。現に探索任務の中でも15人の隊員が命を落とす事態になった。よって、本作戦への参加は強制しない。前線に出ることに少しでも恐怖があるのなら、後衛からの援護をお願いしたい。作戦開始は3日後のヒトマルマルマルだ。明日、ヒトハチマルマルまでに作戦参加の有無を各隊長に伝えてほしい。最後になるが、一番大切なものは自分の命だ。それを守るために作戦に参加しないのは逃げることではない。以上だ。」


――――――――――――――――――――――――――――――――――


 そして、その日は来た。

 驚くことに、作戦参加を辞退した隊員は一人もいなかった。それだけ、この戦いに命を懸ける覚悟があるということなんだろうか。

 自由の空へスカイ・ザ・フリーダムと名付けられた最終決戦は、多段攻撃での作戦だった。四・五航戦が先に宮殿周囲の使徒に対し遠距離射撃を行い、ある程度数を減らす。その後二・三航戦が撃ち漏らした使徒や新たに出てくるであろう使徒を四・五航戦とともに抑える。一航戦の7名は二・三航戦とともに前進し、宮殿内部へ突入、ゼロを殲滅するという内容だった。

 まさにACFの総力をかけた戦いだ。


「湖畔への遠距離攻撃が始まりました。予想通り、周辺には小型の使徒が多く潜んでいました。」


「よし、二・三航戦には宮殿左右からの回り込みを指示、一航戦は正面から宮殿内部を目指す!総員、戦闘準備!!」


 一航戦のみんなが、一斉に翼を広げる。こうして、戦いの火蓋は切って落とされた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――


「だらぁっ!!」


 龍一さんが突出して使徒を倒していく。遠距離射撃によって数を減らしているはずなのに、まだかなりの数が生き残っていた。


「奴らも総力戦ってことか…海斗、しっかりついてこいよ!!」


「ええ、分かってますとも!!」


 海斗も龍一さんについて行きながら、懸命に使徒を倒していく。

 少し離れたところからは由乃の「大和」が極太の魔力砲を撃ち出し、空を赤く染めている。


「悠、前から3!その後ろから合計7体来てるわよ!」


 桜は「翡翠の翼(オーロラ)」の探知能力で全員の周囲に現れる使徒を解析し、ビットによる援護射撃を繰り返す。空間認識能力が向上しているとはいえ、並の人間じゃあそこまで高度な戦いは出来ないだろう。


「そのまま進路を開きながら前進、宮殿が見え次第突入の準備を!」


 梓さんはその都度指示を出しながら僕と共に宮殿を目指す。僕はと言うと、梓さんと雅也さんの護衛の元、ひたすら宮殿を目指して歩くのみで翼の能力はおろか剣すら抜いていない。

 梓さん曰く、「宮殿の中で思いっきり戦えるように今は能力を温存しておけ」ということだけど…


『妙だ。』


「妙?」


『宮殿周囲の使徒の気は濃いが、宮殿内部からはほとんど気を感じぬ…内部には奴しかいないとでもいうのか…?』


 エクスが神妙な面持ちでそう話す。あれだけ大きい宮殿の中にゼロしかいないというのは変な感じもするが…

 僕はこのことを梓さんに話してみることにした。


「隊長、宮殿内部にはもしかしたらゼロしかいないのかも知れません。」


 恐らく、隊長はこれを聞いて作戦を考えてくれるはずだ。そう思っていたが、返ってきた言葉は予想していなかったものだった。


「やはりな。それでなくてはこちらが困る。」


「どういうことですか?」


「ラスボスとの戦いは一騎討ちが常套、というわけさ。宮殿外部に護衛の使徒を多く配置し、自分は敵将が来るのを一人待つ…。RPGらしい展開ではないか。」


 隊長は微笑みながらそう話すが、このままだと宮殿に突入する敵将というのは…


「ゼロと戦うのは僕一人だと。隊長はそう考えているんですか?」


 確かに、僕は今の今まで消耗していない。ゼロと戦うには万全の状態であるのに間違いはないが、今まで一人でゼロを追い詰めたことはない。そんな僕が、ゼロと戦って勝つことが出来るだろうか…不安そうな表情を浮かべた僕に、隊長は檄を飛ばす。


「君はあの会議の場で言ったはずだ、ゼロを倒すと。白い翼を覚醒させた君は今ゼロに対抗出来る唯一の存在なのだ。そうでなければ君は何の為にここで戦うんだ?」


 厳しい言葉、だが確かに僕は会議の場で長官に「ゼロを倒す」と言い放った。

 あの時、僕は覚悟したはずだ。たとえ僕一人になってもゼロを倒すと。

 なら、今は迷う時じゃない。


「行きます、行ってゼロを…空を取り戻してきます。」


「それでこそ君だ、悠。…桜、宮殿のトレースは終わったか?」


「隊長の読み通り、中には使徒とおぼしき反応は一つしか捉えられませんが、かなり強いです。」


「よし、私たちの任務は悠を無傷でゼロの元に送り届けることだ!総員、全力をもって目の前の使徒を撃滅しろ!!」


『了解!』


 僕たちの行方を阻むように多くの使徒が出現する。中には巨大な体をしたタイプもいる。


「ここを突破すれば宮殿までは一直線です、左右、中央の順に軍団を撃破して進路を確保して下さい!」


「よーし!俺は左をやる。海斗、お前は右を押さえろ!一体でも漏らしたら許さねぇからな!?」


「俺だっていつまでも見習いじゃありませんよ!」


「中央の突破口はあたしが開けます!」


 由乃が「大和」を構え、その左右に龍一さんと海斗が飛んで行く。

 龍一さんの高速の打撃が次々と使徒に命中し、海斗の剣と銃の乱舞は周囲の使徒をどんどん落としていく。

 中央に集まった使徒には、由乃の砲撃が叩き込まれた。跡形もなく消え去る使徒、防衛網の中に、宮殿への道筋となる穴が開く。


「行け、悠!俺たちに構うな!!」


「君ならやれる、信じてるよ悠くん!」


「悠さん、ご武運を!」


「ちゃちゃっと倒して来なさい!」


「一航戦の力、見せつけてこい!」


「先輩…いってらっしゃい!!」


 みんなからの激励の声を受け、僕は「白銀の翼(ホワイトネス)」を広げる。


『悠、終わらせてくれるか?この長きに渡る戦いを…』


「ああ、僕がこの手で終わらせてみせる。行こう!!!」


 僕は由乃たちが開けてくれた穴を突っ切り、宮殿内部へと侵入した。


――――――――――――――――――――――――――――――――――

 桜の言った通り、宮殿内部には使徒の気配は全くなかった。

 だが、一際強いオーラというか、気は感じる。


「この部屋か…」


 巨大な欧風の扉、その奥からビリビリとゼロの気配を感じる。

 この間戦った時よりも、強くなっている。

 けど、僕だってあの時の僕のままじゃない。

  僕は静かに扉を開けた。


 そこには、ゼロがいた。


「来たのはやはりキミか、悠。歓迎するよ、ようこそボクの城へ。」


 ゼロが何かを投げてくる。見たところ爆弾ではなさそうだ。

 左手でそれを掴むと、冷たい感触が伝わる。


「缶コーヒーなんて、ずいぶんと庶民的な物を買うんだな。」


「ここに来るまでに水分なんて補給してないんだろう?飲みなよ、見てわかる通り、変なものなんて入ってないさ。」


 普通に市販されている缶コーヒーで、飲み口が開いていないのを見ると本当にただのコーヒーのようだ。

 僕は缶を開け、一気に飲み干す。


「ごちそうさま、缶はこうすればいいかな!」


 僕は空き缶をゼロに向かって投げる。それと同時に僕はゼロへと二刀流で斬り込む。


「っ!やはり油断ならないなキミは!」


「お前の方がよっぽど読めないさ!」


 こうして、僕とゼロの一騎討ち、人類の存亡をかけた最後の戦いが始まった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――


 白銀の翼(ホワイトネス)の能力、それはゼロの持つ漆黒の翼(ダークネス)と同等、つまり全翼の能力を使えるというものだ。

 そして、その能力は掛け合わせることで強力になる。


「はあああああ!」


 僕は「緑の翼」の能力でビットを展開し、そこに「紅の翼」の砲撃能力を加える。

 個々の持ち主では決して成し得ない能力の掛け合わせ、精神力の消耗は激しいが、今はそんなことに構っている場合ではない。


「能力の掛け合わせ!?馬鹿な、こんな事が出来るだなんて…」


 対するゼロは、宵闇の衣(よいやみのころも)を展開して応戦してくるが、前に戦った時ほどの性能を発揮出来ていないようだ。

 この好機を逃すわけにはいかないと、僕は攻撃の手を強めていく。


『悠、短期決着をつけるほど、貴様はまだ翼に慣れていない!いずれ押し返されてしまうぞ!』


「それでもやるしかない、僕一人でみんなを救えるなら…!」


『悠、貴様…』


 エクスはそのまま口をつぐんでしまった。

 僕は攻撃の手を緩めることなく、水星(アクアスター)に「紫の翼」の能力を合わせる。


「隊長のようにはいかないけど…!」


 水星(アクアスター)の刀身が花弁のように散り散りになり、ゼロを切り刻む。隊長がよく使っている「紫陽・千本の舞」は威力は下がってしまうが、僕でも使うことが出来る。

 「紫陽・千本の舞」を発動させながら、僕はもう片手の白雪(スノーホワイト)に「ソニックエッジ」を纏わせる。


「ボクが押されている…!?くそ、ボクが負けるはずがない…!!」


 一瞬、ゼロの剣が虚空を切る。僕はその隙を逃さず、ソニックエッジをゼロの横っ腹に叩き込んだ。

 ゼロの体が宙を舞う。決めるには今しかない。


「これで終わらせる!」


 全ての能力を中断させ、僕は蒼天の翼(スターダスト)の能力を全面解放させた。青白く輝く翼、これまでにない速度でゼロに肉薄した僕はそのまま奥義「スターダスト・レイン」を発動させる。

 上下左右から次々と繰り出す剣撃、その一撃一撃はしっかりとゼロを捉え、大きなダメージを与えていく。


「うおおおおおおおおおおおおお!!!!」


 最後の一撃、水星(アクアスター)白雪(スノーホワイト)による左右からの袈裟斬りが命中し、ゼロはそのまま床に落ちた。


「はあっ、はあっ、はあっ…」


 息を切らしながら、僕は来るだろう反撃に備える。


「ーっ!!!」


 速く、重い一撃。僕はその攻撃を防ぎきれずに大きく吹き飛ばされる。


「ククク、なーるほど。ようやくやり方が分かったよ。これでキミとも対等、いや、その様子じゃあボクの方が上みたいだねぇ…」


 不敵な笑みを浮かべながら、ゼロがゆらりと近づいてくる。その姿は、弱い羊を刈る悪魔の如く映った。


「今のは橙×青、速くて重かっただろう?そしてこれは…」


 ゼロの背後から、6つの黒い玉が浮かぶ。それは不規則な機動を描きながら砲撃を繰り出す。


「緑×青、そしてこれに赤を混ぜると…」


 ビットからの砲撃の威力が上がる。そのうえビットの動きが速く、ビット本体を捉えられない。

 形勢逆転、一気に追い詰められた僕は尽きかけた精神力を振り絞る。


「この化け物め…見ただけで能力をコピーするなんて…」


「キミがその能力を見せてくれたおかげでボクはさらに強くなれた。それは感謝しないといけないねぇ。だから…全力を持ってキミを殺してあげるよ。」


 にやりと笑みを浮かべ、ゼロは剣を振り下ろす。僕はそれを水星(アクアスター)でどうにか防ぐ。


「まだ防ぐだけの力が残っていたとはね、でも、これで終わりだよ!!」


 ゼロの剣に、赤い光が灯る。剣に赤の翼の能力を掛け合わせるなんて予想していなかったが、破壊力があるのは確実だ。

 僕は水星(アクアスター)に藍の翼の能力を掛け合わせる。藍の翼の防御能力を得た剣ならば、互角に渡りあえるはず……

 突如、ビシッという音が辺りに響く。それと同時に走る痛み、あまりの出来事に感覚が追い付かない―――


「これで君の剣は残り1本、さっきのような二刀流はもう使えないよ!!」


 ゼロの言葉でようやく現実を理解した。

 藍の防御能力を得てしても、ゼロの剣には敵わなかった。

 それどころか


 ―水星(アクアスター)が、折れた。― 

さあ、最終決戦が始まりました。

長々と戦いの模様を書くのが苦手なので、早い展開になってしまいましたが、もう悠がピンチです。


圧倒的な力を持つゼロ、水星を折られた悠が取る行動は?

また、悠を信じて外で戦う一航戦の行方は?


次回、第21話。最終話です。

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