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もう一度、僕たちの空を  作者: 浦風晴斗
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第19話 幕開け

 ノアへ帰還した僕らを、みんなは笑顔で迎えてくれた。


「通信が途絶したときはどうなることかと思ったが、よく無事に帰ってきてくれた。」


「さすがの隊長もあの時は焦ってたもんなー。ノアでナハトに突っ込むって言われた時にはどうしようかと思ったぜ。」


「大切な隊員をみすみす死なせるわけにはいかなかったからな…それと龍一、お前は一週間本部のトイレ掃除だ。」


「うぇっ!?」


「余計なことを言うから…」


「そういうお前だってあたふたしてたじゃねーか!」


「僕は主砲の照準を合わせるのに必死だったのさ…どっかの誰かさんが乱暴に操舵するからね。」


「んだよ、俺が悪者みたいじゃねーか。」


「まあまあ、龍一さんだって突入するのに一番いい場所を探していたわけですし、こうして3人共戻ってきたんですから結果オーライですよ。」


「それもそうだな。さて、早く戻って体を休めよう。ナハトを陥落させたとは言え、ゼロを倒したわけではない。私たちの戦いは、まだ終わっていないからな。」


――――――――――――――――――――――――――――――――――

 作戦終了から2日後、僕は梓さんの元を訪れていた。


紅蓮の翼(インフェルノ)…?初めて聞く名前だな。」


「僕もエクスから聞いただけなんですが…由乃の翼は僕や桜のように一段進化した翼、だということです。」


「エクス?」


 しまった、隊長にはエクスの話をまだしていないんだった。僕がどう説明しようか迷っていると、僕とエクスの意識が入れ替わった。


「直接会話をする方が手っ取り早いだろう…。お初にお目にかかるな「紫の翼」。我はエクス。この少年の中に眠る「蒼の翼」の人格、初代持ち主の魂だ。」


「初代持ち主?大戦と何か関わりがあるのか。」


「その戦いよりも遥か昔、人類と使徒が初めて戦いを始めた時、我は「蒼の翼」の持ち主として選ばれ、戦った。そして魂を翼に封印した後は長い時を転々と移動し、そして今、この少年の中に眠っている。」


「つまりあなたは使徒との戦いを全部見てきていると、そう判断していいのか?」


「いや、中には翼を覚醒させずに去った者もいる。だが数多くの戦いは見てきた。君たちの言う「大戦」という戦いもな。」


「ならば、滅びを止める方法も知っているのか?」


 その質問に、エクスはすぐに答えを出せなかった。エクス自身、滅びを止めたことはない。だから今も戦いが続いている。


「推測にしか過ぎないが、ゼロという青年を倒す以外に滅びを止める方法はない。奴が開く扉は我らの世界と闇を結ぶワームホールのような物だ。物理的な攻撃で破壊出来るものではない……」


「やはりゼロが親玉か…。だが今までの戦いの中で私たちは…」


「希望ならある。」


 ゼロは強い口調でそう言った。数々の戦いの中で見出だした希望。昔、神から翼を授かった時に言われた言葉を思い出しながらゼロは続ける。


「7色を束ね、白き光とする者。白き光こそ黒き闇を払う大いなる力……悠は先の戦いでその片鱗を見せた。1度ならず2度も「白銀の翼(ホワイトネス)」の力を。」


「「白銀の翼(ホワイトネス)」…伝承の中で聞いたことがある。その翼を悠が?」


 梓にとって、にわかには信じがたい話だった。だが悠が真っ先に「蒼天の翼(スターダスト)」を覚醒させただけに、もしかしてという気持ちも梓の中には芽生えた。


「悠は、この戦いを終わらせる切り札になり得ると…あなたは言いたいわけか。」


「完全覚醒すればの話だ。だが悠が覚醒せずとも今の君達ならば、あるいは…。」


「どちらにせよ、今はゼロの居場所を突き止めなければならない。今度こそ、戦いを終わらせるために…」


「我らが最初にゼロを倒せていれば、こんなことにはならずに済んだ。本当に申し訳ない。」


「過去の事を悔やんでも仕方ない、今生きている私達が終わらせればいいだけのこと。そのためのACFで、そのための一航戦なのだから。」


――――――――――――――――――――――――――――――――――

 ナハト攻略作戦から1週間たった頃、予想もしていなかった事態が発生した。

 使徒による地上への攻撃が始まったのだ。

 それまで地上への攻撃は少なかったために、ACFも混乱し、市民や隊員にも犠牲者が出るようになってしまった。


 事態を重く見た政府は非常警戒体勢を発令、一航戦~五航戦の全ての航空戦隊に対し、被害の大きい浜ノ宮市を中心に防衛網を張るよう命令が下された。

 予測が難しい使徒からの攻撃に、ACFは効果的な策を打てず、ついに一ヶ月が経とうとしていた。


「使徒の地上襲撃から一ヶ月、我々は未だに使徒の本拠地を発見出来ていない。このままでは浜ノ宮や近隣の街だけでなく、日本全土が危うくなってしまう。」


 一航戦と政府との会議の中、橘総理はそう言った。


「無論、君達が全力で敵の本拠地を割り出そうとしていることは重々承知している。だがあまり時間がないことも事実だ……」


「分かっています。今も隊員の浜野桜を中心に過去の出現パターンから本拠地を割り出す作業を行っています。」


 総理の言葉に、梓さんはそう返した。そこに、茶々を入れてくる男がいた。


「そうは言うが、一ヶ月経っても結果が出ていないじゃないか。過去のデータなどから本当に分かるものなのかね?」


「と、言いますと?」


「奴らは我らを滅ぼそうとしている。一度手を加えた所に早々出現する訳でもあるまい。先手を撃つならばあらかじめ出現ポイントを絞りこんで爆薬を仕掛けるのが手っ取り早いのではないか?」


「………藤堂長官、使徒の攻撃の規模を知らないわけではないと思います。あれだけの数の使徒を殲滅するには相当量の爆薬が必要になります。それこそ、街を一つ消すくらいの。」


 口を挟んで来たのは藤堂翔、防衛大臣として数々の功績を残してきた男だ。(裏では何をしているかわからないと噂であるが)


「住民を完全に避難させれば人的な被害は出ない。街一つの犠牲で平穏が訪れるなら、住民を納得させるには十分だ。いつ死ぬかもわからない今の状況を打開出来るのだから。」


「それでは避難させた住民はどうなるのです?」


「仮設住宅を近隣に用意し、使徒を殲滅させた後に復興すればいいだけだ。」


「そんな予算があるのか?」


「君らにはわからないだろう、これは政治の話だ。戦うことしか出来ない君らが理解する必要もない。」


 その言葉を聞いた全員が、息を詰まらせた。


「……勝手なことを言って…」


 僕は藤堂長官の言葉に怒りを露にした。少し前、隊長がそうしたように。


「自分で戦った事もない奴が勝手な事を言ってくれるね!あんたの命は誰が守ってるんだ!?誰に守られてるんだ!?僕たちがいなければ、あんたはとっくの昔に死んでるだろうに!」


「貴様…いくら一航戦とは言え無礼な!」


「無礼なのはどっちだ!自分じゃ何も出来ない、守られてる立場のくせに、ふざけるなよ!?こっちがどんなに必死になってゼロの居場所を探しているか、見たことあるのか!?」


 僕の怒りは翼となって広がる。その翼は青白い炎のような翼だった。


「防衛大臣だかなんだか知らないが、あんたの力を借りずとも僕らが、僕がゼロを倒してやる!!あんたはそれを黙って見ていればいい!」


 僕の中で、何かが弾けた。青白い翼は真っ白な翼へと変化し、新しい力が芽生えるのが分かる。


「……ふむ、分かった。悠、その辺りで落ち着け。それと長官、悠の言う通り、恐らくあなたの出番はない。」


「貴様も私を愚弄するか!」


「たった今、使徒の本拠地を特定した。どうやら私たちが知らぬ間にとんでもない物を作っていたみたいだな。」


「なっ……何を作っていたというのだ!」


「後で自分の目で確かめればいい。私たちは作戦に当たるためこれで失礼する。」


――――――――――――――――――――――――――――――――――

桜沢市の西側、川名湖にそびえ立つそれを捉えたのは僕と梓さんが会議に出ている最中だった。


「急にお呼び立てしてしまってすみません…会議の方は?」


「いつの会議にも馬鹿は付き物だよ副隊長。で、奴らの本拠地は?」


「先程、監視衛星が捉えました。しかしこれだけ巧妙に隠してあるものを、少しの位相のズレを見抜いて暴くなんてさすが桜さんです。」


翡翠の翼(オーロラ)の能力のおかげです。それにしてもこれ…」


「とてつもなく大きいな、まるで宮殿だ。」


 川名湖の中心に立っていたのは宮殿のような風貌の建造物だった。


「内部と湖畔に使徒の反応があります。恐らくここが本拠地で間違いないかと。」


「本部に所属する全隊員に通告。現時点を持って全ての活動を中止し本部に帰投、明日ヒトマルマルマルから各航空戦隊隊舎にて待機せよ。…最終決戦だ。」


「了解しました。」


「一航戦もこれにて解散。明日、マルキュウサンマルにここに集まってくれ。」


 隊長の一言が、すごく重かった。ついに見つけた使徒の、ゼロの居場所。今度の戦いに僕たちACFの…いや人類の行く末が懸かっている。

 僕も早く寮に戻って体を休めないとと思い作戦室を出ようとした時だった。


「悠、少し話がある。」


「どうしたんですか隊長。」


「その、君の翼についてなんだが…。先刻、会議室で白い翼を発現させたのは覚えているか?」


「はい、今までとは何かが違う、新しい力を感じました。」


「先日、エクスと話した時に聞いた話なのだが…白き翼は闇を払うと言われているそうだ。」


「闇を…払う…」


「7色の翼、それを一つに束ねた白き翼…白銀の翼(ホワイトネス)の力を悠、君は覚醒させたのかもしれない。」


 隊長の言いたいことが、なんとなく分かった気がした。

 7色の翼を束ねたということは、今の僕にはみんなの「翼の能力」が使えるはずだ。恐らく、先日のゼロとの戦いで由乃の「大和」を撃てたのも「白銀の翼(ホワイトネス)」のおかげなんだろう。

 そんな能力を得た僕が、無理に突っ込むのを隊長は心配しているんだ。「蒼天の翼(スターダスト)」を得る時と同じように。


「今の君は私たちを凌駕した能力を持っている、だが…」


「君は一人じゃない、私たちがついている…でしょ?」


「悠…。」


「大丈夫です隊長、もう無理も無茶もしません。僕には一航戦の仲間がいますから。」


「ならいい。最後の作戦、頼んだぞ悠。」

大変長らくお待たせいたしました。艦これの方で夏イベが始まった関係で中々進められず1ヶ月以上経ってしまいました。


さて、話のほうもついに最終章へ突入。残り2話での完結を目指していますが、文の長さによっては3話になる可能性も…

ともあれ、ここまで読んでくださった皆さんに感謝して、最終章をスタートさせたいと思います!

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