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もう一度、僕たちの空を  作者: 浦風晴斗
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第15話 得る者、失う者

「間違いありません、使徒です!現在、竹原市上空にて散開待機中!」


「奴らめ、攻撃を開始しないとは一体何が目的だ…?だが今が好機なのは事実、これより一航戦は竹原市に出現した使徒の掃討作戦に入る!各員、出撃開始!!」


 梓さんの指示とともに僕達は空へと舞い上がる。

 今回は僕を先頭に海斗・龍一さん、梓さん、由乃・桜・雅哉さんというフォーメーションだ。

 切り込み隊長役の僕がどれだけ先手を打てるかがこの戦いにかかっている。


『緊張しているのか?』


「まあ、そりゃあね。ちゃんとした形で蒼天の翼(スターダスト)を使うのは今回が初めてだし。まだ魔力の総量も分かりきっているわけじゃない。この翼の戦い方を見極めるのは多少無理もしないとならなそうだしね。」


『いざとなれば我がサポートする。貴様は安心して戦え。』


「了解。」


 僕は使徒の姿が辛うじて見えてきた所でエンデュミオンを構える。後ろをついてくる海斗・龍一さんペアは僕の行動にあっけにとられていた。


「悠さんって、近接型ですよね?」


「…?そうだけど?」


「どう考えても近接型が射撃を当てられる距離じゃねえぞ。」


「まあ見ててください…よっ!!」


 僕はエンデュミオンから魔力砲「ブラスターシュート」を放つ。今までずっと魔力を貯めてきたので、有効射程範囲はかなり長くなっている。

 狙い通り、遠くの方で爆発が起こる。


「す、すげぇ…お前さん、いつの間に射撃型になったんだよ。」


「いや、僕は近接型のままですよ?翼が進化したのでこういうことも出来るようになったんです。」


「龍一さん、補足すると隊長も言ってましたよ。」


「……別にミーティング中寝てた訳じゃないからな?」


「分かってますって。」


「こりゃ俺も負けてられないな!普段なら寄ってくる使徒が寄ってこないのは不思議だが、あの塊を倒せば終わりなんだろ?さっさとやっちまうぞ!」


「はい!」


 いつの間にか龍一さんが先陣を切って使徒と戦い始めた。僕達の戦闘を確認したのか、後ろから桜と由乃の援護射撃が飛んでくるようになった。

 確かに、今回の使徒は今までと何かが違う。普段なら無尽蔵に現れて攻撃を繰り出すはずなのに、今は僕達を待ち構えるかのような陣形。何かを狙っているのだろうか?


「考えても仕方ない…今は目の前の使徒を倒すだけだ!」


 僕はブラスターシュートを照射する。閃光に巻き込まれた使徒は次々と消滅していくが、やはり数は多い。


『あの時と似ている。』


「あの時?」


『奴らが我らの仲間を捕虜にした時だ。あの時も奴らはああしてチャンスを伺っていた。我らの誰かが消耗するのを。』


「………!?」


『だが奴らはすでに我らの力を知っている。今更そのようなことをして何の意味があるのかがわからぬ。』


 僕の脳裏に島落とし作戦(アイランドダウン)の情景が甦る。

 一人一人力尽きていき、最後は僕と梓さんしか残らなかった。

 だけど、誰かを捕らえるならばあの時こそチャンスだったはずだ。それを棒に振ってまで今回そんなことを狙うだろうか?


「お前達の狙いは…一体何だ!?」


 問いかけても、使徒は何も答えない。いや、答える術を持たない。

 使徒には基本的にコミュニケーション機能が存在しない。それこそゼロの様な特別な存在でない限り、話す事もお互いを見る事もしない。

 あくまでも使徒は僕達の空を支配するために行動するだけなのだ。


「だいぶ数も減ってきたな、これならもう少しで終わらせられるぞ!」


「いや、そうはいかないんだよね。黄の翼(きのつばさ)。」


 聞き慣れた声、数を減らしつつあった使徒の中心に、ゼロの姿があった。


「ボクらの狙いはもっと別のところにある。それも、もうすぐわかるよ。さぁ、それまでボクとここで踊ろうじゃないか。」


 ゼロは黒い剣をどこからともなく出現させ、龍一さんに斬りかかる。


「3対1でもボクは構わないよ?それでもキミたちが勝てるとは思わないけれど。」


「随分と言ってくれるな…!」


 海斗が静かな怒りと共にゼロに向けて、流星から弾丸を撃ち出す。だがそれを少しの動きで避けると、ゼロも砲撃を放つ。その砲撃は海斗をかすめるようにして抜けていく。


「ははは、覚醒していない射撃でボクにダメージを与えられるなんて思ってるのかい?」


「だったら、これならどうだ!!」


 ボクはエンデュミオンに十分すぎる魔力を込めてブラスターシュートを放つ。龍一さんと剣を交えている以上、大きく避けることは出来ないはずだ。


「おっと、これは危ないね。」


 しかし、ゼロはその攻撃を魔法陣で防ぐ。

 ゼロの戦い方は、覚醒した僕の蒼天の翼(スターダスト)とほとんど同じだった。魔力による攻撃と防御は、通常兵器では守ることも、破ることも難しい。(武蔵や大和と言った特別な兵器は別だが)


「うーん、そろそろ頃合いかな?」


「頃合い?」


「今回はね、キミの一番大切な物を奪いに来たのさ。」


 ゼロは僕を指してそう告げた。

 僕の一番大切な物、それは由乃だ。

 それを奪うということは、つまり…


「由乃を殺しに来たのか……!!」


「嫌だなぁ、ボクは奪うって言ったんだよ?それがどういうことか、分かるだろう?」


『悠!由乃ちゃんが!』


 ゼロと僕の会話に、桜の通信が割って入ってきた。


「由乃がどうした!?」


『使徒に捕まった!』


「えっ……?」


『もう奴らは逃げ出してる!急がないと由乃ちゃんは!』


 由乃が、使徒に捕まった?つまり、ゼロの言う奪うというのは…

 僕から由乃を引き離すってことなのか?


「そんなこと……させてたまるかぁぁぁぁぁ!!」


 僕は由乃と桜が戦っていた地点まで、猛スピードで飛んでいった。

 烈風は僕の無茶な加速にも対応してくれた。すぐに僕は使徒に捕らわれた由乃を視界に入れた。


「由乃を返せ!」


 ソニックエッジで周りの使徒を斬ろうとするが、その攻撃を他の使徒が庇う。


「くそっ、由乃、由乃ーー!!」


「先輩、助け…」


「待ってて、今すぐ…!」


 由乃と僕を遠ざけるように使徒が群がる。ソニックエッジを刀身に纏わせて攻撃するもわずかに由乃に届かない。

 刹那、僕の身体を激痛が走った。

 使徒の砲撃が、僕の脚を貫いたのだ。バランスを崩した所に使徒の猛攻。手を伸ばし、必死に由乃を助けようとするが、その距離は離れるばかりだ。


「せんぱ……っ!」


 最後に聞こえたのは、由乃の泣きそうな声。落ちてくる「大和」を掴んだところで、僕の意識はなくなった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「悠!?」


 由乃ちゃんが使徒に捕まった事を通信で悠に知らせてから、悠はあっという間に飛んできた。

 空に吸い込まれるように上がっていく由乃ちゃんと、それを追いかける悠。私は、それを見ていることしか出来なかった。

 程なくして、使徒の攻撃が悠を捉え、悠は段々と傷ついていく。それを見た私は、たまらず翼を広げて悠を助けに行った。


「悠っ…!」


 でも、間に合わなかった。使徒の剣が悠の身体を斬り、悠は何かを掴んだまま、まっ逆さまに落ちていく。

 まるで私が、崖から落ちた時のように。


「悠は…死なせない、死なせたりしない!!」


 落ちていく悠に執拗な攻撃を繰り出そうとする使徒を、私は機動砲搭(ヴァリアブル・ビット)で撃ち落とす。


「悠に死んでほしくないのは、私も一緒だから!」


 突如、私の叫びに呼応するように翼が大きく光る。すると、今まで10基だった機動砲搭(ヴァリアブル・ビット)が15基に増え、新たに盾の形をした機動盾(シールドビット)が6基、私の周りを飛び交う。


「これは…新しい力…?」


 私は戸惑いながらも、全部で21基となったビットを飛ばす。前よりも遥かに機動性が増したビット達は、悠の周りの使徒を次々と撃ち落としていく。

 私は落下を続ける悠に追いつくと、その体を両手で抱える。崖から落ちた時とは、全く逆。


「さ…くら…?」


「気がついた?」


「そうだ、由乃は!?」


 私が悠を助けたところで、由乃ちゃんを連れ去った使徒たちの反応は掴めなくなっていた。けれど、それは悠にとってあまりに残酷な現実。言おうか言うまいか迷っているところに、ゼロの声が響いた。


「キミの大切なモノは預かったよ、悠。ボクたちは空中要塞『ナハト』でキミたちを待っている。最も…2週間以内に見つけられればの話だ。2週間、それ以上経過したらボクは由乃を殺す。」


「ゼロ…ッ!!」


「彼女の命はキミたちにかかっている。さあ、楽しいゲームの始まりだ…ははははは!」


 ゼロの声が遠ざかるのを合図に、宙域の使徒は姿を消していく。残されたのは、一航戦の6人。


「…作戦終了だ、本部に帰投する。桜、悠を頼んだぞ。」



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