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もう一度、僕たちの空を  作者: 浦風晴斗
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第14話 束の間

「さて、これで君の謹慎は解除となる。これからも一航戦として作戦に当たって欲しい。」


「了解しました。」


 桜沢墓地での戦いから2日、僕は再び本部の会議室に呼ばれていた。


「謹慎処分を与えはしたが、君の功績は多大なるものだ。同じ一航戦の神山由乃も新しい武装を開発したと聞く。君達の活躍には期待しているよ。」


「ありがとうございます。」


 僕はそれだけ言うと会議室を後にする。

 謹慎が解けたことで、ようやくエクスとの訓練も出来るようになった。まずはなにから取りかかろうかと考えている所に由乃がやって来た。


「先輩!謹慎解けたんですよね?」


「うん、今さっき解除だって言われてきたよ。」


「なら、あたしと模擬戦をしませんか?」


「模擬戦?」


「先輩も新しい力を手に入れたんですよね?あたしもまだ大和と武蔵に慣れきってなくて…。」


「そういうことなら、やろうか。」


 僕と由乃はそのまま模擬戦用の会場に移動する。ここに来るのは由乃達、第6期訓練生模擬大会以来だ。


「先に相手のライフを0にしたほうの勝ちだ。時間制限はなし、他に何かあるかな?」


「いえ、それで大丈夫です。始めましょう!!」


 戦いの火蓋が切って落とされた。由乃の新ウェポン「大和」と「武蔵」は僕も桜沢墓地での戦いの時にしか見たことがない。どんな機能が隠されているかわからない以上、由乃には悪いけど短期決着をつけるしかない。

 そう思った僕は蒼天の翼(スターダスト)を広げる。


蒼の翼(あおのつばさ)よりも大きい…それが先輩の新しい力なんですね。」


「由乃、行くぞ!!」


 僕は水星(アクアスター)白雪(スノーホワイト)を抜き、由乃との距離を詰める。由乃も大和と武蔵の展開を終えているが、スピードでは僕は負けない。


「やあああっ!」


 水星(アクアスター)に魔力を込め、斬撃を飛ばす。エクスが教えてくれた術式「ソニックエッジ」。

 ソニックエッジは近距離を得意とする僕のスタイルの中で唯一の中距離斬撃だ。込めた魔力を飛ばすだけでなく、魔力を剣に纏ったまま攻撃することで斬撃そのものの威力を上げることもできる。

 しかし由乃は僕の攻撃をものともせず、武蔵で防ぐ。普通とは違う僕の攻撃を難なく防ぐあたり、武蔵の性能は高そうだ。


「次はこっちの番ですよ!」


 由乃は武蔵を僕に向ける。するとシールド部分がスライドし、中から銃口が現れた。


「ファランクスシュート!!」


 ビーム弾の嵐。その間を縫いながら僕は由乃が左手に持つ大和のバレルが僅かに開くのを見た。

 従来、インパルスカノン系統の武装はビームを放つ時にバレルを開き、放出するエネルギーを制御する。つまり由乃は武蔵の砲撃を続けながら大和で僕を撃ち抜こうとしている。


「なんて集中力だ…」


 刹那、由乃が武蔵の砲撃を止め、大和を構えた。気がついた時にはその砲身からビームが発射され、僕はシールドを展開するのが精一杯だった。


「くっ…重い…なんて砲撃だ…!」


「カートリッジ、リロード!!」


 ガシャンという音とともにビームの威力が上がる。シールドを多層展開することでどうにか真正面から対抗出来ているが、リロードに制限がないのならこのまま耐えることは難しい。そう悟った僕はシールドを斜めにすることでビームを少し逸らし、ビームの真横を飛ぶ形で由乃に肉薄する。

 余波で僕のライフが徐々に削れていく。ビーム自身には当たっていないのに、周囲にこれだけのダメージを与える砲撃に、僕は鳥肌が立った。


「でも…ガラ空きだよ、由乃!!」


 僕は由乃の左側…大和の外側から白雪(スノーホワイト)を振るう。右腕で構えた武蔵では防御に間に合わない、かといって砲撃を続ける大和を止めるには距離が短い。これで僕の一撃が決まる…と思っていた僕は由乃が少し笑っていることに気がついた。


「そのパターンは予測してます!」


 僕が振るった剣は、由乃に当たる前に何かに阻まれた。それはさっきまで由乃が腰につけていた中型のフィンだった。


「機動盾…!?」


「でも、それだけじゃないんですよ!」


 由乃は砲撃を終えた大和を背中に背負うと、腰のラックからフォトンソードを抜く。

 でもその刃は太く、従来のソードの威力を超えていた。

 白雪(スノーホワイト)とぶつかるフォトンの刃。その衝撃を由乃は難なく抑え、逆に僕と鍔迫り合う。


「また一段と強くなったね由乃。僕としては嬉しい限りだけど、このまま負けちゃったら指導員の名が廃るから……。ブラスターシュート!!」


 僕はほぼゼロ距離でエンデュミオンから魔力砲撃を放つ。さすがの由乃もこれには耐えられなかったようで、僕との距離を大きく取った。


「でも先輩、ここはあたしの距離です!!」


 大和から放たれるビーム、僕はそれを多層展開させたシールドで守る。


「エクス、やるよ。」


『いいのか?彼女は貴様の想い人だろう?』


「だからこそさ。由乃は本気で僕とぶつかってくれた。だったら僕も本気で相手しないとならないじゃないか。」


『ふむ…ならば貴様の好きにするがいい。我の力をどこまで引き出せるか…楽しみにしているぞ。』


 僕はさっきと同じようにビームを逸らし、そこから猛反撃に出る。

 速く、それでいて的確にエンデュミオンから魔力砲を放ち、由乃の退路を狭める。

 僕の剣を当てるには、あの武蔵のガードをどうにか潜り抜けなくてはならない。そのためには、僕の最大技「スターライトレイン」を強化して由乃にぶつける必要があった。


「由乃、ちょっと痛いかもしれないけど…我慢してくれよ!!!」


「先輩!?」


 僕は蒼天の翼(スターダスト)の機動力に烈風の加速を追加させる。体がバラバラになりそうな衝撃に耐えながら、水星(アクアスター)白雪(スノーホワイト)に魔力を込める。

 由乃を守ろうと2基の機動盾が飛ぶが、僕はそれを一撃で機能停止させ、由乃へ突っ込む。

 思ったとおり、由乃は武蔵で正面からの攻撃に備えている。あとは僕がどれだけ由乃の意表を突けるかにかかっている。

 僕は飛ぶ方向を上に逸らし、そのまま由乃の後ろに回り込む。焦った由乃は武蔵でガードしようとするが、僕の横斬りの方が早かった。

 そのまま斬り上げ、袈裟斬り、横斬り、逆袈裟斬りを由乃の前後左右から繰り出す。いくら武蔵のガードをもっても、ここまでの連続攻撃には由乃は対応出来なかった。

 二連続斬り上げからの✕字斬り、そして最後に三連続の斬り抜け。

 「スターライトレイン」を進化させた「スターダスト・エクリプス」。蒼天の翼(スターダスト)と烈風の性能を最大まで生かしたこの攻撃。由乃のライフは0になっていた。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――



「さすが先輩です。最後の攻撃、すごかったです!」


 トレーニングモードにしていたからこそ大したダメージにはならなかったが、模擬戦後、僕はすぐに由乃を医務室へ連れて行った。

 由乃自身には何事もなく、僕はほっと胸をなでおろした。(先生からは「そんなに心配ならそこまでやるな」と言われてしまったが)


「武蔵のガードはあれくらいやらないと崩せなかったから…」


『あれだけの連続攻撃だ、並の使徒だけでなく大型すらも一撃だろう。』


「へー、そこまでの威力があるのか。」


『うむ、蒼天の翼(スターダスト)とリンクした水星(アクアスター)はその切れ味が数段上がる。貴様の持つ白い剣は分からぬが、それもかなりの業物と見える。』


「あ、やっぱり?この白いのは白雪(スノーホワイト)って言うんだけどさ。翼に目覚めたばかりの頃、崖の上に刺さってるのを偶然見つけて、誰のか分からないからずっと持ってたんだよ。」


『崖の上に刺さっていた?白雪(スノーホワイト)…どこかで聞いたことのある名だ…』


 エクスと僕が会話をしていると、由乃がその様子を不思議そうに見ていた。

 それもそのはず、エクスは僕の意識の中にある人格で姿があるわけじゃない。その声は僕にしか聞こえないわけで、傍から見れば僕は独り言を言っているようにしか見えないのだ。


「先輩…?」


「ああ、これはね…なんて説明すればいいのか…」


『悠、我に体を貸せ。』


「へ?うわっ!!」


 僕の意識は、僕の体の中に入り込んだ。ということは…


「ふむ、このような姿になるのは何百年ぶりか…。外に出るのも悪くないな。」


「先輩…?」


「だいぶ混乱しているようだな。悠、この少女の名は?」


『由乃だよ。内側にいる時だって僕の声は聞こえてるんだから覚えておいてよ。』


「由乃。我は悠の翼「蒼天の翼(スターダスト)」に眠っていた人格。蒼の翼の初代持ち主であるエクスという者だ。今は悠の体を借りてこうして会話ができている。」


「蒼の翼の、初代…?」


「何百年の昔、初めて使徒と呼ばれる存在がこの世に現れた時、空にいた神々は虹を翼にして奴らと戦った。そして一度封印したのちに、地上にいた7人の人間にその力を分け与えたのだ。その時、蒼の翼を受け取ったのが我ということだ。」


「じゃああたしの翼にも、誰かいるってことですか?」


「そういうわけではない。我は使徒を倒す力を後世に残すために、あえて自らを翼の中に封じたに過ぎぬ。他の翼の所有者が我と同じことをした記憶はない。だが心配はいらぬ、翼は持ち主の想いや決意、覚悟を力へと昇華させる。由乃にそれだけの覚悟があるのならば、いつか翼は応えてくれるだろう…。」


 エクスがそう言い終えると、今度はけたたましい警報が鳴り響いた。


『エクス、体返してくれ!』


「む、我の話はまだ終わって…」


「由乃、今ので説明は終わりだ。急いで作戦室に行こう!」


「はいっ!」


 けたたましい警報、それは使徒出現の知らせ。2日前に現れたばかりだというのに、奴らは一体、どこまで侵略しようとしているのか、わからなかった。


 そして、この時は誰も分かっていなかった。


 この戦いで、新しい力に目覚める誰かがいて、何かを失う誰かがいることに。


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