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もう一度、僕たちの空を  作者: 浦風晴斗
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第13話 新たなる力、大和と武蔵

 ―島落とし作戦(アイランドダウン)―の次の日、あたしは津田之原研究所の開発室に向かった。


(少し一航戦を離れる?)


(はい。パーソナルウェポンを書き換えに、研究所へ行きたいんです。)


(そうか、悠はおそらく一週間程度の謹慎になるだろうからその期間中であれば構わないが…悠には話したのか?)


(いえ、少し、話しずらくて…)


(…?まあいい、悠と研究所には私から話しておく。あとは由乃次第だ。)


(ありがとうございます。)


 作戦の中で、あたしはヨンロクをまともに出せずに負けた。ヨンロクは強力な武器だけど、展開に時間がかかるのと、乱戦時には展開がほぼできないのが欠点だった。そこで、ヨンロクと浮遊艤装(ウェポンラック)に代わる新しいパーソナルウェポンを自分の手で開発しないといけないと思った。

 武装のおおまかな設計は出来ているものの、頭の中で考えただけのもので、実際に形にできるかはわからない、けど


「やるしかないよね。」


 カタカタとキーボードを叩きながら、あたしは目の前のヨンロクを見る。

 46cm三連装砲、戦艦「大和」に載せられたものを金型に、紅の翼でコントロールできるようにコアを入れたものを使っている。

 そのコアを抜き取り別の銃へと移すことでヨンロクの性能をそのままに、取り回しの利く武装へと変化させるのがあたしの狙いだった。

 おおまかな設計図を見せたところ、コアの移設さえ済んでしまえばあとは内部で勝手に最適化するという話だった。

 問題は、そのコアの移設だった。


「あたし、こういうの苦手なんだけどなー…」


「ほらほら、手が止まってるよ。早く完成させて、悠くんを安心させたいんだろう?」


「それはそうなんです…って、えええっ!?な、なんで副隊長がここに、っていうかどうしてそれを知ってるんですかー!」


「僕はそうかなーって思って言っただけだよ?」


「完全な自爆じゃないですか~。」


「それはそうとして、進捗はどうだい?」


「今はコアの抜き取り作業中です。これと、移設はあたしにしかできないみたいで…」


「翼と直結する部分だからね。それで、新しい武器の方は?」


「あ、えっとこんな感じです。」


 あたしは設計図を副隊長に見せる。


「ふむふむ、ロングバレルのカノンと中距離砲内蔵の盾…武装を片腕1つずつにまとめるって形かな?」


「盾の方は今より砲撃威力は落ちますけど、カノンは今のと同等レベルで砲撃可能だと研究所の方が言ってました。」


「このカートリッジシステムっていうのは?」


「事前に翼の力をカートリッジに貯めておいて、エネルギーの急速充填や砲撃威力の向上をしたいときにリロードするんです。カノンの中に7つのカートリッジを装填出来ます。」


「なるほど。継続して戦うもよし、一気に決めるもよし、どちらにも対応出来るわけだ。」


「でも、まだ形になってないので、実装して上手く働くかわからないんですけどね…」


「いや、構造はシンプルだし、理論も複雑じゃない。これなら十分に稼動出来るシステムだと思うよ。」


 副隊長はあたしの設計図を見て、何かを確信したようだ。


「由乃ちゃん、これで一航戦の戦力はさらに向上する。けれど、それはあくまで結果論に過ぎない。…君は、この力に一体何を望むのかな?」


「大切な人を守る力に、なればって。」


「大切な人を守る…か、いい理由だ。これは僕が誰にでも言っていることなんだけど、何か大きな力を手にした時、人はそれを使いたがる。けど理由なく手にした大きな力はやがて争いを生む。そうならないためにも、今の理由をしっかり心に刻んで欲しいんだ。僕達は、使徒と戦うためにこの力を持っているんだから。」


「はい。」


「おっと、長居しちゃったね。作業の邪魔になっちゃうから僕はこれで失礼するよ。頑張ってね、由乃ちゃん。」


「必ず完成させて戻ります。」


 副隊長が去ってから、あたしはコアの移設作業を再開する。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「うーん、思ったより情報が少ないな…」


 謹慎5日目、僕は本部内の情報管理室でずっと「大戦」のことを調べていた。

 「大戦」全体の記述については多いものの、その中で戦った「翼の持ち主」に対するデータ量は少なく、蒼天の翼(スターダスト)についての記述はほとんど存在しなかった。

 唯一分かったことは、蒼天の翼(スターダスト)の所持者のエネルギーは全て「魔力」と呼べるものに変化し、その魔力の総量は持ち主の潜在能力によって決まるということだけだった。


「最初に聞こえた変な声も聞こえないし、一体どうすればいいんだ…」


『変なとは失礼だな。』


「そうそうこんな感じのおっさんの…」


『おっさんとはまた失礼な。悠、貴様は我の力があってこそあの作戦をだな…』


「ん?」


『何をとぼけておる、貴様が唱えたブラッド・リリースは我の力を解放するための術式だ。』


「おっさん…誰。」


『む、我ともあろう者がまだ名乗っていなかったか。我はエクス、蒼の翼の初代持ち主だ。』


「それで、どうして今さらしゃべってるんだ。」


『貴様がブラッド・リリースによって我を箱から解放したからに決まっているだろう。この世に顕現するのは50年振りか……』


蒼天の翼(スターダスト)と何か関係があるのか…」


『うむ、蒼の翼に更なる能力を封じたのは我だからな。』


 いきなり僕の意識の中に現れた「エクス」という存在。彼(というかおっさん?)なら翼について知っていることが多そうだと思った僕は、そのままエクスと話すことにした。


「どうして封じたのさ、これだけの力があれば最初の時点で勝てたんじゃ。」


『優勢かと思われた戦況に、あのゼロという青年が現れた。一変した戦況に我らは混乱し、一人また一人と命を落としていった…翼は転移するが、そのままでは到底ゼロには勝てないと悟った我は、自らの力を適格者が蒼天の翼(スターダスト)として発動出来るようにしたのだ。』


 つまり、決着を未来に託すためにエクスは自らを翼の中に封印したということだ。でも、それはエクスの生涯がそこで閉じられた事を意味している。


「その判断をした時、エクスは何歳だったの?」


『我は17だった。』


 それを聞いて、僕は唖然とした。今の僕がエクスと同じ立場だったらそこまでの事は考えられなかっただろう。

 それに、翼について何も知らなかったエクスが蒼天の翼(スターダスト)と同等の力を持っていたというのも驚きだ。


『昔話はここら辺でよいだろう。大切なのは過去よりも未来だ。』


 過去よりも未来、確かにそうだ。小さい頃見た航空写真、僕はあの景色をもう一度見たい、そのためには蒼天の翼(スターダスト)の力を使いこなさなくてはならない。


「エクス、僕はもっと強くなれるかな?」


『それは、貴様次第だ。』


エクスは期待を込めた声色で続ける。


『希望を、我らが成し得なかった平和を掴み取るのなら、我はいくらでも力を貸そう。それこそが我の望みなのだから。』


「そっか、謹慎が解けたら僕も頑張るよ。よろしく、エクス。」


 エクスとの会話が一段落したところで僕は情報管理室を出て行く。


『どこに行くのだ?』


「桜沢ってところにあるお墓。僕の家族がそこにいるんだ。」



――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 津田之原研究所にこもってから5日目、あたしはついにコアの移設を完了させた。


「やりましたね。」


「皆さんが協力してくれたからです。あたし一人じゃこんなに早くできませんでした。」


「名前はもう決まっているんですか?」


 パーソナルウェポンに名前をつけるというのは所有者にとってとても大切なことだ。そう簡単に代わりになるものができないと心に刻むため、ACFのみんなが各々名前をつけている。

 これから先、一緒に戦っていく2つの武器。46cm三連装砲の魂を継ぐあたしの「剣」の名は…


「カノンが大和、シールドが武蔵です。」


 46cm砲を搭載し当時世界最強と言われた2隻の戦艦。その名をつけるにはあたしはまだ弱いけど、いつか必ずみんなを、先輩を守れるように強くなる。


「大和と武蔵…きっと由乃さんに大きな力をくれますよ。」


「そうだといいですね。」


 突如、研究所内に警報が鳴り響いた。


「使徒出現、繰り返す、使徒出現。出現地点は桜沢市。各員、防衛体制に移行してください。」


 研究所に現れたわけではないにしろ、桜沢市はそう遠くない場所だ。一航戦から離れている以上、あたしに出撃命令が下るとは考えにくいけど、かといってここで指をくわえて待っているのも気持ちが落ち着かない。先輩ならこんな時どうするかな…と考えていると、専用チャンネルで隊長から通信が入った。


『由乃、桜沢墓地に使徒が出現した。現時点で避難命令を発令しているが避難が終了するまでに被害が出る恐れがある。そちらの状況はどうだ?』


「今さっきパーソナルウェポンが完成しました、まだテストは出来ていませんが…」


『ならばそこから出撃してくれ。担当指導員がいないが今は緊急事態だ。私が許可する。』


「了解しました!」


 隊長からの命を受けたあたしは、一目散に研究所の外に出る。完成したばかりの大和と武蔵を構えて、あたしは空へ飛び立った。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 桜沢墓地には天気がいいからだろうか、それなりに人が来ていた。

 僕は駅前の花屋で花を買い、一人静かに家族の墓の前に佇む。


「父さん、母さん、舞…。」


 花とお菓子を供えて、手を合わせる。いつもと変わらない、普通の墓参りだった。

 そう、その時までは。


 突然、それほど遠くない場所で黒炎が上がる。それと同時に悲鳴。


「使徒だ…!」


 エクスも使徒の気配を感じ取ったらしい。僕の中で戦意を高揚させている。

 だが、今の僕は烈風の制御権を凍結されている。人々を救うためとはいえ、謹慎中の身で翼を展開させてもよいのか一瞬悩んだ。その逡巡が、僕の動きを鈍らせた。

 僕が背後に現れた使徒の気配を感じ取った時、使徒は攻撃体制に入っていた。その攻撃を辛うじて避けるものの、次々と集まってくる使徒に反撃の糸口が見つからなかった。

 振りかざされる使徒の腕、万事休す、その時だった。

 目の前の使徒が砲撃を受けて爆散する。その後も僕の周囲には砲撃が降り注ぎ、周囲の使徒は数を減らしていく。


「この砲撃…誰だ!?」


「大丈夫ですか、今のうちに避難を…ってあれ?」


 空から降りてきた少女は、見慣れない武器を手にした由乃だった。


「せ、先輩!?どうしてこんなところに…」


「それはこっちのセリフだって!なんか今までと違くないか!?」


「説明は後です!今は使徒を制圧しますから!!」


 由乃は振り返りざまに左手の砲身からビームを放つ。その圧倒的な火力に僕は目を見張った。


「いままでの由乃とは桁違いだ…」


 接近戦を挑む使徒を右手の盾でやり過ごし、自分にちょうどいい距離を保ちながら由乃は次々と使徒を倒していく。その姿は「戦姫」と呼ぶにふさわしいほど凛々しかった。


「初稼働なのにここまで動けるなんて…おっと!!」


 墓地内にいた使徒が集まり、巨大使徒へと姿を変える。鈍重な動きだが一撃の重さは普通の使徒の比ではない。しかも執拗に僕を狙ってくる。


「翼を使えないのを知っているのか…?くそっ!」


「先輩、あたしの後ろに!」


 由乃が僕と使徒の間に割って入った。左手に持った砲身の先が赤く光り出している。


「決めるよ大和!!」


 由乃がトリガーを引くと、砲身の先から眩い光とともにビームが発せられる。そのビームは巨大使徒に命中し、その姿を少しずつ削っていく。


「さすがに硬い…けど、カートリッジリロード!!!」


 ビームを放ち続ける砲身が、ガシャンと音をたて薬莢を吐き出す。その瞬間にビームはさっきより大きくなり、威力を上げる。

 威力の上がったビームに耐えかねたのか、光の中で使徒は大きく体を曲げて爆散していった。


「隊長、任務終了しました。人的被害は認められません。あと、悠先輩を保護しました。」


『そうか、よくやってくれた。悠と共に帰還してくれ。』


「了解です。」


 由乃は通信を切ると、両手の武器を消して僕に近づいてくる。


「どうしてここにいたのかはわかりませんけど、間に合って良かったです。」


「あ、ああ。助けてくれて、ありがとう。でも、その武器は…?」


「新しいパーソナルウェポンです。いまさっき完成したばかりでまだテストも出来てなかったんですけど…」


 テストもしていないという割には使い方を熟知していたような気がする。


「帰りましょう先輩。隊長に色々報告しないといけませんから。」


「あ、そうだね。」


 新しい武器を手にして、前よりも頼もしくなった由乃。僕は由乃の変化に戸惑うばかりだった。



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