さつき
「ゴメン、皐月。待った?」
「ううん、さっき来たとこ。愛菜、仕事お疲れ。」
ある日の午後、吉岡皐月と看護師をしている井川愛菜がカフェで待ち合わせしていた。
「ねぇ、皐月。この前、ウチの患者さんの子供がね。面白いこと話してたの。別の患者さんの子供を指さして『ママのお腹に来る前におそらでお友達だったんだよ』って言ってたの!なんか、子供って神秘的だなって思ったわ!」
「ふーん。」
「えっ?!驚かないの?」
「ウチの姉が小さいとき似たようなこと言ってたみたいだから。」
「へぇー。どんなこと言ってたの?」
「母が私を妊娠した時、『ひかり』って呼んでたんだって。それで妊娠が判ったらしいの。」
「それでそれで?」
愛菜は目を輝かせていた。
「何か、私は『ひかり』で姉は『せいら』って名前で『おそら』で友達だったんだけど、『せいら』って父親の友人の元カノとの死んだ子と一緒の名前だったらしいの。両親はビックリしたみたい。」
「うわー…お姉さん、その子の生まれ変わりってこと?」
「そんな感じのこと言ってたみたい。でも、ウチの父は『例えアイツの子の生まれ変わりでも今は俺たちの子だ』って言ってたって。」
「お父さん、カッコいい!」
「でも、姉が5歳になったとたん、何も言わなくなったみたい。」
「そうなんだ…」
「姉はその時のこと何にも覚えてないみたい。」
「…私、『おそら』ってあるような気がしてきた。皐月、結婚生活どう?」
「実は赤ちゃんできたの。」
「おめでとう!つわり大丈夫?予定日いつ?」
「ごっさん、何見てんの?」
『おそら』で佐藤がおっちゃんに聞いた。
おっちゃんが『おそら』の床の穴から下界の皐月と愛菜の様子を見ていた。
「ひかりとさくらだ。ひかり…いや皐月か、母親になるんだな。」
「お腹にいるのこの前、生まれ変わりに行ったゆきだぞ。笹川から吉岡に名前変わってたから、皐月がひかりだったってこと、俺も後で気づいた。」
「そっか…良かった。あの子はきっとゆきに愛情を注いで幸せに育ててくれるだろうな。」
そう言っておっちゃんは『おそら』の床に開けた穴を手で覆い、穴をふさいだ。
「あの子たちはもう大丈夫だ。あんな幸せそうな顔を見れて安心した。」
佐藤はそう言ってその場を離れた。
「また、2人来る予定か…迎えに行かなきゃな。それが俺の仕事だ。」
おっちゃんは子供たちの方へ歩き出した。
「おーい、おやつの時間にするか?」
子供たちは笑顔でおっちゃんに向かって走ってきた。




