あね
ひかりはしばらく母親に抱きついていた。
ふと、あることに気づいた。
「ママ、どうしてひかりのこと分かったの?」
母親はニッコリ笑った。
「望にそっくりだったし、光ちゃんは私の小さい時にも似てるわ。」
「ママの?」
「えぇ。そうそう。光ちゃん、妹が生まれたの!奏絵っていう名前なの!」
母親の笑顔が消えた。
「ママ…死んじゃったのかな…奏絵を抱っこできなかったな…」
母親は悲しそうな顔だったが、
「でも、光ちゃんといれるから寂しくないか。」
そう言ってひかりをまた抱きしめた。
ひかりはママとずっと一緒にいれるのならうれしかったが、何かが心に引っ掛かっていた。
そうか、ひかりの妹、奏絵は元気に生まれてきたのにママに抱っこされないのか―このことが心に引っ掛かっていることだと気づいた。
「ママ、あのね…」
ひかりは勇気を振り絞って言った。
「ママはね。まだ死んでないよ。奏絵、抱っこしてあげて。奏絵はきっとママに抱っこして欲しいよ。」
母親は驚いてひかりの顔を見た。
「ママ…大好き。一緒にいたい…けど…奏絵がかわいそう…」
ひかりは泣きそうだった。ひかりがずっと母親に抱っこして欲しかったから奏絵の気持ちがよく分かった。母親はぎゅっとひかりを抱きしめた。
「ありがとう。ママ、ダメだね。光ちゃんの分までしっかり生きるって決めたのに。光ちゃん、本当にありがとう。」
母親は涙が止まらなかった。
「ママ…ありがとう…」
2人は涙を流しながら抱き合っていた。暖かな光が2人を包み込んだ。
「気がついたか?!良かった!奏絵、元気に生まれたぞ。」
気がつくと母親は病室のベッドに寝ていた。
ひかりの父親と望が心配そうに見ていた。
「ふふふ…望、やっぱり似てる…」
母親は望に笑いかけた。
望は安心した顔になった。
「光ちゃんが来てくれたの。『奏絵を抱っこしてあげて欲しい』って。」
母親が言った。
「光ちゃん、ママを助けに来てくれたんだな。」
父親も笑って言った。
「奏絵を後で見に行こうか。元気に手足、動かしてたぞ。望も行こうな。」
ひかりは『おそら』に戻ってずっとおっちゃんにしがみついて泣いていた。
「ひかり、立派だった。あんなこと言えるお前はスゴイぞ!」
おっちゃんはひかりの頭を撫でながら鼻をすすっていた。
「あのね…おっちゃん。」
泣き止んだひかりはまっすぐおっちゃんの顔を見た。
「ひかりも、生まれ変わりたい。」
ひかりの顔はとても穏やかで幸せそうだった。




