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おそらのきみへ  作者: ひかり
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ママと

ひかりの母親は出産後、意識を失って魂は『生死の(はざま)』を漂っていた。

そのことをたまたま耳にした佐藤がおっちゃんに伝えたのだった。

「じゃあ、会いに行くけど誰にも内緒な。」

おっちゃんはひかりにぎこちないウインクをした。


『生死の間』に着いたひかりは母親を少し離れたところから見ていた。母親はひかりから背を向けて立ったまま動かなかった。

『生死の間』は雲の中のなのか、霧やもやがかかってぼんやりとした風景だった。

時々、霧が母親の姿を隠してしまうので霧が流れて行ってしまうまでひかりはそわそわしていた。

ふと気がつくとおっちゃんも後ろにいなかった。ひかりは不安になり、泣きそうになった。

「あら、こんにちは。」

母親が笑顔で近づいてきた。懐かしい声―ひかりの母親に間違いなかった。

『ママ…』

ひかりはその言葉がのどまで来ていたが声を出すのに緊張していた。

ひかりの顔をじっと見ていた母親の表情が柔らかくなった。

「ひかりちゃん?」

ひかりは自分の名前を呼ばれてビックリしていた。

「やっぱり!ひかりちゃんね!」

母親はぎゅっとひかりを抱きしめた。

「…マ…マ…」

ひかりの目から涙が溢れてきた。嗚咽をこらえているので声がかすれてしまった。

「ひかりちゃんのママよ。ママのこと分かってくれたのね。うれしい…」

母親の目から涙がこぼれていた。

「ママ…ママ…」

ひかりは泣き出してしまった。

『温かくて、柔らかくて気持ちいいの。』

せいらの言う通りだった。母親に抱きしめられてひかりはすごく居心地のよさを感じていたと同時に生きていた時は抱っこしてもらったことがないことに改めて気づいてしまった。

「ママ…」

「どうしたの?ひかりちゃん。」

ひかりは母親の顔をじっと見て、

「どうしてひかりをぎゅうしてくれなかったの?」

と聞いた。母親は少し悲しそうな顔をした。しばらく目をつぶった。ゆっくり目を開けて、

「ひかりちゃんは呼吸器をつけていたから抱っこすることができなかったの。ママとパパは手術が終わって呼吸器が外されるまで我慢しようねって言ってたんだけど…そうよね。ひかりちゃんは寂しかったのよね。ごめんなさい。」

と答えた。母親の目からまた涙が流れた。

それを見たひかりは思わず、

「ごめんなさい…」

と言ってしまった。悪いことを聞いてしまったんだとひかりは感じてまた泣きそうになった。

「ひかりちゃんは何も悪くないのよ。謝らないで。悪くないの。誰も悪くないの。」

母親はひかりの頭を優しくなでた。

頭から伝わる母親の手の温もりもひかりにとってとても落ち着かせてくれるものだった。

『ずっと…ぎゅうして欲しい…ママと離れたくない。』

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